政治を斬る!

総選挙、影の主役は国民民主――首都・東京で起きている静かな地殻変動

今回の総選挙。マスコミが注目する構図は明快だ。
高市人気を背にした自民党に対し、立憲民主党と公明党が結成した新党「中道改革連合」が組織票で挑む――二大勢力の激突である。

だが、この見立ては甘い。
勝敗を根底から揺さぶる存在がいる。
第三極の国民民主党だ。

国民民主は、新党結成を機に、立憲との協力関係を事実上破棄。全国289選挙区のうち、102選挙区に大量擁立した。
その狙いは「打倒・自民」ではない。中道改革連合、つまり立憲を軸とした勢力を削り取ることにある。

自民vs中道の一騎打ちは崩れ、選挙の前提条件そのものが変わった。
とりわけ首都・東京では、立憲リベラル派が壊滅しかねない兆しが見え始めている。

国民民主の「リセット宣言」

国民民主の玉木代表や榛葉幹事長は、麻生副総裁と気脈を通じ、連立入りの裏交渉を重ねてきた。
だが、総選挙前の連立入りは避けたい。政権批判票を失い、議席が伸び悩む。結果的に得をするのは立憲民主党だけだからだ。

国民民主は、あくまで野党として総選挙を戦う。全国に候補者を立て、立憲の議席を奪う。そのうえで、選挙後に連立協議を加速させる――そんな戦略だ。

国民民主の解散前議席は26。今回の目標は倍増の51。
20議席台で連立に入れば、自民の補完勢力に終わる。
30議席を持つ維新が、すでにその立場に追い込まれている。

自民が勝ちすぎるのも好ましくない。
国民が50議席規模に膨らみ、発言力を確保したうえで連立に入る。
玉木代表の計算は、そこにある。

一方、連立入りに反対してきたのが支持団体の連合だ。
連合は立憲支持と国民支持に割れており、国民が与党入りすれば分裂しかねない。
そのため、立憲と国民は「現職には対抗馬を立てない」という暗黙の了解を結んできた。

中道改革連合も、この約束を引き継ぎ、国民現職への対抗馬擁立を抑えてきた。
しかし、玉木代表は「新党結成で約束はリセットされた」と宣言。立憲現職の選挙区にも次々と候補を立て、事実上の宣戦布告に踏み切った。

全国102選挙区への擁立。最大の被害者は、立憲民主党だ。
各選挙区に1万〜2万ある公明票より、国民民主が吸い上げる無党派票の方がはるかに大きい。

東京で進む立憲リベラルの瓦解

この影響を最も強く受けるのが、首都・東京である。

立憲はこれまで、東京で共産党と強く連携してきた。2024年の都知事選では、共産とタッグを組み、蓮舫を擁立。だが結果は惨敗だった。
小池百合子にも、石丸伸二にも及ばず、若者や現役世代から敬遠されている実態が露わになった。

党内では共産との決別論が浮上したが、東京では協力関係が温存された。
前回総選挙、東京30選挙区は与党14勝、野党16勝と拮抗。野党16勝のうち、立憲公認は15人。
そのうち8選挙区で、共産は候補を立てず、立憲を側面支援していた。

一方、国民民主は参院選で東京2議席を獲得し、存在感を示した。
前回総選挙では東京11選挙区に立てて全敗したが、今回は27選挙区に拡大。そのうち17が立憲現職区だ。

中道公認となった立憲候補は、公明票に期待する。
だが同時に、無党派票が国民民主に奪われる危険を抱えている。

東京8区と18区が示す未来

東京8区では、立憲若手の星・吉田はるみが試練に立たされている。
前回は野党共闘で圧勝したが、今回は自民、国民、れいわが乱立。
共産は支援に回るが、公明支持層が吉田に素直に乗るとは限らない。

東京18区では、菅直人元総理の後継者・松下玲子が苦境にある。
原発再稼働をめぐる発信が炎上し、公明支持層の不信感は決定的になった。
そこへ国民民主が若手新人を擁立し、無党派票を刈り取る構図が出来上がった。

もし吉田や松下が落選すれば、東京の立憲リベラル派は総崩れとなる。
公明票は思ったほど流れず、無党派層は国民民主に吸い取られる。

新党「中道改革連合」は、組織票の足し算で政権に迫る構想だった。
だが、その成否は、国民民主という影の主役に左右されている。

総選挙の真の焦点は、自民か中道かではない。
中道を削り、主導権を奪おうとする国民民主の動きこそが、政局を動かしている。