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東京都知事選が告示『小池百合子vs蓮舫vs石丸伸二』の行方 序盤戦でアンチ小池票を独占する「2位」がはっきりするかどうかが当面の焦点に

東京都知事選挙が6月20日、告示された。党開票日は7月7日、七夕だ。

現職の小池百合子氏を自公与党が応援し、立憲民主党と共産党が蓮舫氏を支援する与野党対決。小池氏も蓮舫氏も嫌だという人々には、ユーチューブで人気の前安芸高田市長・石丸伸二氏を推す声も広がっている。

3陣営の優劣を公約発表会見を中心に分析してみよう。

小池知事

小池知事が力を入れたのは子育て支援や防災政策だった。マスコミが目玉として取り上げたのは、保育料無償化を第一子に拡大する公約だ。

とはいえ、全体としては目新しさはなく、小池都政の継続を掲げた内容といっていい。

忘れてはならないのは、都の税収は今年度、過去最高の6兆3865億円にのぼることである。都内に事務所を置く大企業は、アベノミクスの金融緩和による円安株高で大儲け。製造業は消費者への価格転嫁が進んで業績好調だ。その結果、都の法人税収は急増し、税収全体を押し上げたのである。

小池知事にとっては3選を目指すタイミングで追い風が吹いたといっていい。

一方、円安株高は物価高をもたらし、庶民の生活を直撃した。家賃は高騰し、食費は跳ね上がり、株や不動産を所有していない庶民にとってはむしろ生活水準は大幅に下がったのである。

まさに自民党と一体化した小池都政で経済格差は拡大したといっていい。

こうした状況を踏まえると、保育料無償化を第一子に拡大させるといった程度の政策で、富の再分配が本当に進んでいるのか、しっかりした検証が必要だ。私は経済格差の是正のため、円安株高で大儲けした大企業や富裕層に課税し、それを原資に庶民の暮らしを底上げする現金給付などの格差是正政策が不可欠だと考えている。

小池知事の会見はオンラインで行われ、40分で終了。質問した記者は小池知事が指名した5人だけだった。学歴詐称疑惑の追及を避ける狙いがくっきりみえる。

一方、小池知事はかつてキャスターとしてアラビア語をしゃべる場面をSNSに投稿。一方的な発信でカイロ大を卒業したというイメージ作りを進めている。

こうした小池知事に対し、マスコミ各社でつくる都庁記者クラブの追及は甘い。大手新聞社がスポンサーとなった東京五輪以降、マスコミ各社と小池知事の癒着ぶりは甚だしい。週刊誌やネットメディアが批判する程度では自らの優位は崩れないと小池知事はみているのだろう。

総じていえば、都政継続を掲げ、小池都政下で潤ってきた支持層を固める「守りの選挙」といっていい。

蓮舫氏

蓮舫氏は小池知事と同じ日に記者会見を開いたが、形式は対照的で、リアル会見だった。時間は60分で19人が質問に立った。

公約は「7つの約束」。小池知事が一期目に掲げた「7つのゼロ公約」の多くが未達成であることを意識したものだろう。「現役世代の手取りを増やす」などのキーワードもわかりやすかった。

一方、行革を「私の専門分野」と豪語したわりには、具体的な数値目標に欠け、総花的な印象は拭えない。何より「東京をもっとよくする」というメッセージは、小池都政を全面否定しているのではなく、継承する部分もかなりあるという印象を与え、「裏金自民党政権の延命に手を貸す小池都政をリセットする」という当初の発信がぼけてしまった感もある。

連合は蓮舫氏が共産の支持を受けていることを口実に小池支持へ流れ、立憲内部でも「何が何でも蓮舫氏を知事に」という機運はない。党内にも敵が多いことが遠因としてあるのだろう。

頼みの綱は無党派層だ。もっと小池批判を強め、「小池知事を倒すことができるとしたら、蓮舫氏しかない」という認識を広めてアンチ小池票をすべて引き寄せるようでないと逆転は難しいだろう。

石丸伸二氏

小池氏も蓮舫氏も嫌だという層に広がっている第三の候補が、ユーチューブで人気の石丸伸二・前安芸高田市長である。政治再建を掲げ、「日本を変えるため、東京から動かす」と主張している。

なぜ国会議員ではなく都知事なのか。石丸氏は「都知事は権限が大きい」「首相になっても国会で多数を占めないと動かない。ものすごい時間を要する」「東京が動けば、自然発生的に広がる」と主張。これらの訴えはそれなりに共感を得ているようだ。

一方、目玉公約の「東京の過密を解消する」の具体策は乏しい。「23区外の魅力を高める」としつつ、都心に増税して拡散を促すなどの税制には慎重だ。経済アナリスト出身で、大企業との激突は避けたいという本音がのぞく。

小池都政が進めた明治神宮外苑の再開発で批判を浴びている三井不動産に都庁幹部が天下っている問題でも「個別企業の批判はしない」として批判スタンスは弱い。知事になったとしても小池都政の膿を出し切れるのか、不透明だ。

現時点の情勢では、小池批判票は蓮舫氏や石丸氏らに分散し、組織票を固めた小池知事が逃げ切る公算が強い。知事選中盤で行われる情勢調査で、蓮舫氏か石丸氏のどちらかが2位を確立し、小池知事のと一騎打ちの状況を作り出せれば、後半戦に「アンチ小池票」がなだれ込んで逆転の可能性も出てくるだろう。

知事選序盤の蓮舫氏と石丸氏の伸びがどうなるかが当面の焦点だ。

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