政治を斬る!

首相襲撃後の内閣支持率の急増は瞬間風速か中長期のトレンドか〜岸田政権の真の実力を測る衆参5補選、広島サミット後の解散をめぐる攻防がはじまる

岸田政権の衆院解散戦略を左右するとして注目される衆参5補選(衆院和歌山1区、千葉5区、山口2区、山口4区、参院大分)と統一地方選後半戦(市区町村)が4月23日、投開票される。前半戦(都府県と政令市)で躍進した日本維新の会の勢いが続くのか、和歌山で遊説していた岸田文雄首相の襲撃事件後に跳ね上がった内閣支持率の影響がどう出るのかも注目だ。

マスコミ各社は激戦となった衆参5補選への関心を高め、世論調査や選挙情勢調査を重ねてきた。今回に特有の問題として浮上したのは、選挙戦最中の4月15日(土)に首相襲撃という衝撃的にニュースが駆け巡り、その前後で調査の傾向が大きく変わったことである。

首相襲撃事件が発生した15日を含む週末に世論調査や選挙情勢調査を実施した報道機関は多く、内閣支持率の急上昇を襲撃事件を受けた一時的な瞬間風速とみるのか、中長期的なトレンドとみるのか、その見極めが重要になってきた。

読売新聞は14日〜16日に全国世論調査を実施し、内閣支持率は47%(前月から5ポイント増)、不支持率は37%(同6ポイント減)だった。同社調査では7ヶ月ぶりに支持が不支持を上回った。

読売はこの世論調査を伝える記事の中で「調査期間中の15日昼前に、首相が訪れた選挙演説会場に爆発物が投げ込まれた事件が発生したことも、内閣支持率の上昇に影響した可能性がある。事件の前の回答では支持率が4割台前半だったが、事件後は5割に上がった」と説明している。襲撃事件がなければ内閣支持率は40%台前半にとどまり、前月とさして変わらなかったかもしれないということだ。

テレビ朝日が報じた15日〜16日の世論調査では、内閣支持率は45・3%(前月から10・2ポイント増)に跳ね上がった。同じ調査で岸田政権の少子化対策で問題は「解決しない」と答えた人が8割、その財源で国民負担が増えることは「支持しない」と答えた人が6割、防衛増税について「支持しない」と答えた人が55%に達したことからして、内閣支持率の急上昇は政策が評価されたからではなく、首相襲撃事件でいわゆる「同情論」が広がったためと分析できるだろう。

政界では23日投開票の衆参5補選の結果が、5月19日〜21日の広島サミット後の衆院解散の行方を大きく左右するとみられてきたが、①首相襲撃事件を受けた内閣支持率の上昇が5補選で自民の勝利につながるか②仮に自民の勝利につながったとしても、内閣支持率の上昇は瞬間風速にとどまるのか、広島サミット後まで続くトレンドとなるのかーーを見極めることが重要になってくる。つまり衆院解散があるかないかと判断するには5補選の結果だけではなく、首相襲撃事件と内閣支持率急増の影響がどこまで続くかを予測する必要が出てきたということだ。

自民党が5補選で5戦全勝あるいは4勝1敗だったとしても、それは岸田政権の真の実力を映し出すものではなく、首相襲撃への同情が広がるなかでの瞬間風速に終わる可能性が否定できない。逆に内閣支持率の急増にもかかわらず5補選で自民党が3勝2敗以下にとどまるなら、岸田首相に対する「選挙の顔」としての期待感は急速にしぼみ、広島サミット後の解散論も次第に薄れていくのではないか。そうなると菅義偉前首相らによる「岸田降ろし」の動きが再燃してくるだろう。

岸田首相はそもそも早期解散には慎重だった。内閣支持率が3月に回復し、首相襲撃事件で急増するなかで自民党内で高まる早期解散論に背中を押されて解散を断行する可能性は否定できないが、5補選や今後の内閣支持率次第で自民党内の早期解散論が沈静化すれば、岸田首相が電撃的に解散に踏み切る可能性は低いと私は現時点ではみている。

いずれにせよ、5補選の結果が出る23日夜から政局は動き出す。広島サミット後の通常国会会期末に向けて内閣支持率の推移をみながら、自民党内の駆け引きが強まっていくだろう。


政治を読むの最新記事8件