「過去50年間のほぼすべての戦争は、メディアの嘘から始まった」というのは、ジュリアン·アサンジさんの有名な言葉です。
これを受けて、ヨーロッパ議会のWallace氏は「米国とNATO の戦争犯罪について真実を語ったために投獄されている ジュリアン· アサンジ を主要メディアの多くが擁護しようとしない。一方、現在同じメディアは既得権益のために、米帝国主義を援助し真実を語らない」とXでメディアに発破をかけました。
また、11月に豪州に招待された国連特別報告者(パレスティナとイスラエル担当)のイタリア人弁護士(国際人権法)アルバニージAlbanese氏もメディアの責任に言及していました。
ABC(豪州のNHKに相当。無料)がこの講演とメディアとの質疑応答を生中継で報道しました。主要メディアも視点や内容の差はあれ、報道していました。
彼女は講演で「多くのメディアは、印象操作や偏向報道でパレスチナ人を非人間化している」とし、それは「記憶喪失」「近視眼」「別の世界」に生きているからだとも言いました。解決のために「言葉の再人間化」「人間性の共有と回復」を求めました。内容に説明を付け加えて、以下にまとめました。
パレスチナ人が最も重大な生存の脅威に直面し、別の意味でユダヤ人、特にイスラエル系ユダヤ人が、失われつつある人間の価値観によって知らされた社会として、深淵を見つめている。
オーストラリアを含む西側諸国が、イスラエルへの非難を聞こえないほどの声で「つぶやく」か「沈黙を守っている」。なぜなら「イスラエルが主張する自衛権を抑制する」ことを恐れているからだ。
それはイスラエルに「自由にパレスチナを攻撃する権利」を与えている。イスラエルを国際法に基づいて公然と批判しないのは危険だ。現実は、国際社会がパレスチナ人とイスラエル人の双方の平和と安全を促進することに見事に失敗していることを象徴している。大胆に行動すべきだ。
ユダヤ人やイスラエル人にとっても人間性を取り戻し、安全のためにも、パレスチナの支配を即刻終わらせる必要がある。
実際は民主主義や言論の自由を謳いながら、国際ジャーナリストが容易にガザに入ることができず、事実を報道することが困難で、そうしようとするジャーナリストの人々や家族までもが、ターゲットにされ、実際は権威主義的な政治が行われているという問題がある。
驚くことは、英国の承認で1948年にユダヤ人の人々がパレスチナに入植し、イスラエルを建国されてから、世界大戦が終了したにも関わらず、帝国主義のようにパレスチナの植民地化、日常的にアパルトヘイトが行われ、度々大きな攻撃という数々の証拠のある国際法違反行為があったにも関わらず、大多数の政府や主要メディアは大きく報道せず、さほど問題視されてこなかったことだ。
例えば、領土主権の喪失/強制退去(ナクバ)、天然資源のイスラエルによる管理、パレスチナ国旗の禁止や廃止など文化的抑圧。
その他にも1967年以来、12歳の子供を含む100万人以上のパレスチナ人が逮捕され拘留されていて「大量投獄」はパレスチナ人全体を征服し、自己決定権を奪い、人種的支配を強制し、武力による領土獲得を進めるための手段として利用されてきた。今日の民主主義はユダヤ人のためのものであり、パレスチナ人はその犠牲になってきた。
ヨルダン川西岸では、各村が刑務所であり、イスラエルの検問所と官僚的な管理によって維持されている。旅行、人との関係、結婚などのために数々のイスラエルからの許可を得なくてはならない。
このような1948年からの迫害の歴史を忘却して語らず、「近視眼」でOctobet7/10月7日の事件だけを切り取って語ることが、イスラエルの攻撃を正当化しエスカレートさせている。
国際メディアでは、イスラエル人の死を犯罪として扱うが、パレスチナ人の死を悲劇として語る傾向がある。
イスラエル人が暴力の犠牲者であるとき、多くの共感と連帯感が生みだされる。しかし、パレスチナ人に対しては、それが欠けている。
国際法上、ガザは独立した存在ではなくイスラエルが占領している地であるため、イスラエル政府や欧米側政府や政治家たちが「イスラエルに自衛権がある」と訴えるのは間違いだ。「イスラエル・ガザ戦争」という用語を使用しないよう警告し、ジャーナリストたちがパレスチナ人の基本的権利の要求がイスラエルの存在に対する脅威であるという認識を与えている(こちら参照)。
