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3月世論調査「内閣支持率は横ばい」をどう分析するか? 「なお低迷」と判断するか「下げ止まり」と判断するかが4月電撃解散を左右する〜岸田政権、正念場の春

マスコミ各社の3月世論調査が出揃った。岸田内閣の支持率はほぼ20%台で、前月と比べ横ばいだ。

これを「低迷している」と考えるのか、それとも「下げ止まった」と考えるのか。岸田文雄首相が4月や6月に裏金解散に踏み切るかどうかの分かれ道となる。

マスコミ各社 3月世論調査の内閣支持率と不支持率

NHK(8~10日実施) 25%(前月25%)  57%(前月58%) 

読売(22~24日)   25%(24%)    62%(61%)

朝日(16~17日)   22%(21%)    67%(65%)

毎日(16~17日)   17%(14%)    77%(82%)

日経(22~24日)   26%(25%)    66%(67%)

世論調査の数字がマスコミ各社でばらつきがあるのは、いくつか理由がある。

調査手法自体は日進月歩で改善されており、近年は固定電話と携帯電話を組み合わせる手法が主流となった。とはいえ、世論調査にかける費用には開きがある。調査対象に偏りが生じないように母集団をどこまで広げているかで結果に違いが生じるだろう。

それよりも数字の違いをもたらすのは、質問の仕方の違いだ。政党支持率であれば、政党名をあげて質問するとの、政党名をあげないで自由に答えてもらうのでは、結果が大きく違ってくる。後者の場合、例えば「民主党」という回答を「立憲民主党」と考えるのか、「国民民主党」と考えるのか、どれにもあてはまらないと考えるのか、再質問して確認するのかで、結果は大きく変わってくる。政党名を挙げる場合はどのような順番で聞くのかでも結果は大きく変わるだろう。

とはいえ、内閣支持率の質問は「支持しますか、支持しませんか」というもので比較的単純だ。もちろん「どちからといえば支持する」といった質問が入ると、結果が大きく変わってくるが、「支持するか、支持しないか」の二者択一にすれば、他の質問項目よりも違いは出にくい。

それでも各社で結果にばらつきが出るのは、電話を受けた回答者が「朝日新聞なら回答しないでおこう」というように、報道機関によって対応を変える場合が多いからだ。大雑把にいえば、それぞれの社に好感を持っている人に回答者がどうしても偏ってしまう傾向がある。

このため、世論調査の数字は、各社間で比較することにはあまり意味がない。大切なのは、同じ社の数字を過去と比較して、上向きなのか、下向きなのか、トレンドを分析することにある。

そのような世論調査の特性を踏まえて3月の岸田内閣の支持率をみると、ほぼ横ばいという評価が成り立つ。あとはこの結果をどう分析するかが勝負だ。「なお低迷している」と考えるのか、「下げ止まった」と考えるのかで、今後の政局分析は大きく違ってくる。

この分析をするにあたって重要なのは、この1ヶ月で起きた事象を整理することだ。

内閣支持率の押し下げ要因としては、①裏金国会で政権追及が続いた(おもに衆参の予算委や政倫審)②過激ダンスショーなど自民党のスキャンダルが続いたーーの2点だろう。

内閣支持率の押し上げ要因としては、①予算案が3月2日に衆院を通過し、年度内成立が確定した②日経平均株価が史上最高値を更新し、4万円台に突入したーーの2点だろう。

予算案の年度内成立や株価高騰は、財界や富裕層には評判が良いが、大衆レベルでは関心のない人も多い。政治ニュースとしてはやはり裏金問題やスキャンダルの印象が強い一ヶ月だった。岸田首相が弁明を繰り返す様子が思い起こされる。それにしては内閣支持率が下落しなかったというのが、私の率直な印象だ。

この世論調査が4月か6月の裏金解散の判断にどのような影響を与えるのか。重要なのは、解散権を握る岸田首相本人がどう受け止めるかという主観である。これまでの振る舞いからして、岸田首相はかなりの楽天家だ。意外に「下げ止まったな」「これから反転攻勢だ」と前向きにとらえているのではなかろうか。

4月電撃解散に向かう場合、4月上旬には最終決断をする必要があり、4月中旬に予定される次の世論調査を待つ余裕はない。もちろん自民党は独自で世論調査・選挙情勢調査はしているので、それを踏まえて最終判断することになる。

4月解散の場合の想定される政治日程

3月29日(金) 予算成立

4月1日(月)~ 安倍派処分決定→党役員人事(茂幹事長木更迭?)

4月5日(金)  衆院解散

4月8日(月)~12日(金)ごろ 岸田首相の米国訪問

****世論調査は早くてこの週末****

4月15日(月) 4月解散のタイムリミット(日程的に窮屈)

4月16日(火) 衆院選公示(解散見送りなら衆院3補選告示)

4月28日(日) 衆院選投開票(解散見送りなら衆院3補選投開票)

4月解散を見送れば、国会の焦点は政治資金規正法の改正に移る。岸田首相としては通常国会の会期末の6月までに法改正を実現させた後に衆院を解散し、国民の信を得たうえで、9月の自民党総裁選で再選を果たしたいところだ。

だが、4月28日衆院3補選は自民大逆風で、3敗することも想定されている。そうなると「岸田首相では次の衆院選は戦えない」という声が高まり、岸田おろしが加速しかねない。

さらに政治資金規正法の与野党協議は難航必至だ。野党は衆院選で「政治とカネ」を大争点に掲げるため、合意のハードルをあげてくる。自民党は公明党案を丸呑みして野党との接点を探ることになろうが、与野党合意は簡単ではない。協議が紛糾して自民党が改正に後ろ向きな印象が広がれば、内閣支持率は再び下落に転じるであろう。

そのうえに予想されるのは、スキャンダルの続出である。岸田首相の総裁再選を防ぐため、自民党内では6月解散阻止の動きが強まり、内閣支持率を押し下げることを狙って政権内部からスキャンダルのリークが相次ぐのではないか。

このように考えると、岸田首相にとってのベストシナリオは、4月電撃解散である。マスコミの3月世論調査を自民党の独自調査をもとに、岸田首相自身がどう考えるか。日程的にはかなりタイトだが、岸田首相が覚悟を決めれば断行できないことはない。岸田政権は大きな正念場を迎えている。

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