200回目を無事に迎え、ついでに(?)65回目の誕生日も迎えて、特に何か大きな物事を成し遂げた訳でもないのに脱力感を覚えている。
アイスランド国内と日本があれば満足で、海外に出る気力がない。
アイスランドは北欧やヨーロッパへのハブで、結構便利な立地条件だ。だいたい3時間も飛べばヨーロッパ各地や北欧諸国へ行ける。アイスランドをハブにできる間にあちこちへ行きたいと思っていたのも束の間、海外に出るのは面倒でどうでもいいと思うようになってしまった。
コロナの間にアイスランド国内のドライブで絶景を堪能できる味をしめ、それで海外はどうでもいいとなっているのかもしれない。それにしても、なんだかモワっとしたメンドイ感がぬぐえない(贅沢な悩み!)。
このモワっとした感じは、日本からアイスランドへ戻ってからずっと続いている気もする。
ちなみに基礎疾患はない。気づいてないだけかも?!
もしやこれが老化とか老境というもの?いやいや、まだ足腰もシャンとしてるし、去年だっていきなり20キロ山道を歩いても何とかなった。老化は認めるとしても老境には早すぎないか?
そんなことを考えながらも、白夜はやってくる。日照が長いのはいいことだ。
日照が長くなる、もうすぐ白夜だ。イコール、我らがドライブ三昧の日々が近い。バカじゃんと思うほど、夫とは道路の話をする。道路公団の地図を見ては、あそこの道路が開通したらしい、内陸部はまだ全滅等、日々の道路状況チェックに余念がない。
ん?道路の話になるとトタンにメンドイ症候群がいなくなる。国内ドライブは空港へ行く必要がない。家から出て数メートルのところに車はある。歩行移動の距離が短すぎて、メンドイと言えないからなのか?

それから、ここ数週間ほど、アイスランドの天気が素晴らしすぎることもお伝えしたい。去年の夏は惨めだった。確か夏は8月末の水曜日に来たはずだ。違った?とにかく、気温も上がらず、観測史上レイキャビクの夏の晴れの日が最悪だったことは確かだ。
去年の夏の恨みを既に晴してしまったかのように、ここ2-3週間ほど気温が高い!最高15度にリーチは盛夏だし、5月に19度を叩き出してレイキャビクでの観測史上最高の数字を叩き出した。快挙!
温暖化?誰も大きな声では言わないけど、この国では歓迎する人が多いと思う。氷河?そりゃ溶けるけど、日々の暮らしで寒い寒いと年中肩を縮め続けている国民なので、暖かいのを歓迎しない訳がない。それが人情でしょ?違う?!
天気がよくなり始めた2025年5月18日、私たちは今年初の山岳道(F道)へ行ってきた。内陸部はまだぬかるんでいるのか通行禁止。唯一通行止めでなかったのがF249号線だった。
F249号線は噴火のためにヨーロッパ中の航空便を止めた悪名高きエイヤフャットラヨークトルという氷河の周りを進み、先方にはもうひとつ、ミルダルスヨークトルという氷河仲間も控える。