また、イスラエルでの国際法違反の非難やパレスチナ擁護をすると、「反ユダヤ」だと批判する、意味のねじれた使い方が武器化され、言論の自由を委縮させている(※HRA/国際ホロコスト記憶同盟/international holocaust remembrance allianceの定義に代表されるそうです)
解決のためには、「言葉の再人間化」が必要だ。この点で皆さんには多くの宿題がある。ジャーナリストの皆さんとお話しできることをとてもうれしく思っている。
彼女はこの講演後、ガーディアン紙のイスラエル政府がアルバニージ弁護士の解任を要求しているというに攻撃的な記事について、「それは私の『反イスラエル的思考』のせいではなく、私がイスラエルの国際法違反を暴露したからである」とXで反論しました。
また「私は何週間も前から、なぜイスラエル軍の報道官や将軍、司令官たちが西側のメディアで、真剣に質問されることもなく、これほど多くの時間を与えられているのか不思議に思っていた。これは、特定のメディアにどれほどのプロ意識、客観性、公平性があるかを物語っている。どうしてイスラエル軍の声明を信頼し続けることができるのでしょうか?」とポストしました。
イスラエルの発した虚偽として、以下を指摘していました。
1. 彼らは病院で「ハマスの名前」が書かれた紙を見つけたと言った。その紙には月曜日、火曜日などのアラビア語で曜日が書かれていた。
2. 彼らは、保育器と病院全体を稼働させるための燃料の供給を軍が妨げていることを十分に承知して、病院に「保育器を送っている」と述べた。彼らは3人の未熟児を死なせ、他の数十人のICU患者も死なせた。彼らは同じ病院の産科室も爆撃し、自分たちではないと言った。@nytimesがイスラエルの砲弾であることを確認した。
3. 彼らはガザの病院で看護師が「ハマスが彼らを去らせてくれない」と言う偽のビデオを見せたが、後にその女性がイスラエルの俳優であったことが判明した。ビデオは演出されたものであることが証明された。
4. 彼らは79歳の男性を安全に通過させるのを助けたと述べ、彼の家族は彼が狙撃兵によって背中に2発の銃弾を受けて死亡したことを確認した。
5. 彼らは、レバノンでテロリストが乗った車を標的にしたと述べ、その車には3人の少女とその母親と祖母が乗っていたと述べた。母親だけが生き残った。
これらは、歴史上、最も才能のないプロパガンダだ。
また、最近ではイスラエル警察の捜査から、October7/10月7日にハマスへの攻撃の際に、イスラエル軍の戦闘ヘリコプター攻撃が、明らかにいると分かるイスラエル人参加者にも命中したことが判明しました。
独立系のメディアDeclassified UKは、地中海のキプロスにあるイギリス軍基地がイスラエルのガザ爆撃作戦を支援する国際軍事拠点となり、アメリカのC-25軍用輸送機がイスラエル首都テルアビブへ飛行した、と報じています。数多くの武器が、ドイツ、トルコ、スペインの巨大基地から英国のキプロス基地を経てイスラエルへ運ばれているという内容です。公に休戦や停戦を訴えながら、裏ではイスラエルのパレスチナへの不法な攻撃を援助している西側の姿がうかがえます。
冒頭に紹介したアサンジさんの「ほぼすべての戦争はメディアの嘘から始まった」には、続く言葉があります。彼は「希望に満ちた発見の一つだ」とも言っているのです。
これらの、数々の虚偽が、多くの主要メディアで大きく非難され、事実が報道され続ければ、多くの人々が、おかしいことが起きていることに気づき、政治に関心が向けられ、穏やかで平和に暮らすために、声を上げ立ち上がる人々が増え、世界を変える可能性があるーーアサンジさんはそう伝え、イーロンマスクはツイッターをXという「だれもがジャーナリストになれる」という形にかえて誕生させたといいます。
日本の主要メディアには、SAMEJIMA TIMES“こちらアイスランド”で小倉悠加さんが訴えた「どうなってるの?日本のマスコミ!」のような激励が、もっと必要なのかもしれません。
豪州で物議を醸しだした出来事がありました。
