政治を斬る!

高市解散の総選挙は「自民圧勝」ではなく「中道、自滅」だった

総選挙の出口調査によると、自民党は単独過半数を大きく上回る見通しで、維新とあわせて衆院3分の2をうかがう情勢となっている。この原稿を執筆している時点で、最終議席はまだ確定していないものの、政権の枠組みが大きく揺らぐ可能性はすでに小さい。高市政権は続投が確実で、日本政治は新たな局面に入ろうとしている。

ただし、今回の選挙結果を単純に「自民・高市人気による圧勝」と見るのは正確ではない。むしろ本質は、「中道、自滅による惨敗」である。

立憲民主党と公明党が結成した新党「中道」に対し、強烈な逆風が吹きつけ、その崩壊の裏返しとして自民党が議席を伸ばしたという構図が鮮明になっている。

自民党の勝利ラインは、当初「自民と維新をあわせて与党で過半数」とされていた。これは事実上、現状維持に近い水準であり、達成しても大勝とは言い難い。しかし、自民単独で過半数を確保したことで、高市首相は堂々と勝利を宣言できる政治的基盤を手にした。真冬の解散というリスクを負った判断は、結果として成功した形だ。

焦点はさらにその先、衆院3分の2を与党で確保するかどうかに移っている。もし到達すれば、参院で法案が否決されても衆院で再可決でき、政権運営の自由度は飛躍的に高まる。国民民主党を政策協力のパートナーとして取り込む必要性は低下し、政権の主導権はより一層、官邸へと集中することになる。党内力学にも変化が生じ、高市官邸の発言力が自民党本部を上回る「高市一強体制」が現実味を帯びてくる。

一方、最大の敗者は新党「中道」である。出口調査では、公示前に立憲と公明を合わせた勢力から大きく議席を減らし、半減どころか、最悪の場合は4分の1まで落ち込む見通しとなった。新党結成は、本来であれば政権交代への期待を生み、無党派層を引き寄せる「1+1=3」の効果を狙うものだった。しかし今回は逆に、「選挙目当ての合流」と受け止められ、無党派層だけでなく既存支持層の離反まで招いた。

とりわけ立憲民主党への打撃は深刻だ。安全保障政策や原発政策などで公明党の主張を受け入れ、比例名簿上位を公明候補に譲る形となったことが、「事実上の吸収合併」と受け止められた。これにより立憲支持層の一部が離れ、国民民主党や新興勢力へと流れる現象が起きた。大物候補の苦戦も相次ぎ、選挙後には党内の再編や分裂を含む大きな変動が起きる可能性がある。

維新と国民民主も、今回の選挙では決定的な伸びを示すことができなかった。維新は大阪での地盤を維持する一方、全国的な拡大にはブレーキがかかり、連立入りが選挙戦略としてプラスに働いたとは言い難い。国民民主は「与党でも野党でもない」立場を維持したが、与野党対決色が強まる選挙の中で存在感を示し切れなかった。与党が最終的に3分の2を確保するかどうかが、両党の今後の政治的価値を大きく左右することになる。

第三極では、参政党や新興勢力が一定の議席を伸ばす見通しだが、政治全体の構図を左右するほどの規模には至っていない。むしろ今回の選挙は、「中道沈没」と「自民一強」が同時に進んだ選挙として記憶される可能性が高い。

今回の総選挙は、高市政権の是非を問う選挙であると同時に、野党再編の成否を問う選挙でもあった。そして現時点の情勢が示しているのは、政権側の強さ以上に、対抗軸を提示できなかった野党側の弱さである。結果として生まれつつあるのは、自民党の単なる勝利ではなく、野党の自壊によって形成された新しい政治バランスだ。

開票作業は続いており、最終議席はまだ確定していない。しかし大勢はすでに見え始めている。
今回の総選挙は、「自民圧勝」の選挙というよりも、「中道、自滅」の選挙だったと言えるだろう。