F249号線の終点は全世界のハイカーから絶大な人気を誇るフィムヴォルズハウルス (Fimmvörðuháls)の入り口近くだ。ハイキング前後にキャンプをする人も多く、当然キャンプ場もあるし、ハイランドバスと呼ばれる公共バスも通っている。
そこへ到達するまでに多くの川を渡る必要があり、いくつかは氷河の川になる。
地図上で川の数を数えてみた。15ヶ所あった。季節によっては川が枯れている時もあれば、川の流れが変わって川ではなくなっている場所もある。どちらにしても片道10ヶ所以上はある。
通行量はそこそこあるし大型車も多い道だ。もし川でトラブルがあっても、助けにはひどく困ることもなさそうだ(これ、結構重要)。シーズン開始に伴い渡河に慣れていく必要がある。行き先としてはもってこいだ。
ここで渡河に関しての注意をさくっとまとめておきたい。
アイスランドには大まかに2種類の川がある。透明の美しい水をたたえる川と濁流の川だ。透明であれば水の流れや深さがある程度読めるけれど、氷河の水は火山灰の混ざった濁流であるため川底が全く見えない。濁流を渡る際には清流よりも注意が必要だ。
加えて川の流れは変わりやすい。午前中は小さな川でも、天気のいい日は暖かな太陽に照らされ溶けた雪や氷が川に流れ込む。小さな川も午後には安全に渡れなくなるほど流れが大きくなっていることもある。同様に降雨も川の水位に大いに関係がある。
渡河を伴う道は、渡河の経験があるドライバーと一緒に行くか、他の車が渡るのを見てから進んだ方がいい。
幸いにも私たちは一度もトラブルにあったことはないけれど、大きな川を前にして10分待っても誰もこないため、引き返したことは何度かある。雪道なども引き返したことがあるし、危なそうなら引き返すを鉄則としている。
この道での難関とされている氷河の川は無事に渡ることができた。帰路は数センチほど深くなっていたようだった。往路、復路ともに渡った後は車から出て、どこまで水位が上がったかを写真にも収めた。
これは往路で川を渡った時の動画だ。
シーズン当初は道路公団が渡河ができるよう経路を確認した直後なので、渡りやすい場合が多い。とはいえ、水圧で大きな石がルート上に流れつかない保証はない。そこらへんは水面の水の跳ね方で判断する。
大体の場合渡河ルートは分かりやすいけれど、時々迷う場合もある。数ルートあるようにも見える。実際、大型車はどこでも大丈夫なのでテキトーにバシャーっと通っていく。我が家はかわいいSuzukiのジムニーなので、それなりに注意していろいろと考えてから渡る。
凪いでいる場所は要注意だ。底が深いので表面が凪いでいると思わなくてはいけない。何を間違うのか、川で事故る車の写真を見ていると、「なんでそんな場所通りますか?」ということがある。たぶん、川底の石の影響で水面が荒れて見える場所よりも、水面が凪いでいる場所を選んだのではないだろうか。
どちらにしても、レンタカーでの慣れない渡河は避けるべきだ。渡河で事故を起こすと保険外となり数百万を自腹で支払うことになる。そんなの絶対にやだよね!
この道の終点はバゥサル(Básar)キャンプ場だ。けれど、道路公団の地図を拡大していくと、その先にも灰色の細い線が見える。それはジープ道だ。
川に侵食され、あまりにも道路が見えないため滅多に誰も通らない。
そして到達するのは、小型車では絶対に渡れない川となる。どちらにしても道として公式に認められているのはここまでだ。目の前の川を渡ると、ミルダルス氷河の側へと向かうことになる。
そこで見かけたのはレスキュー隊のみで、どうやら若者に岩場や渡河の訓練をしているらしかった。



ここまで書いて思い出した!この道からエイヤフャットラヨークトル(氷河)の舌の部分へ行ける。そのことを以前書いたことがあった。
この舌へは数度行ったので、今回は別の場所を探求しようということで、少しばかり足を伸ばしてスティガフォス(Stigafoss)という滝へ寄ることにした。
ここはまだ観光地化されておらず、駐車できる場所から滝へ到達する前に、2ヶ所ほど川を徒歩で渡る必要がある。ルートが分からないのでこれは適当に探すしかない。川は大きそうな石をつたって行くことはできた。ハイキング・ポールがあったのでバランスを取るのに役立ったけれど、無かったら冷たい水の中に足を突っ込んでいたかもしれない。
渡れる場所を探すのに夢中で写真がない・・・。と思ったら、彼がそれっぽい写真を撮っておいてくれた。距離にして片道1キロ程度かな・・・。標高差が結構ある。ハイキング慣れしている人であればなんということはない距離かと思う。
65歳の大きなお姉さんで、およそハイキングに適していない格好でも行けた。風がなかったのでオッケー。風がない日のアイスランドは最高!


ここも滝の裏に行ける!けれど、どうも瀧裏の道が細いので、見ただけで私は行くのをやめた。第一この格好だし。ということで、写真は前の方から撮ってもらった。と思ったら、道端の草花の写真を撮ってる私が写ってた。


私は少し臆病なところがある。臆病というか、安全第一という言い方にしておこう。ここは私にとっては海外だ。万が一を考えると、気が進まない場所へは行きたくない。滝裏の道、大丈夫そうではあったけれど、ハイキング予定の服装でもないし、ここまでが気持ちよく進める私の限界だった。

冒頭に、脱力感だの老境だのと書いたけれど、これを見る限り「この人のどこが老境で脱力感でメンドイなのか?」という感じですね。自分でもそう思う(苦笑)。

帰路(下り)は少しルートを外れてみた。すると、私たちが「ハイランド・カラー」と呼んでいる、蛍光色の植物を見つけた。夏の間だけ、水際で見かける植物だ。名前を知りたくてアイスランド人にも尋ねてみるも、誰も知らないようだった。
こうして書きながらこの1日を振り返ると、思いの外充実していた。アイスランド国外へ出るのがメンドイというのは、やはりアイスランド国内だけで十分楽しめるからそれでいいじゃないの?ということなのかもしれない。
小倉悠加(おぐらゆうか)
東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド在住。メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、ツアー企画ガイド等をしている。高校生の時から音楽業界に身を置き、音楽サイト制作を縁に2003年からアイスランドに関わる。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、社会の自由な空気に魅了され、子育て後に拠点を移す。休日は夫との秘境ドライブが楽しみ。愛車はジムニー。趣味は音楽(ピアノ)、食べ歩き、編み物。