オーストラリア軍の弁護士であったMcBrideさんは、アフガニスタンでの戦争で、オーストラリア軍の戦争犯罪疑惑を見つけて、公益のためにメディアに内部告白しました。しかし豪州では、機密文書は公にしてはいけないという法律があるため、判事は「命令と矛盾する状況では、オーストラリアの公共の利益のために行動する義務はない」として、McBrideさんは、有罪となりました。弁護団には証拠となる機密文書の開示が許されませんでした。法務大臣は無罪にできるのですが、そうはしませんでした。
この出来事は、戦争犯罪を犯しても罪にはならないこと、今のパレスチナで行われている数々の犯罪は過去の戦争でも行われ、未来の戦争でも行われることを容認しているように受け止められます。第3の党であるグリーン党や独立議員が、内部告白者を保護する法律の設定について声を上げています。
この判決後、McBrideさんはXで「刑務所から闘い続けます。これは私が育ったオーストラリアでも、私の子供たちが住むに値するオーストラリアでもありません。美しいオーストラリア人や世界中から一晩中得たサポートに圧倒されました。あなたは、たとえどんなに暗い夜であっても、私の中に小さな炎を灯し続けてくれました。怒りの風に煽られ、その炎はやがて大火となりこの国を正すでしょう」と伝えました(こちら参照)。
大胆なリーダーたち
はじめに紹介したアルバニージAlbanese弁護士は「大胆に行動する」ことをアドバイスしていました。中国やアラブ·イスラム諸国はダイナミックに動いています。対立していたアラブ·イスラム諸国は、歴史的な和解が進み、11月12日には、サウジアラビアでサミットが行われ、全会一致で、即時停戦が要求され、「イスラエルが犯している犯罪と人道に対する罪」を捜査するよう国際刑事裁判所に要請しました。
豪州SBSでは、欧米側の国から援助された反政府軍たちとの10年以上戦ったシリアのアサド大統領が出席する様子が報道されました。欧米や日本の主要メディアは決して取り上げないでしょう。
アサド大統領はサミットで「アラブのおとなしさは、我々に対するシオニストの獰猛さと虐殺を増大させる。パレスチナ人は、人道援助が必要とされる前に、来るべき大量虐殺からの保護が必要だ。勇敢な抵抗が我々の地域にもたらすものは、世界の方程式を変える政治的手段だ」とスピーチしました。
11月20日には、アラブ・イスラム諸国の閣僚が北京で中国政府と共に会談し、敵対行為の終結と荒廃したパレスチナへの人道支援を促し、ガザ地区での即時停戦を呼び掛けました。また、パレスチナ人に対するイスラエルの行為を正当防衛として正当化することを拒否するよう西側諸国にも圧力を強めています。
11月20日のSamejima times で「日本外交は対米追従で、独自性がない。…これでは中国ばかりかどの国も、日本を相手にしなくなる」と指摘されていました。まさに、欧米側から独裁者と言われようが、国際社会では国の繁栄と主権・独自性・安全を守っている中国に信頼と期待が集まっているようにみえます。
毎日新聞世論調査(11月18~19日実施)で、政党支持率は、無党派26(-1)、自民24(+1)、維新14(+1)、立憲9(-2)、れいわ7(+2)、共産6(+2)、国民5(±0)、公明3(-1)、参政2(-1)と、野党第一党の立憲民主党に、小さな野党が肉薄してきました。
独立した新しい政治を望む人々が増えているのではないでしょうか。逃すには惜しすぎる、チャンス! 日本にもすごいリーダーたちがいることを世界に示してほしいと思います。
憲法9条変えさせないよさんの“政権交代の可能性について考えてみる(その8)” を読むと、その気になれば、その可能性は、次の選挙で高いのではないかと思いました。
※冒頭の写真はシドニーで、ジュリアン・アサンジさんの家族と McBrideさんが、アサンジさんの解放を呼びかける集会に参加して話をする様子です。
今滝 美紀(Miki Imataki) オーストラリア在住。 シドニー大学教育学修士、シドニー工科大学外国語教授過程終了。中学校保健体育教員、小学校教員、日本語教師等を経て早期退職。ジェネレーションX. 誰もがもっと楽しく生きやすい社会になるはず。オーストラリアから政治やあれこれを雑多にお届けします。写真は、ホストファミリーとグレートオーストラリアン湾の沖合で釣りをした思い出です。