2025年夏、自公連立政権は衆参両院で過半数割れに直面し、日本の政界はかつてない再編の局面に立たされている。これまでの「自公政権」に代わり、新たな連立の枠組みが模索される中、カギを握るのは自民党総裁の座を誰が手にするか、そしてその人物がどの野党と手を組むのか、という点である。
石破総理と森山幹事長が構想していたのは、立憲民主党との「大連立」だった。ともに党内基盤は弱く、第一野党を取り込むことで政権基盤を強化し、悲願の消費税増税を実現する狙いがあった。これを後押ししていたのが財務省であり、財政規律派の野田佳彦元総理を中心とする立憲とも利害が一致していた。
しかし、参院選での惨敗により石破総理の退陣は避けられず、森山幹事長も失脚の可能性が高い。立憲も比例票で国民民主や参政党に抜かれ、野党第一党の地位すら危うい。こうなると、もはや「落ち目同士の連立」は国民に受け入れられず、逆に新興勢力の追い風となるリスクがある。
一方、自民党内では次期総裁レースが激しさを増している。小泉進次郎氏が勝利すれば、連立相手は維新が最有力だ。小泉氏の後ろ盾である菅義偉元総理は、維新を旗揚げした松井一郎氏や橋下徹氏と強いつながりがあるからだ。
菅氏に対抗し、麻生太郎元総理は国民民主党との連携を培ってきた。麻生氏と会合を重ねる岸田文雄前総理や茂木敏充前幹事長が総裁となれば、国民民主との連立が現実味を帯びる。
高市早苗氏が総裁になった場合、立憲は「高市阻止」を優先し、野田政権構想を捨てて国民民主の玉木雄一郎代表を軸とした野党連立を目指す可能性も出てくる。
いずれにせよ、自民党が過半数を維持するためには、新たなパートナーが不可欠だ。
■「自公+α」が必要な時代
そもそも自公連立政権はすでに国政選挙で安定的に過半数を得る体力を失っている。最新のNHK世論調査によれば、自民党の支持率は70代以上では30%超と依然強いが、29歳以下では国民民主党に抜かれ、30代では参政党にすら抜かれている。自民党は「高齢者政党」と化しつつあり、支持基盤の老朽化が深刻だ。
公明党も同様に、参院選での比例票はピーク時の898万票から521万票に激減。創価学会の高齢化に伴い、組織力の低下が顕著だ。もはや自公2党のみで選挙を勝ち抜くのは不可能に近く、「第3極」の取り込みが急務となっている。
しかし、立憲民主党は自民と同様、高齢者依存が強く、現役世代からの支持は低い。維新の会も大阪中心の地域政党に回帰しつつあり、「副首都構想」を連立入りの条件に掲げるなど、全国政党としての安定感に欠ける。
それでも維新には「数合わせ」というメリットがあり、現実的な連立パートナーとして一定の価値はある。ただし、橋下徹氏の発言力が強く、政権内部に混乱をもたらす懸念が根強い。公明党や立憲、国民のように「後ろ盾」がしっかりした政党と比べると、どうしても信頼性に欠ける。
■台頭する参政党と国民民主の選択
こうした中、最も注目されているのが国民民主党と参政党の動向だ。
国民民主党は若年層の支持を集め、自公の「弱点補完」に最適なパートナーである。一方で、参政党が突如として登場し、無党派層や保守層の票を国民と分け合う形となった。結果、比例票では国民、参政、立憲が僅差の三つ巴となった。
国民民主党にとっての最大のライバルはもはや立憲ではなく、参政党である。だが、支持層が重複する両党の戦いは、現状では参政党が優勢と見られている。
注目すべきは、「減税・積極財政×保守」の右下ポジションをめぐる争いだ。かつてこのポジションを確保していたのは国民民主党だったが、参政党の登場で右下の主役の座は揺らいでいる。
この構図を世界的な視点から見れば、「上下対決」――すなわち、グローバリズムvs反グローバリズムの戦いとも読み替えられる。
グローバリズムは金融・軍事・製薬などの国際企業によるルール作りと主権制限を伴い、緊縮財政を志向する。一方、反グローバリズムはこれに反発し、国家主権と庶民生活を重視する。日本では、自民・立憲・維新・国民が「グローバル政党」、参政党は「反グローバル政党」の立場にある。

■国民民主の連立入りが「最適解」
こうして見ると、参政党が右下ポジションを押さえる一方で、国民民主党は次第に右上――すなわち自民党に近い領域へと移行していくと見られる。その結果、自民党と国民民主党の連携は、お互いの「支持層補完」の点でも「思想的整合性」の点でも合理的だ。
国民民主党としても、参政党に食われる前に、自民党と連立を組むことで「現実政党」としての影響力を最大化できる。まさに「潮目が変わる前に動け」というタイミングである。
こうした流れの中で、自公+国民民主という新たな連立枠組みは、最も現実的かつ安定的な選択肢となりつつある。