政治を斬る!

オーストラリアから日本を思って(13)米国に追従する二大政党制の弊害を和らげるために豪州で評価されている第三極や独立派の議員たち~今滝美紀

日本では、自公政権が長期化して不正・腐敗・汚職疑惑や不可解な事件が次々に起こり、それを解決しようとしないマスコミ・政府・検察庁の働きに不満を持つ人々は多いと思います。 

また、Samejima Times「ダメダメTop10」で、渋谷区の副区長が区議会議員を“ブタ”と呼んだハラスメントや政治的野望のために戦争を煽る自民党の麻生太郎副総裁の発言を知り、ショッキングでした。

豪州の前政権も9年間で日本にも劣らない腐敗・利権汚職・ハラスメント問題が起こり、それらを正すことが選挙の大きな焦点になりました。党派を超えて声を上げたことで、政権交代が起こり、「反汚職委員会(法的拘束力をもつ政権・政府・公務員等の汚職を専門に裁く独立機関)」(NACC)が、この7月に設立されました。

数々の汚職不正をすべて国会で正すのは物理的に不可能ですが、法治国家として放置しておけないことなので、専門機関が調査・追及・是正する仕組みです。日本でも必要で、実現可能なものではないかと思い、今回の記事で紹介することにしました。

政治が腐敗して機能していないことを危惧し、前連立政権(「自由党」裕福層派+「国民党」=地方の農業や産業と関連したより右派で日本の自民党に類似・色は裕福層地域を示す青)を倒すためにできた政治コミュニティーClimate200 を前回記事で紹介しました。その援助を受け、気候・環境問題の解決を目指すことから緑色を混ぜた、ティールTeal(青緑)候補者/議員たちと超党派での腐敗政治打倒の活動を紹介したいと思います。

超党派の声が繋がりパワーが増しました。Morrison首相と同じ自由党の上院議員Concetta Fierravanti-Wellsが、選挙前にMorrison氏を国会質疑で猛非難したことは、強いインパクトを与え、主要メディアやSNSで広まりました。以下はその内容です。

人生の公の場で残虐な人々に会ったが、Morrison首相は、一番上位のリストに入る。Hawke大臣も続く。『魚は頭から腐臭を放つ』と言う言葉がぴったりだ。憲法を踏みにじって自由党を破壊した。

モリソン首相はルールに基づく秩序には興味がない。それは彼の道、つまり高速道路だ。独裁者であり、モラル コンパス(善悪・道徳の指針)を持たないいじめっ子だ。また、彼はいわゆる宗教信仰をマーケティングとして利用した。

選挙前の予備選は公正に行われず。私は党員の嫌悪感を説明するメールを数千通とは言わないまでも、何百通も受け取った。彼らはモリソン首相が好きではないし、信頼もしていない。彼らは次の国政選挙での見通しに絶望し続けている。党員たちはこれについてモリソン首相を非難している。彼らは次の選挙に協力するつもりはない。モリソン氏は首相にはふさわしくない。そしてホーク氏は確かに大臣にはふさわしくない。

この発言は、多くの人々が感じていた問題点をはっきりと全国に伝える内容で、自党の首相に爆弾を落としたと言われました。

2018年にも自由党の下院女性議員Julia Banksが、自由党Morrison政権が「強固なキリスト教保守の右派であるアンチ女性文化の集団」であることを公で説明したうえで、離党して独立/無党派となり、主要メディアも頻繁に取り上げました。

以下はBank氏が4年後2022年に、自由党が破れ下野した後にその時を回想し「とにかく私は責められた。責められるのは、彼ら自身だけなのに」と発信したツイートです。

2022年5月の選挙活動期間には、自由党の将来の首相候補と目されていたMorrison首相側近の前財務大臣の選挙区Kooyong(ブルーリボンと呼ばれる裕福層地域)に、Climate200(三大公約:1気候環境問題2政治の公正誠実3女性の尊重と安全)からティールTeal候補・Ryan氏が出馬し、最注目区になりました。Ryan氏は小児科医で「Frydenbergに自分の国の首相になってほしくない。自分の地域の代表にもなってほしくない。だから自分が立候補して戦うしかないと思った」と決意を語りました。

選挙区レベルの討論はTV放送されませんが、選挙区の有権者の前で、有権者からの質問に答える形の討論をすることで合意し、全国へ生放送されました。

Ryan氏はこの中で、Frydenberg氏は人々が望む政策ではなく政局で動いていると非難し、的を得た鋭い追及であると評価されました。

有権者「なぜ過半数割れが悪い事だと説明できる人が、いないのですが、どう思いますか?」

Ryan氏「ずっと少数派政府について議論してきました。現政権は長く、自由党と国民党の少数派の連立政権です。少ない方の国民党に捉えられ運営され、政策は右に引きずられています。Frydenberg氏は、国民党党首と自らの政治的野望の捕虜になっています。彼はそれに反することができるポジションにいると感じていない。これがこの国の弊害になっている。反汚職委員会設立と気候問題の法律を成立させることができるのは、独立/無所属議員だけで、政権に影響を与えることができます」

Frydenberg氏「過半数割れの政府は、先行きが不透明だ。私を維持してくれるなら自由党として問題を解決できる」

Ryan氏は、Frydenberg氏がいつも小さな国民党に賛同しているばかりで信用できないと訴えました。特に政局が政治に大きな影響を与えている現状の民主主義の歪みは、多くの人々に知らされなくてはいけないことだと思いました。

