日本でも最近、「Deep State/DS/ディープ・ステート/影の力」の存在が取りざたされています。「陰謀論だ!」と反発する人もいます。
立憲民主党の原口一博衆院議員は、米国の日本への内政干渉が日本の衰退や危険を招いていると指摘しています。
辞書を調べると、Deep Stateは「軍、警察、政治団体などの組織。特定の利益を守るために政府の政策を秘密裏にコントロールする。選挙で選ばれることなく国を支配すると言われている組織」と定義されています。(ケンブリッジとオックスフォード辞書より)
みなさんは、Deep Stateの存在をどう思いますか。
Deep Stateと呼ぶかどうかは別にしても、少なくとも月に1,2度開かれる日米合同会議(選挙で選ばれていない官僚と米軍トップによる会議。鳩山由紀夫元首相は「総理大臣にもその内容は知らされないほどの秘密会議」と言っていました)があり、内政に影響を与えているのは事実のようです。
ガーディアン紙は、豪州で1975年、MI6(英国の情報秘密機関)が閣僚会議の内容を盗聴し米国に知らせていたことにWhitlam首相(労働党)が気づき、英米の秘密工作を問題視していたと報じています。Whitlam首相は、大学無償化で庶民に大学の門を開き、原住民や中国との友好関係を築き、人種差別撤廃法を制定し、偉大な首相として現代では高く評価されています。しかし当時は、野党と総督とメディアから激しく非難され、政権を去りました。
この裏には、Marshall Greenという米大使(豪滞在)の働きがあったと見られています。
Green氏は米国の横暴で不吉な「Deep State /影の力」「 Coup master /クーデターの名士」で知られると記事には明記されています。Green氏が豪で行った最初のスピーチは「国のビジネスリーダーたちがWhitlam政権に反旗を翻すよう扇動した」とも評されました。
Green氏は、インドネシアで1965年に何百万人もの命を犠牲にしたクーデターの中心人物であるとも記されています。当時のスカルノSukarno首相(日本のデヴィ夫人の夫として有名です)はインドネシアで勢力が強かった共産党と連携し、哲人政治で国を治め、新興国のリーダーとして活躍していました。今でも建国の父と敬われて紙幣にもなっています。共産主義がアジアで広がることを阻止し、スカルノ首相を失脚させるためのクーデターだと言われています。
Green氏は韓国で1960年、4月革命と呼ばれる親米・反共政権への反乱が起きた時、韓国に米の副使節長として就任しました。翌年5月には朝鮮半島の南北統一や民族統一を求める動きが強まるものの、軍事クーデターで抑えられ、韓国は再び反共政権に治められることになりました。
1954年には、米国はベトナムの南北統一を阻止しようと南ベトナム政府に干渉し、北ベトナム政府を屈服させるるため、ありとあらゆる近代的で残虐な兵器を投入してベトナム戦争を始め、20年間も戦い続け、300万人もの命を奪ったのです。ベトナムは米国の侵略を許さずに1975年に勝利し、親中国となって一党制政治を選択しました。
これらの歴史を振り返ると、なぜ中国やロシアと親しい国々が一党体制の政治を採用しているのか、なぜ欧米政権(日本を含む)が反共を唱え、民主主義を称えるのか、見えてくるものがあるのではないでしょうか。
親中露の一党体制の国々は、米国の「Deep State /影の勢力」の侵入や錯乱を防ぎ、自国の独立を守るための政治を選択しているのでしょう。逆に米国は、世界における覇権を維持して広げるために、たとえ腐敗していても民主主義を善とし、一党制を悪として攻撃し続けているようです。
ウクライナでも2014年に暴力的なクーデターで親露政権が倒され、その後、親米政権が誕生し、東ウクライナの親露の人々への弾圧が始まりました。
