政治を斬る!

オーストラリアから日本を思って(15)真実を追求することを陰謀論だと騒ぐ人々 ウクライナはナチス政権か?~今滝美紀

ウクライナとロシアの紛争、COVIDパンデミックとワクチン、原発汚染水の処理という、不確かなことについて真実を追求しようとする人々が、陰謀論などと短く簡単な言葉で非難されています。まるで真実を隠そうとしているようです。

8月23日Yahoo Japanをのぞくと、「ウクライナはネオナチ政権ではない」という立憲民主党・泉代表の発言を伝える産経記事の見出しが目にとまりました。前回記事で紹介したオーウエル氏・George Orwellの言う「真実の省」で事実はどうであれ、決められたプロパガンダに従っているのか、と心配になりました。

一方で、ウクライナ政権はネオナチと関わっているというロシア側の報道を伝えた原口一博衆院議員を、主要メディアは一斉に取り上げ、否定的な報道を流しました。朝日新聞の記者が積極的に個人のXで否定・非難しているのも目にしました。この偏った流れにも首をかしげました。

ウクライナの戦場からは、日々命を落とす兵士や市民、逃亡する兵士が後を絶たないという報道があります。週末の豪州ABCニュースでは、「政治家は墓を掘るのではなく、子どもたちを教育しなければいけない」というウクライナの高齢の女性を紹介していました。

米国で一番人気がある大統領候補とされながらも、民主党は選ばないとされるケネディ氏(こちら参照)は、戦争を終わらせるために “Put your shoes in others/自分の靴を他の人の靴にはめてみる=違う立場の人の身になって考える” 言いかえると「 ロシアの言い分にも耳を傾けなくてはいけない」と訴えています。

裁判では、両方の言い分が聴かれることは当然ですが、なぜか米国・西側が関与する戦争では、なかなかそうなりません。

日本は、第二次世界大戦中、ファシズム・ナチス政権と組んで(日独伊三国同盟)戦争をしました。そのナチスは反ユダヤだけでなく反共主義でソ連を支配しようと侵攻し、ロシアが祖国戦争と呼ぶこの戦いで、史上最高と言われる何千万人ものロシア人が亡くなりました。

また「昨年、日本・ドイツ・イタリアは、国連の“ナチズムの美化に反対する国連決議に反対した」ことを、ロシア外相の国連総会スピーチで知りました。外相は「過去の大量犯罪を悔い改めていないのでは」と強い危機感を抱いていることを表していました。

日本で戦争犯罪者が祭られる神社への参拝を平然と公にする為政者。今も戦争支援を支持し、中国やロシアも自由資本主義である現代で、今も反共を声高に上げる日本の多くの政治家と統一教会の動き。

これらから過去のファシズムに逆行していないか、自省する政党や政治家の方々の存在は、貴重だと思います。

そこで、今回は戦争の早期終結を願う中立な立場として、日本で真実を追求することを陰謀論だと騒がれていることについて、豪州での主要メディアやSNSからお伝えしたいと思います。


豪州には、NHK相当のメディアが2つあります。一般的なABCとSBSという国際ニュースに重点を置いたものです。政府出資で受信料無料です。

NHKは公共放送なので受信料を徴収すると言っても、実質政府が内容を管理監督しているのなら、国営放送と実質同じで、豪州の約5倍の人口の日本政府がNHK受信料を無料にできるはずなのに、そうしないのは、少しでも国民から搾り取るためか、と憶測します。民主主義を謳う国なら、それを守るために国民に必要な情報を無料で提供する義務があると思います。

豪州主要メディアに不満を持つ豪州人は多いですが、それでも豪州では、違う意見や見方も日本より報道されていると思います。また、日本ではメディアが自公政権に忖度しているとよく言われていますが、逆に豪州や英米ではメディア(支配層)が政治・政権をコントロールしようとしているという見方があります。実際は両方あるのではないでしょうか。

ウクライナはネオナチス政権だ!は陰謀論か?

