永田町がざわついている。日本テレビの独自党員調査・第2弾で、高市早苗が小泉進次郎を逆転し、トップに立ったのだ。
告示後の演説会やテレビ討論を通じ、高市が掲げた「奈良の鹿を蹴り飛ばした外国人観光客批判」が強い共感を呼び、現役世代を中心に党員支持を拡大したとみられる。
片や進次郎は「党内融和」を最優先し、持論の規制緩和や夫婦別姓を封印。守りに徹した結果、勢いを失った。
ただし、国会議員票では依然として進次郎が優勢で、全体としては進次郎がリードを保っている。最終盤の焦点は、両者の差をどう埋めるか、そして「最後の一押し」を誰が勝ち取るかにある。
高市の逆転劇
日テレ党員調査は、自民党員に限定して行われる特殊な調査だ。独自に入手した党員名簿を基に電話をかけているとみられ、投票権を持つ91万人の動向を最も正確に映すとされ、政界関係者やメディアが注目している。
第1回調査(告示前)は進次郎32%、高市28%、林芳正15%。ところが第2回調査(告示後)は、高市34%、進次郎28%、林17%と順位が逆転した。
とりわけ40代の支持動向が劇的だ。進次郎は44%から28%へ急落し、高市は20%から33%へ急伸した。外国人観光客批判を前面に出した高市の強硬姿勢が、現役世代の不満をすくい取った格好だ。
小林鷹之5%、茂木敏充4%、「未定」12%も残るが、主役は完全に進次郎と高市の一騎打ちとなった。
票数に換算すると?
総裁選の1回目投票は国会議員票295票と、同数に換算される党員票295票の合計590票で争われる。
今回の調査結果を票数に直せば、高市100票、進次郎82票、林51票、小林13票、茂木12票、未定37票となる。
一方で国会議員票は進次郎70票、林47票、高市39票、小林30票、茂木29票、未定80票。
両者を合算すると、現時点で進次郎152票、高市139票、林98票、小林43票、茂木41票、未定117票。進次郎がなおリードする構図だ。
過半数の295票に1回目で届く可能性は低く、決選投票にもつれ込む公算が大きい。決選投票は国会議員票295票に、47都道府県の「党員最多得票候補」にそれぞれ1票が加わる仕組みで、国会議員票の比重が極めて高い。
国会議員票で劣勢の高市が逆転するには、党員投票で圧倒的勝利を収め、議員に「党員の声を無視するのか」と迫る以外に道はない。
高市が頼る「最後の麻生」
しかし現実には、党員投票で過半数を取るのは極めて難しい。現在の34%に「未定」12%がすべて流れても過半数には届かない。既に他候補に決めた票を奪わなければならず、残り時間では困難だ。
そこでカギを握るのが国会議員票、とりわけ麻生派の動向だ。
前回総裁選で麻生太郎は「石破阻止」のため高市支持に回った。だが今回は石破不出馬。森山裕幹事長が麻生、菅義偉、岸田文雄の元総理3人と個別に折衝を重ね、「進次郎で挙党一致」の流れを形づくった。
進次郎が持論を封印したのも、麻生への配慮が大きい。麻生は今回は進次郎支持に傾いている。
高市が逆転するには、この麻生をひっくり返す以外にない。党員投票締め切り後、高市は「最後の麻生引き込み戦」を仕掛けることになるだろう。
林芳正の誤算
ダークホースと目された林は、石破後継を打ち出したが、「石破辞任は必定だった」「私なら現金給付はやらなかったかも」といった失言で石破支持層を失い、逆に進次郎支持に流れてしまった。
林が決選投票に進めば、対進次郎なら世代交代を警戒する中堅・ベテラン層、対高市なら右傾化を懸念する中道層の受け皿となり得る。しかし党員票の拡大は難しく、残された道は国会議員票で高市を抜くことしかない。
ただし林は麻生と犬猿の仲。後ろ盾の古賀誠元幹事長が麻生の宿敵であることも足を引っ張る。加えて親中派のイメージが強く、旧安倍派ら保守層の支持を得にくい。
現時点では「進次郎対高市の決選投票」が最も有力だ。