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参院安倍派を牛耳ってきた世耕弘成氏が政倫審へ!①起訴された安倍派会計責任者はNTT時代の先輩②還流継続を決めた西村氏や塩谷氏らとの派閥幹部協議に出席③「秘書に任せてきた」という言い逃れーーここに注目

自民党の裏金問題をめぐる参院の政治倫理審査会(政倫審)の最大の見どころは、安倍派5人衆のひとりだった世耕弘成・前参院幹事長が何を証言するかだ。

世耕氏は安倍政権で官房副長官や経産相を歴任した後に参院幹事長に就任し、最大派閥・安倍派(清和会)の参院の取りまとめ役として大きな影響力を握ってきた。

裏金事件で安倍派の会計責任者として起訴された元事務局長は世耕氏が政界入り前に勤務していたNTT時代の先輩で、世耕氏の推薦で清和会事務局に入った経緯がある。5人衆の西村康稔氏、松野博一氏、高木毅氏が務めた事務総長は歴任していないものの、派閥運営に大きく関与したとみられている。

安倍元首相の提案で政治資金パーティー券販売のノルマ超過分をキックバックする長年の慣行を廃止することがいったん決まったものの、安倍氏が襲撃事件で急逝した後に一転して継続になった経緯について、世耕氏がどう証言するかも大きな焦点だ。

安倍氏急逝後のキックバックについて協議した派閥会合に出席したのは、当時座長だった塩谷立氏、事務総長だった西村氏、森喜朗元首相から疎んじられて5人衆から外された下村博文氏、そして世耕氏の4人である。衆院の政倫審では、西村氏がこの派罰会議について「結論に至らなかった」と発言したのに対し、塩谷氏は「(キックバック)継続の方向が決まった」との趣旨の証言をし、食い違っている。世耕氏がどう説明するのかが注目だ。

世耕氏は自身が受け取った裏金についても秘書に任せていたと強調し、責任を転嫁している。しかし、かつて自民党が野党に転落していた時代に民主党政権の政治とカネの問題をめぐって自らは秘書任せにせずに収支報告書をしっかりチェックしている旨のSNS投稿が今回蒸し返され、政治的にダメージを受けた。この点をどう説明するかも見逃せない。

世耕氏は総理・総裁への意欲を隠してこなかった。最大のネックになっていたのは、地元・和歌山で長年敵対関係にある二階俊博元幹事長に衆院への鞍替えを阻まれてきたことだ。

総理候補となるには参院議員では厳しく、清和会会長レースでも西村氏や萩生田光一氏に遅れをとっていた。森喜朗元首相はかつての青木幹雄元官房長官のように「参院のドン」になることを世耕氏に期待し、清和会会長を萩生田氏と西村氏のどちらにするのか五人衆で早く話し合うように促していた。

世耕氏は清和会会長の座を諦めていなかったようである。だが、今回の裏金事件で衆院鞍替えはさらに厳しくなり、総理・総裁の座は遠のいた。今後は参院のドンとして復権することを目指していくのだろう。

だが、その道のりも険しい。世耕氏が参院で影響力を握っていたのは、あくまでも最大派閥・安倍派を後ろ盾にしていたからである。安倍派が解散した以上、世耕氏の権力基盤は大きく崩れ、参院の主導権は後任の松山政司参院幹事長(岸田派)や石井準一参院国対委員長(茂木派)らに移っていくとも見方も出ている。

安倍派内部でも、起訴された事務局長を清和会に引き入れて派閥運営に大きく関与してきた世耕氏の責任を問う声は少なくない。

地元・和歌山では自民党青年局をめぐる過激ダンスショーのスキャンダルが発覚。企画した県議は世耕氏の元秘書ということで「二階氏側が世耕氏を追い落とすためにリークした」との憶測も呼んでいる。さらに世耕氏自身も地元支援者に高級クッキーを渡したことが公選法違反に抵触する疑いがあると報じられた。世耕氏失脚を後押しする動きが広がっているのだろう。

参院政倫審で世耕氏が十分な説明責任を果たせず、世論の批判をさらに浴びることになれば、世耕氏復権の芽はますます消える。世耕氏にとって正念場の政倫審となる。

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