豪州ではABCが、2022年3月にウクライナ東部ドンバス地方(ドネツク州とルハーンシク州)でナチスと闘っているという人々を現地取材し報道されました。(参照はこちら

このドキュメンタリーの内容、ドンバス地方の人々の声や様子を下にまとめました。

ソ連時代はロシア人ウクライナ人という意識はなく、一つの地域に属する人として生活していました。

アレクサンドラ・リジーナはナチスと戦う使命を帯びた20歳の学生です。ナチスとの戦いは2014年からもう8年に及びます。

ロシアとのウクライナでの戦いが始まる1週間前、アレクサンドラは自称ドネツク人民共和国(DPR)の首都ドネツク市の粗末なアパートで語りました。

「私の母親はウクライナ人で、父はロシア人ですが、私たちはナチスと同じ国に住むことはできません。私たちが何年もかけて経験したことすべてを許すことはできません。私の愛する人たちを殺した人たちと、どうして同じ国で暮らせるの?私たちは二度とウクライナの一部になることはないでしょう」

転換点は2014年オレンジ革命/マイダン革命と呼ばれるクーデターが起こり、民主的に選ばれた大統領が過激派(ナチスだと呼ばれるアゾフ部隊と第二次世界大戦中ナチス・ドイツの側に立ちソ連と敵対したウクライナ人ステパン・バンデラ(過激派民族主義)を崇めている人々も加わった)により追放されたことです。

その後、米国・西側の政府が誕生しました。(これは「西側勢力はウクライナでの戦争回避に失敗したのか?/Did Western powers fail to prevent war in Ukraine?」という豪州ABCでのドキュメンタリー番組2022年11月でも報道されました)そして、親ロシア派が多いドンバス地方の人々への迫害と街の破壊が始まり、人々はウクライナからの分離を主張し、戦いが始まりました。

プーチン大統領は「この戦いは8年間キ―ウ政権によっていじめられ、虐殺の対象となってきた人々を保護するため」であると宣言し「そのために、我々はウクライナの非軍事化と非ナチス化に努め、ロシア国民を含む民間人に対して複数の血なまぐさい犯罪を犯した人々を裁くだろう」と述べました。2022年2月21日、プーチン大統領が国家の独立を認めて平和維持軍を派遣すると発表すると、ドネツクは祝賀ムードに沸き、住民は「ウクライナの非ナチス化に関する極めて公正な作戦の日だ」という声も上がりました。

2014年11月のクーデター後、アゾフは連隊に拡大され、ウクライナ国家警備隊に吸収されました。政治家たちは、アゾフのネオナチ・イデオロギーや、その記章に示されるゾンネンラード(太陽の輪)のようなシンボルを無視または軽視し、この中の人物の中には民政の高職に就いた人もいました。

アレクサンドラは「彼らナチスは極右過激派で、ウクライナでは合法であり、重兵器をもち、ドンバスの人々に対して戦うなら何でも許されます。」と言います。

ドネツクの街頭ポスターには、子供たちがナイフで脅されている様子が描かれており、「禁止」を意味するロシア語が大きく描かれ、ナイフの柄にはナチスのシンボル「かぎ十字」が刻まれています。他の看板には、巨大な母なるロシアがナチス兵士を押し返す様子が描かれています。公共の建物にはロシアの鷹の紋章に並んでDPRの紋章が掲げられ、街は、ウクライナの青、ロシアの赤、ベラルーシ―の白を意味するロシアの国旗の色で、彩られています。

ロシアで放映されているテレビ報道は、我々が西側で見ている戦争とは全く異なる戦争を描いています。速報は西側によるロシアいじめ疑惑を報道し、ベネズエラやイランなどの国々によるウクライナや西側非難を特集しています。