ウクライナのゼレンスキー大統領が「NATO(米・西側軍事同盟)には絶対に入らない」として中立を守る条約を締結していれば、戦争を防げたという声も聞きます。ロシアの軍事侵攻には反対でも、米国がNATOの東方拡大はしないという約束を破ってウクライナの加盟に動いたことに不信を抱き、危機感を募らせ、自国防衛のために戦争を始めたという構図が見えてきます。
平気で国民との約束を守らない日本の自公与党。平気で野党共闘で挙げた消費税減税を選挙後に否定し、対米追従を非難するれいわ新選組や共産党を突き放す立憲民主党。これらは約束を守らない米国と「Deep State /影の勢力」の手法を踏襲しているように見えます。
ウクライナは世界有数の莫大な借金を抱え、代償として、肥沃で世界の食糧庫である農地を他国にも売る法案を通しました。ウクライナの裕福層や欧米・サウジアラビアの企業に売られているようです(こちら参照)。言い換えると、支配者たちは自由を獲得すると言って戦争を続ける一方、国民の命や財産を他国に売り払っているということでしょう。
ハンガリーで二番目に大きい政党のリーダーは「ウクライナは狂っている。ゼレンスキーは米のBlack Rockという多国籍企業と契約して国を売った。ウクライナはもうBlack Rockの土地だ。戦争は全てを破壊している」と非難しています。
これは、れいわ新選組の大石あきこ衆院議員らが訴えるように、日本でもすでに起きていることではないでしょうか。
平和外交を怠り、反対に攻撃的で挑発的な集団的自衛権・(先制攻撃になり戦争を招きうる)敵基地攻撃能力保有・防衛産業強化法案等は、「Deep State /影の勢力」の手法を踏襲し、隣国との戦争準備を着々と進めるもののようです(Samejima times参照)。多くの国民が不信を抱いて危機感を強めているのに、野党第一党の立憲民主党はこれらに断固反対せず、追従しているということは、少なくとも立憲執行部は「影の力/Deep State」と関わっているのではないかと思えてきます。
野党第一党は、安全や庶民の暮らしの悪化を救うべく野党をまとめるポジションにいるはずなのに、与党や「ゆ党」と手を組み、人々を助けようとしていません。非難されても、まるで理解していないか、無視しているようです。れいわの櫛渕万里衆院議員は以下のように指摘しています。
グローバル化で世界の国々を支配しようという動きがあります。ウクライナのようにです。日本でも戦争の悲劇を招き入れ、その上、他国とその企業や裕福層に日本が売られるということは予想できます。
この差し迫る危機を、れいわ新選組の大石あきこ・くしぶち万里両議員は訴えているのに、与野党で懲戒動議を出すのは、まるでいじめのようです。過去に自分たちも同様の行動をしていたのに、隠したい真実を指摘されて過剰反応し、逆切れしているようで、とても危険だと思います。
これを止め、日本を救うためには、Samejima Timesが訴えているように、至急、本気で与党と「ゆ党」(より過激な鷹派)と戦い、日本を守る勢力を結集して本物の野党をつくり、手遅れになる前に政権交代を目指さなければ、後戻りできない大変なことになる可能性は大きい。小さな違いは横に置き、協力すべきです。
豪州での報道によると、中国政府は、国家の安全を守るため、内政干渉(台湾など)さえなければ他国を攻撃しないと宣言しています。事実、戦後は戦争を起こしていません。戦後も数々の戦争(犯罪を含む)や援助を継続し、中国やロシアの周辺に数々の軍事基地を設けて緊張感を高めている米国や、それに服従する敗戦国日本の与野党の姿は、滑稽に映ります。
日本の野党の様子を豪州で周囲の人々に話すと、「10年以上野党で、全選挙区に候補を立てない?選挙で政権交代を目指さない?それは野党なの?なぜ野党なの?」と不思議そうに問われました。
