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幻の裏金解散が再燃!? 石破茂「裏金議員公認せず」河野太郎「裏金返納なら公認」 安倍派ドン・森喜朗の後押し受ける小泉進次郎への対抗策は早くも腰砕け? 解散しても総裁選の勝敗を決する最大派閥の影

自民党安倍派の裏金議員を次の総選挙で公認しないーー。石破茂元幹事長が自民党総裁選で過激なアイデアを打ち上げた。河野太郎デジタル担当相も裏金議員に裏金返納を求め、応じた場合に公認する考えを主張している。

いずれも、安倍派のドン・森喜朗元首相の後押しを受け、総裁レースの本命とみられる小泉進次郎元環境相への対抗策だ。

世論調査では石破氏が独走してきたが、小泉氏が出馬の意欲を固めたと報道された後は急浮上し、一部世論調査では石破氏を追い抜いた。石破氏と河野氏は小泉氏に主役の座を奪われている。

ふたりとも党所属国会議員に敵が多く、小泉氏に勝つには党員投票で圧勝することが絶対条件だ。そこで小泉氏が主張しにくい安倍派の裏金議員の非公認問題を焦点化し、小泉氏の消極姿勢をあぶり出して、世論の人気を奪い返そうという狙いだろう。

さらには安倍派を悪者にして自民党の支持率を回復させ、10月解散総選挙へ突き進む狙いもある。

安倍派を悪者に仕立てて「裏金解散」を断行する構想はこの春、岸田政権下でもひそかに検討された。

裏金議員に「除名・離党勧告」を厳しい処分を下した後、自民党の信頼回復を掲げて衆院解散を断行し、裏金議員を全員非公認にして、さらには対抗馬(刺客)を送り込んで落選させる徹底した安倍派切りである。

お手本としたのは、小泉氏の父・小泉純一郎元首相が2005年に断行した「郵政選挙」だ。

純一郎氏は郵政民営化法案の採決で自民党の一部が造反して否決したことに対抗し、衆院を解散したうえ、造反組を除名して対抗馬を擁立する非情な選挙を展開。これに世論が拍手喝采をおくり、野党は埋没。小泉自民党は圧勝したのである。

しかし、岸田首相は「小泉首相」にはなれなかった。安倍派などの裏金議員への処分は大甘に終わり、衆院解散も断行できず、内閣支持率は低迷。8月に総裁選不出馬に追い込まれたのだった。

その幻の「裏金解散」が今回の総裁選で再燃してきた。

狼煙を上げたのは石破氏だ。裏金議員について「党として公認するからには、やっぱりふさわしい方である必要がある」と述べ、非公認の可能性に言及したのだ。

さらに河野氏は「不記載額の返納を求める」とし、返納に応じた議員は次の衆院選で公認する考えを示した。裏を返せば、返納に応じなければ非公認もありうるということだ。

小泉氏が出馬への意欲を固めた後、党内でもマスコミ界でも小泉本命との見方が広がっている。このままでは小泉氏に第一回投票で過半数を獲得され、いきなり決着がつく可能性もある。

さらに小泉氏と同じ40代の小林鷹之元経済安保担当相にも中堅・若手の支持が集まっている。安倍派の中堅・若手のリーダー格で、派閥創始者の孫である福田達夫・元総務会長も小林氏支持で動いており、小林氏も安倍派議員らの処分見直しに言及した。裏金議員の非公認には同調しにくい。

石破氏も河野氏も追い込まれつつあるなかで、裏金議員の非公認問題を再燃させ、小泉氏と小林氏との対立軸に据える思惑がある。
これに対し、安倍派を中心に、石破氏と河野氏に批判が噴出した。両陣営からも「安倍派の警戒感を掻き立てるのはマイナスだ」との声があがっている。石破氏は早くも発言を修正し、「新体制が決めること」として沈静化に躍起だ。

総裁選は「国会議員367票+党員投票367票」の合計734票を争う戦いだ。安倍派は最大100人に達した。この約100票は大きい。とくに決選投票は国会議員367票と都道府県連代表票で決するため、ますます安倍派の票の割合が大きくなる。

総裁選に勝ち上がるためだけなら、安倍派を敵に回すのはやはり損だ。そこに最大派閥の影が消えない今の自民党の限界がある。

小泉進次郎氏に挑む石破氏や河野氏が、進次郎氏の父・小泉純一郎氏のように、裏金議員への非情な主張を貫けるのか。総裁選の注目点だ。

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