アレクサンドラ・リジーナは真の信者です。

「ウクライナは西側への道を選んだので、ウクライナはもうロシア世界の一部ではありません」「ナチスの国になった。ロシアの世界はそれに反対している」と彼女は言います。

「戦争は8年近く続いていますが、何かが劇的に変わるとは思えません」とアレクサンドラは言います。「私の一番の気持ちは、戦争が早く終わってほしいということです。この作戦は、ウクライナ軍がドンバスで人々を殺すことを止めるという希望を与えてくれます。ウクライナのキーウ、オデッサ、マリウポリに親戚や友人がいます。もちろん私は彼らを悲しく思い、彼らが無事であることを願っています」

何が起こっても、ナチスから無実の人々を救おうというプーチン大統領の努力に対する彼女の信念は揺るがないようです。

以上のような内容でした。

ウクライナ政府がネオナチスと関わっているかどうかは、今の段階で断定できませんが、ドンバス地域やロシアの中ではそのような見方があるということは事実で、プーチン大統領は高い支持率を維持しています。

2011年ウサーマ・ビン・ラーディン氏をテロのリーダーだとし(本人は否定)、米国が彼を殺害し、それを知らせるビデオを確認するオバマ前大統領とヒラリー・クリントン前国務長官の様子が何度もニュースで流れました。同時にこの出来事がプーチン大統領にとって、大変ショッキングだということも伝えられました。明日は我が身だと危機感を募らせるのは、想像できます。

コソボとセルビア・南北朝鮮はウクライナのように米国・西側が関わる過激派による戦争で、分離させられました。抵抗し屈せず分離しなかったベトナム。米国・西側のイスラエルによる侵攻が進むパレスチナ。脱米・西側を選択し、和解したイランとサウジアラビア。そしてパレスチナ支持に向かうイスラム圏の国々。一強から多極化へ、自国の保守と独立の動きが高まっているようです。

テニス全米オープンで優勝したジャコビッチ選手が「スラブ人」であるということを口にします。言語の共通性をもつスラブ人…東スラヴ人(ウクライナ人、ベラルーシ人、ロシア人)西スラヴ人(スロバキア人、チェコ人、ポーランド人)南スラヴ人(クロアチア人、セルビア人、ブルガリア人など)それまで気づかなかったスラブ人の人々の連帯があるのだと気づきました。   

今週のSamejima Times「ダメダメTOP10」で取り上げられた国連総会ですが、豪州でも先週は世界の流れの変化を感じる国連総会でのニュースが多く流れました。

① 国連総会はどの国にも意見を述べる機会が与えられますが、今年は安全保障理事国の英仏中露の首相・大統領が出席せず、ウクライナでの戦争について意見を述べませんでした。米国のバイデン大統領のみが出席し、ウクライナへの戦争支援を呼びかけました。豪州SBSでは、イラン大統領が米国・西側のウクライナ軍事支援を批判している映像も流れました。

② 今までウクライナを支援してきたポーランド首相は、泳ぐのではなく溺れている人を助けようとすると、一緒に溺れてしまうとし、ウクライナへの軍事支援を止め、国と国民を守ることを優先すると発表しました。10月中旬の選挙を控え国内の声に応えたものです。特に戦争で航路が塞がれ行き場を失った安価なウクライナの穀物が流れ込み農家の不満が高まっているそうです。(こちら参照

③ ゼレンスキー大統領へ、米国の上院スピーカーであるマッカーシー議員は、新たなウクライナへの240億ドル支援を拒否し「ゼレンスキー氏は米国議員でもなく大統領でもない。米国のお金をどのように使ったか。勝利の見込はあるか、彼は答えなければならない」と迫った様子が豪州SBSでも報じられました。(こちら参照

④ ウクライナ戦争を支援しているNATO(西側軍事組織)のストルテンベルグ事務総長は、米国・西側がロシアとの約束を守りNATOが拡大を止め、1997年のNATO・ロシア設立法を遵守することで戦争を防ぐことができた可能性があることを認めました。(こちら参照