Kooyongの選挙は、独立候補Ryan氏の勝利に終わりました。

以下の表は選挙結果です。これだけを見ると「第一希望」が一番多いFrydenberg氏が勝ったように見えますが、少数派の意見が反映される優先順位投票制度を採用しているため、労働党やグリーン党支持者が「第二希望」としてRyan氏に投票したことで、総合的にRyan氏が当選することになりました。

選挙後の独立議員の動きですが、カントリーサイド(田舎の地方)から2019年Climate200の候補者として独立/無所属で当選していたHelen Haines議員は2021年に「反汚職委員会」設立の法案を提出しました。労働党もこの実現を2022年の選挙公約に挙げたことは、政権交代の機動力となりました。以下のツイートはHaines議員が「反汚職委員会設立法案」の副代表に就任したことを報告するものです。

日本でも、腐敗政治を倒して真の民主主義を目指す立憲野党の議員が、反汚職員会と法案を提案すればいいと思います。

不公平な税制で、庶民から過剰に税金が徴収され、不適切な公金の使い方が人々の生活に大きな悪影響を与える原因となっているのが腐敗政治でしょう。腐敗にうんざりしている多くの人々を選挙に向かわせるきっかけになるのではないでしょうか。実際、女性の自民党の支持率が、大きく下がっているとききます。

そのために最も中立な立場で、男女のバランスもよく現代的な政策をとるれいわ新選組は、まずは当選確率が高いと見込まれる地域で勢力を拡大させ、山本太郎代表の言うように国会で影響力を高め、全国に存在感が広がることを期待します。

豪州での2022年の選挙後、政権与党の労働党と第3勢力のグリーン党、独立議員たちによって反汚職委員は設立されました。今後、どのような展開をたどるのかが注目されています。

また、裕福層地区代表の独立議員たちが、経済的に不利な「ひとり親家庭の支援の拡大法案」を通すことに尽力したことが、話題になりました。

今のアルバニージAlbanese首相(労働党)は、公共住宅で暮らす母子家庭で育った庶民派で、25年間の国会議員歴のある自称「社会民主主義派」です。2007年政権交代を果たすも、党内の攻撃で退陣させられた親中のRudd前首相(労働党)を最後まで裏切らず支えた側近として知られています。女性からも一定の評価があり、豊富な経験やモラルコンパスMoral Compass(善悪と道徳の指標)も備えています。

この首相でさえ、野党第一党と連携して、公益に反することを公開する内部告白者保護法等に反対しました。二大政党とは一線を画す第三勢力の党や独立議員の重要性を改めて感じさせる出来事でした。

政権を取り、自分が目指す政治を行うためには、現実問題として妥協も必要だということでしょう。例えば、気候環境問題解決のため一刻も早くCO2(二酸化炭素)を排出する炭鉱やガス産業を削減したくても、これらの産業で生計を立てている労働者や利益を得ている投資家は反発し、労働党には投票せず、結果として政権は取れません。このため、それらの人々が不利になる法律制定は難しくなります。

第9回で「真実を追求して声を上げる人々」を紹介しました。中東での戦争の真実を暴いたことで拘束されているアサンジAssangeさんの解放以外にも、コロナワクチン接種後に苦しむ人々・スマートシティSmart Cityというデジタル管理行政の危うさ・世界で起こる児童虐待や売買・ロシアとウクライナ+西側の争いで、真実を語らない為政者たちやメディアを非難していました。米国とは軍事と安全機密で一体化し、科学技術でも助け合っています。その国で力を握る勢力が、不利になることをすれば、第8回で紹介したように、失脚させられるようなことが起こることは、特に2大政党内では共通した認識でしょう。

日本でも、対米追従外交からの脱却を目指した田中角栄氏や橋本龍太郎氏が「事件」で失脚しました。日本や豪州だけでなく多くの国々で同じようなことが起こっています。

解放が期待された豪州人アサンジさんも、その後、英国の最高裁で米国強制送還(175年間の刑)が決まりました。米国人で同じような真実を暴いた人々は解放されていることから、不公平な扱いに不満の声があがりました。アルバニージ首相は、アサンジ氏の支持者ですが、彼を助けられない自分の力不足を認めていました。

第9回で紹介した「真実を追求し自由を求める集会」では、大きな政党には投票しないように呼びかけていました。大きな政党の利点もありますが、今の二大政党制では、利権や同盟国との繋がりが必要以上に強くなり、縛られ、民意を反映した国益を守る政治が難しくなっている。そこでパワーバランスをとるために必要なのが、利権や他国の干渉を嫌う住民に支持される第三勢力の党や独立議員であるということが、豪州では強く主張されています。

豪州の国政選挙は選挙後3年以内に行われます。次の選挙でどのように変化するか注目されます。

ティールTeal独立議員が国会閉会後、首相を囲む場面が話題になりました。

Daniel議員「首相、ありがとうございます。 この6ヶ月間、真摯に取り組んでくれたことに感謝します。対話、議論、そして超党派の協力があれば、私たちはこの国のために偉大なことを成し遂げることができる。これからも楽しみにしています。野党第一党代表Dutton議員を含め、来年も引き続きよろしくお願いします」

以下は超党派で、初当選を祝う議員たちです。


今滝 美紀(Miki Imataki) オーストラリア在住。 シドニー大学教育学修士、シドニー工科大学外国語教授過程終了。中学校保健体育教員、小学校教員、日本語教師等を経て早期退職。ジェネレーションX. 誰もがもっと楽しく生きやすい社会になるはず。オーストラリアから政治やあれこれを雑多にお届けします。写真は、ホストファミリーとグレートオーストラリアン湾の沖合で釣りをした思い出です。

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