立憲民主党の泉健太代表が5月12日に鮫島さんへ送った「しかし各政党がしのぎを削る中で議席を伸ばすこと自体、決して簡単ではないことはお分かりだと思います」というメッセージは、多くの人々が募らせる危機感をよそに、選挙前からギブアップするかのような気弱なものでした。ただちに辞任し、やる気がある議員へ道を譲るべきだという意見に私も賛成です(Samejima Times 参照)。
このような中でも、欧米と距離を置く国々は、戦争を拒否し平和への道を選択する動きをみせており、光を感じます。
2024年の米大統領選に名乗りをあげたケネディ元大統領の甥であるロバート・ケネディRobert Kennedy(民主党)が「大統領になれば世界から米軍を引き払う」と述べていることを日本メディアも報道していました。彼は以下のように訴えています。
「バイデンが米国でやっていることも、ウクライナの戦争も嫌いだ。早期にウクライナでの戦争を終息できたはずだ。ウクライナにとってよくない。米では1/4の人々が空腹で眠りにつく中、巨額の公的資金が戦争につぎ込まれ、低所得者への食料切符や医療援助が大幅にカットされている。米には世界の警察であるべきと言う考えがあり、不公平がある。ネオコン(新保守主義という米の価値や民主主義を武力でも広げる)の陰謀で、私たちはウクライナで30万の兵士と1万4千人の命を奪った。プーチンを取り除きロシア軍を弱体させようとするたくらみで、見栄を張るためにウクライナの人々を犠牲にしている」
ケネディ氏は別の動画で、操作される可能性がある選挙システムを変える必要があるとも訴えていました。
豪州で紹介されている記事は、有権者の3/4がバイデン大統領の再選を支持しない中「バイデン氏(民主党)の再選は彼のため?それともDeep Stateのため?」と疑問を投げかけています。米国のメディア規制も指摘しています。
軍事産業と連携する力と「Deep State /影の勢力」を振り切り、ケネディ氏は勝てるのか? 有権者から支持されていないバイデン氏が勝ってしまうのか? 民主党内での大統領候補争いに注目しています。
目に留まったニュース
G7を前に、在豪中国大使が記者会見した様子が報道されました。
肖千大使は「第二次大戦の敗戦国である日本が、終戦時に確立された国際システムを守ろうとするのは、皮肉なことだ」と述べ、G7広島サミットに不信を投げかけました。「中国と豪州は交戦したことがない。中国は脅したこともない。日本のようにダーウィンに爆弾を落としたこともない。日本のようにオーストラリア人を殺したこともない。捕虜を拷問したこともない。中国は、過去にも現在も未来にも豪州を脅かすことはない」と発言したのを聴き、過去の失敗から学んでいない日本政府の振る舞いを、日本人として、とても恥ずかしく感じました。
また肖千大使は、AUKUS(英米豪安全保障同盟)に嫌悪感を示し、中国を標的にしてほしくない、英米に巨額を払う原子力潜水艦の購入は、人々の生活を犠牲にするだけだと指摘しました。一方で、お互いに尊重し合えるなら、協力関係を高めることができる、と大人の対応を見せました。下のツイートです。
私は、盲目的な対米追従を止める野党が結集して、より多くの人々の声が反映されて幸せを感じる、平和で公正な社会、健全な民主主義をつくる政権の誕生を切に願います。
冒頭の写真は、ベトナムからの難民・移民の人々が多く住んでいるMarrickvilleという町にある壁画です。 中心に描かれているのは、米の帝国主義に反対し、民族解放や国々の独立のために生涯戦い続けたことで有名なチェ・ゲバラです。「ベトナムをつくれ!」は彼の合言葉でした。
今滝 美紀(Miki Imataki) オーストラリア在住。 シドニー大学教育学修士、シドニー工科大学外国語教授過程終了。中学校保健体育教員、小学校教員、日本語教師等を経て早期退職。ジェネレーションX. 誰もがもっと楽しく生きやすい社会になるはず。オーストラリアから政治やあれこれを雑多にお届けします。写真は、ホストファミリーとグレートオーストラリアン湾の沖合で釣りをした思い出です。