⑤「悪魔は信用できない」と国連で演説し、プーチン大統領との交渉を拒否するゼレンスキー大統領とブラジルのルラ大統領が対談し「戦争で100%得られることは無い、交渉のテーブルにつき終戦に向かい平和の構築を」と呼びかけました。これはトランプ氏も大統領になれば実行すると言っています。(こちら参照

⑥ また、カナダのトルドー首相は、確実な証拠を示さず、シーク教徒でインドからの分離独立運動の指導者、ニジャール氏が、カナダでインド政府の工作員により殺害されたと非難し、インドは安全保障の点からカナダ人にビザの発行を停止した、という報道が繰り返しありました。

⑦ 沖縄の玉城知事は国連で、「民主的に行われた住民投票で沖縄の有権者が明らかに反対したという事実にもかかわらず、(日米政府は基地建設を)進めている」「米軍基地は平和を脅かしている」これを「世界に目撃してもらう」よう求めたことが、豪州を含める独立系ジャーナリストが取り上げていました。「玉城知事はNGOの助けで、スピーチの機会が与えられた。日本は米国と共にある」という豪州ジャーナリストのポストもありました。(こちら参照

⑧ 豪州SBSでは、9月20日、国連総会は劇場だ、とその歴史的なスピーチを振り返り報道しました。1959年キューバ革命で米国の事実上の傀儡政権であった政権を倒し、キューバを社会主義国家に変え、90歳まで生き延びたカステロ氏の269分のスピーチ。リビアのカリスマ的リーダーのカダフィ氏が国連を「安全保障組織ではなくテロ組織だ」と言った場面、ベネズエラのチャベス前大統領が米国ジョージ・ブッシュ前大統領が演説した翌日に「昨日は悪魔がここにいた。まだ硫黄の臭いがする」と言った場面も紹介されました。

豪州の国連ニュースのSNSでは「なぜ国連は、イラク、アフガニスタン、シリア、イエメン、リビアでの紛争を同じように取り扱わなかったのか」という意見に支持が集まっていました。

おわりに

「どの政治家も未来について嘘をつく」

これは米国のFox Tvで人気キャスターであるにも関わらず、突然解雇されたTucker Carlonタッカー・カールソン氏が、真保守の国だとお気に入りの国ハンガリーで伝えた言葉です。(@TuckerCarlson 8月26・29日)これは、Samejima timesでも言われていることと共通します。

また「問題は嘘の程度だ。政治家の言葉は信用できない。だから出来上がった『プロダクト/製品(国)』を見て、判断するべきだ」「西側から極右/保守だと批判されるハンガリーなんと素晴らしい雰囲気でしょう」とハンガリーの人々を褒めたたえていました。

私がハンガリーに興味をもったのは、NATO・EU加盟の西側のハンガリーの首相やリーダーたちが、早い段階でウクライナへの武器の供給停止と終戦を訴え、ウクライナが米国の企業に農地を売っている、と批判していることでした。(連載第8回

そして、カールソン氏は、確かではないことは、安直に陰謀論だと片付けず「判断を保留し」変化する様々な事実・情報に触れながら推測するようにとも伝えていました。

急速に大きく変化する兆候の中、それぞれの国民や政府はどのような道を選ぶのでしょうか。

冒頭の写真は、民主主義と警告者を守ろうと訴える元気な女性です。


今滝 美紀(Miki Imataki) オーストラリア在住。 シドニー大学教育学修士、シドニー工科大学外国語教授過程終了。中学校保健体育教員、小学校教員、日本語教師等を経て早期退職。ジェネレーションX. 誰もがもっと楽しく生きやすい社会になるはず。オーストラリアから政治やあれこれを雑多にお届けします。写真は、ホストファミリーとグレートオーストラリアン湾の沖合で釣りをした思い出です。

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