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小池百合子(TVキャスター)vs蓮舫(モデル)vs石丸伸二(ユーチューバー)東京都知事選は「新旧メディア対決」 七夕の投開票日に笑うのはだれ?

いよいよ七夕、東京都知事選挙の投開票日を迎える。

現職として自公の応援を受ける小池百合子氏、立憲民主党の顔だった蓮舫氏、人気ユーチューバーで元安芸高田市長の石丸伸二氏。

私は「テレビキャスター」対「モデル」対「ユーチューバー」の戦いと感じている。

小池氏はTVキャスター出身。記者会見ではカメラアングルを常に意識し、「どう見えるか」を何よりよ重視する姿勢は顕著だ。

蓮舫氏もTVキャスター出身だが、襟を立てて大股で颯爽と記者会見場に登場し、決め台詞をスパッと切り出す様子は、むしろモデルに近い。

石丸氏は人気ユーチューバーだ。ユーチューブでは圧倒的な人気を誇っており、街頭演説に集まる多くもユーチューブを見ている人々だ。演説内容もユーチューブに触れたものが多い。

この三者のだれが最も都民の共感を得るのか。都知事選は「新旧メディア対決」の様相も呈している。

小池氏はスタートダッシュに遅れた。蓮舫氏に先手を打たれ、電撃出馬表明されたためだ。

蓮舫氏は当初、「自民党政権の延命に手を貸す小池都政をリセットする」と宣言し、勢いづいた。小池氏は当初予定していて都議会初日の出馬表明を見送り、一時は不出馬に追い込まれるとの見方も広がった。

しかし小池氏が出馬表明を先送りするなかで、マスコミのネガティブキャンペーンを浴びたのは蓮舫氏だった。蓮舫氏は立憲民主党のコア支持層に絶大な人気があるが、保守層には拒否感が強い。学歴詐称疑惑や裏金自民との一体化で小池批判が広がっていたものの、蓮舫氏の登場でアンチ小池層が「蓮舫氏が好きか嫌いか」で分断されることになった。

こうした状況を受け、小池氏は情勢調査で「蓮舫氏が相手なら勝てる」と判断し、満を辞して出馬を表明。自民党に近い業界団体、創価学会、連合といった組織票を固めたうえ、「蓮舫氏よりは小池氏がマシ」という保守層の支持を引き戻すことに成功した。

小池氏は出馬表明後、東京大改革3.0やAIゆりこといった話題作りも巧みに進めた。保育園無償化を第一子に広げるなど子育て支援も打ち出し、30代女性に支持を広げた。告示直後のマスコミ情勢調査では蓮舫氏を引き離し、一時は楽勝ムードさえ漂った。

これを受けて、小池氏はテレビ討論会を拒否し、学歴詐称疑惑や明治神宮外苑の再開発をめぐる政官業癒着(都庁から三井不動産への大量天下りや小池氏の政治資金パーティー券を再開発業者が購入した疑惑)の追及を封じる逃げの戦略を展開した。

これが世論の批判を浴び、後半は小池都政のネガテイブな側面に焦点があたり、小池氏の勢いは止まった。投開票日1週間前の情勢調査では小池氏の数字は下がり、蓮舫氏と石丸氏の二人の票をあわせると小池氏を上回る事態となり、小池陣営には焦りが出始めた。

小池氏は最後の一週間は街頭演説に立つ方針に転じたが、手荷物検査を行う厳重体制で人の集まりは芳しくなく盛り上がりを欠いた。逆にアンチ小池派から「やめろ」コールを浴びて小池氏が演説を中断する一幕もあった。

このまま逃げ切るのか、土壇場でさらに失速して大逆転を許すのか、予断を許さない状況だ。

蓮舫氏は電撃出馬表明で勢いづいたものの、その後のネガティブキャンペーンに押し込まれ、途中から小池批判よりも「優しい蓮舫」というイメージアップ作戦に比重を移した。

これが大失敗だった。「小池都政をリセットする」と宣言した当初の勢いは陰り、小池氏を追い抜くどころか、逆に石丸氏に追い上げられ、3位転落説が飛び交う劣勢に陥ったのだ。

この様子は、立憲民主党が自民党の裏金事件が発覚する前、「批判ばかり」と批判されるのを恐れて「批判よりも提案」を重視した結果、国会で岸田政権への追及が弱まり、逆に政党支持率を落としたことと瓜二つだ(批判ばかりと批判されるのは、批判自体に迫力がないからだ!)。

立憲は裏金事件後は「敵失」で勢いを取り戻したものの、いまだに「批判よりも提案」の体質が抜けきっていない。蓮舫氏の戦略転換も「批判ばかりの蓮舫」との批判に怯んだからだろう。

蓮舫氏は立憲のコア支持層やリベラル言論界には絶大な人気があるが、保守層には拒絶感が強い。どんなに蓮舫氏のイメージアップ戦略を展開しても従来の支持層の結束を固めるだけで、逆に保守層からは猛烈なバッシングを受けて支持拡大にはつながらないという展開をたどった。アンチ小池票が蓮舫氏と石丸氏に分散し、小池氏逃げ切りの気配が漂ってしまったのだ。

むしろ打倒小池を前面に打ち出し、「蓮舫氏は嫌いでも、小池氏を倒す可能性がいちばん高いのだから、蓮舫氏に投票するしかない」という世論を作り上げることに徹するべきだっただろう。徹底的な小池ネガティブキャンペーンを展開し、打倒小池の機運を極限まで高めることが最も効果的な戦略だった。

終盤戦に小池都政の政官業癒着に改めて批判を強め、盛り返したが、投開票日までに「小池都政のダーティーさ」を広めることができたかどうか。電撃出馬表明で勢いづいた直後から立憲民主党をあげて小池ネガティブキャンペーンを大展開していたら、都知事選の主導権を握れたに違いない。

石丸陣営は「打倒小池」よりも「蓮舫氏を抜いて2位になれる」という機運を作り出し、無党派層への浸透を図った。小池氏も蓮舫氏も嫌だという層に食い込み、終盤戦に支持を拡大していった。

そもそも東京に基盤はなく、政党や組織の支持もない。ユーチューブ人気だけが頼みだった。当初は供託金没収の恐れも指摘されたが、途中からは小池氏vs蓮舫氏の女性対決に第三極として挑むポジションを確立。「100万票を超えれば大健闘」というところから「蓮舫氏を抜く」との見方が広がるほどに躍進した。

とはいえ、前回の366万票から大幅に得票を減らすことが確実視されるものの、200万票は固いとされる小池氏を抜くのは簡単ではない。

むしろ蓮舫支持層と石丸支持層のいがみ合いがネット上では繰り広げられた。蓮舫支持層からは「石丸氏の出馬はアンチ小池票を割って小池氏を利した」と恨み節が漏れ、「石丸氏は自民党とつながっている」との不信感も広がった。蓮舫陣営も石丸陣営も「打倒小池」を最大の争点に据えることに失敗したといっていい。

蓮舫氏が石丸氏に敗れて3位に転落すれば、立憲民主党は大打撃だ。蓮舫陣営でも「石丸氏だけには負けられない」との危機感が広がり、蓮舫氏の親分で保守色の強い野田佳彦元首相を応援演説に招く戦略に転じることとなった。

一方、テレビ界出身の小池氏と蓮舫氏にユーチューブ一本で勝負してきた石丸氏が互角に戦うことになれば、メディア界の潮流の変化を印象づけることになる。「新旧メディア対決」の視点でも注目される選挙となった。

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