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山上徹也容疑者の孤立、貧困、絶望の人生 山本太郎や泉房穂の「誰一人見捨てない社会」であったなら

安倍晋三元首相を銃撃した山上徹也容疑者(41)の犯行は許されるものではない。

ただ彼の壮絶な人生をみると、不況が長引き、貧富の格差が拡大・固定し、いったんどん底に落ちると這い上がれず、孤立を深め、自分の未来に絶望し、世の中を恨んでいくーーそのような人々を放置してきたこの20〜30年の日本社会の歪みが見えてくる。

父親は4歳で自殺。母親は統一教会に多額の寄付を重ねて自己破産。兄は少年時代に片目の視力を失い、30代で自殺。本人は奈良県内有数の進学校に行くもののお金がなくて大学進学を断念。海上自衛隊に任期制で入るもなじめず自殺未遂。その後はアルバイトや派遣労働を繰り返す。彼は就職氷河期にぶつかって正社員になれず、労働の規制緩和が進んで非正規労働を強いられるロスジェネ世代のど真ん中だ。

歴史に「もし」はないのだが、それでもあえて思いたくなるのは、もし、れいわ新選組の山本太郎代表や明石市の泉房穂市長が唱える「誰一人見捨てない社会」であったならば、教育の完全無償化や奨学金チャラという政策が実現していたならば、どんな親のもとに生まれてもしっかり学んで生きていける社会であったならば、山上容疑者の人生はまったく別のものとなり、彼の兄が自殺することも、彼が世の中に絶望して憎悪にまみれることも、今回の犯行に及ぶこともなかったであろうということだ。

この問題を「親が悪い」「自己責任」で切り捨てる限り、同じような悲劇は繰り返されるだろう。それは本当に社会のどん底を知らないか、想像できない人々の立場である。子は親を選べない。親の人生と子の人生は別物なのだ。

私は山上容疑者より9歳上である。母親が統一教会に多額に献金を重ねて自己破産し、彼が大学進学を諦めた10代はすでにバブル経済が崩壊し、日本経済が下り坂に突入した時代だった。私が10代を過ごしたのはバブル経済崩壊前。母親がひとりで二人の子を育てたが、生活は苦しいながらも職は十分にある時代だった。私も9年遅く生まれていたら、どうなっていたかわからない。個人の努力では逆らいようがない時代背景がある。

どんな経済動向であろうとも、どんな親のもとで生まれようとも、孤立したり絶望したりすることなく、生きていける。それを実現するのが、政治の最大の使命だ。いまの政治はまったくその役割を果たしていない。まずは今回の犯行の根源にある社会的要因を十分に分析し、それを取り除くことこそ、政治やジャーナリズムの使命であろう。

ところが、与野党の政治家やマスコミは、安倍氏の功績を礼賛するか、統一教会と自民党との歪んだ構造を批判するか、この両極端の発信で溢れ、犯行の根底にある社会的問題〜貧困問題、格差の拡大・固定化〜についてほとんど発信がみられないのは残念でならない。彼ら上級国民はそこへメスを入れたくないのではないかと勘繰ってしまう。

鮫島タイムスはそこを照らし出したいと思う。ユーチューブ動画で改めて問題を整理したのでぜひご覧いただきたい。

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