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こちらアイスランド(65)レイキャビクから気軽に湾岸ドライブ、変化に富む鯨湾の冬景色

コロナで海外に出なかった2020-2021年の二年間。冬の間の楽しみはアイスランドの冬景色を見つけることだった。と書いても、「アイスランドに居るんだから当たり前でしょ!」としか思われないかもしれない。

それが違うんだなぁ。冬のアイスランドに繰り出すのは、肝煎りのアウトドア・マニアくらいしかいない。

だいたい、コロナ禍になるまでアイスランド人はアイスランド旅行をしなかった。ましてや冬だ。鼻水が凍るような寒さをおしてまで、無理に自然観光をしようという奇特な住民は少ない。私たち夫婦も冬は似たようなものだった。

コロナで海外へ出られなくなり、同時に国内から観光客の姿が見えなくなった。それじゃ試しにと天候を見計って自然観光に出かけたコロナ禍の冬。いやぁ、素晴らしかった。特に凍りついた滝の姿は想像を超え、度肝を抜かれた。

そんなアイスランドの冬の姿を、サメタイの読者のみなさんに見てもらいたいとずっと思っていた。なのにこの冬は私が日本で二ヶ月間を過ごした上、アイスランドの1-2月は記録的な悪天候で、3日に開けず警報・注意報の類が発令された。その他諸々の事情もありで、ずっと家から出られなくなってしまった。

3月に入り、やっと一度だけ郊外へ足を伸ばすことができたので、早速お裾分け!向かったのはHvalfjörður(クヴァルフョルヅル=クジラ湾)という湾。この湾岸道を走るだけで。十分に景色を楽しめる。

Hvalfjörðurの入り口近くの道は、2月の大雪の跡が見てとれた。

湾の入り口は、レイキャビクから車で30分ほどの場所にある。湾の奥行きは約30キロメートルで、湾全体をぐるりと回るには、1時間ほどかかる。刻一刻と変化する景色は楽しいし、気になる場所にちょこちょこと車を停めれば、半日旅行としてちょうどいい。道も整備され、交通量も多くない。

その昔、アイスランドを一周する際は、1時間をかけてこの湾をぐるりと走る必要があった。今は湾の入り口からトンネルへ入り向かい側へ抜けるので、10分弱で済むようになった。

全長約6キロのこのトンネルは工事に2年ほどかけて1998年に完成。その後20年間は通行料が課されていた。片道千円ほどかかった通行料は、工事費が回収できた2018年に全廃(どこぞの首都高に見習ってもらいたいものだ)。トンネルのおかげで便利になったのと同時に、湾岸の交通量が激減した。それでも、もしもトンネルが使えなくなると、この道がライフラインになるため、通年きちんと整備されている。観光にはいいことづくめだ。

特に大きな見所こそないけれど、周囲を囲む山脈は美しく、変化に富んだ道中で、アイスランドらしい清々しい空気をたっぷりと味わうことができる。

たとえばこの場所。Laxá í Kjós(ラクサゥ・イ・キョゥス)という川で、鮭がくるので釣りもできる。景色もいいため駐車場もあり、ひと休みするのにちょうどいい。

Stíflisdalsvatn(スティフリスダルスヴァトン)という湖から流れ出る川Laxá í Kjósにかかる橋。
Laxá í Kjósは川でも、段差の激しい部分は滝のようでもある。

この日は流れる水量が多く、とてもダイナミックな印象だった。ところどころに雪を乗せた氷の板があり、少しだけ氷河湖を思わせる風情も。ここは夏に来ると、スラリとした水の流れが美しく、女性的に見えることも少なくない。訪れる時期により、かなり印象が変わる場所だ。

この湾岸には第二次世界大戦でアメリカとイギリスの海軍が使った施設の廃墟もある。歴史の悲哀が見え隠れし、大変に雰囲気があり、日本のアイドルが撮影に使ったこともある。残念ながら今回は海岸にあるそこへの道が通行止めになっていた。ここはぜひお見せしたい場所なので、以下は数年前の3月に撮った写真。

1940年台にイギリス軍が、後にアメリカ軍が使用した基地も今では廃墟に。

この廃墟から数分も走ると、今度は秋口に羊を集める囲いの跡と小さな滝が見えてくる。夏であれば滝だけが白く目立つけれど、今回は滝の白が雪と同化してどうにも目立たない。

角ばっているのはかつて羊を集めた石造りの囲いで、山の手前の左手奥にかろうじて滝が見えている。
これがその滝。Fossá(フォッサォ)という川が流れるFossaréttの小さな滝。

こうして滝のそばに来るのは何ヶ月ぶりだろう。夏の間は毎日のように滝を見る生活だったのに。

写真を遡って調べてみたところ、10月10日が滝を見た最後だった。ということはほとんど5ヶ月ぶり!どーりで、「久しぶり!懐かしいね!』と滝に話しかけてしまった訳だ。

また少し湾岸を移動しよう。

湾の一番奥の少し手前に、夏は全く目立たないごく小さな水の流れがある。そこは冬になると氷柱が立ち並び、人の目をけっこう引きつける。道路からすぐそこに見えてはいるが、それは少し山を登った小高い斜面にあり、今回は雪が深すぎて到達することは諦めた。小川が雪の下に埋もれて見えないからだ。ーーと書いただけでは何もわからないので、去年1月の写真を。

その代わりということでもなかったが、湾の一番奥深い部分にある、無名の滝を探索することにした。有名なGlymur(グリムル)の滝へ行く道の入り口あたりだ。

いつも横目で見ながら通り過ぎてきた。この滝はなぜ今まで寄らなかったのか不思議なほど、道路から近かった。

滝の名前は調べても分からなかった。アイスランドに無数にある名無し滝のひとつ。

正直なところ可もなし不可もなしの滝ではあるけれど、夏であればピクニックにちょうどいい気がする。この滝の前で、お弁当を広げれば、さぞや気持ちがいいだろう。滝壺は浅そうなので遊ぶこともできるかも。

この湾岸は夏になれば羊の姿も見られるし、冬でも馬は屋外に放たれている。道沿いの小さな集落には歴史的な教会もあるし、コミュニティプールや牧場カフェなども点在していて、有名な観光地こそないけれど、見所は実は書ききれないほどもっとある。何よりもレイキャビクから気軽に行き来できる距離感がいい。

ここまで書いてハタと気づいた。湾の全般の雰囲気がわかる写真がない!その上、時期が時期なので写真の色がごく地味。うーん、どうしようか・・・。冬のアイスランドの景色をと思い、書き始めたんだけど、地味な場所なので、写真がイマイチ面白くない?!

そしたら、写真をおまけ!

黄色く見えているのは、夏になるとアイスランド各地で咲き乱れるいソーレイの花。
右手に丸く見える山のあたりが、この湾の一番奥の部分になる。

うっわ、やっぱり夏の写真の方が気持ちがいい(笑)。どちらにしても、このHvalfjörðurはレイキャビクからの小旅行にお勧めなので、ドライブをする機会がある人はぜひどうぞ。

そして来週は「こちらアイスランド」連載1周年記念!気づかなければ素通りだったけど、気づいてしまったので、来週は「こちらアイスランド」の一年を振り返ることにしますね。

小倉悠加(おぐら・ゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド政府外郭団体UTON公認アイスランド音楽大使。一言で表せる肩書きがなく、アイスランド在住メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、カーペンターズ研究家等を仕事に応じて使い分けている。アイスランドとの出会いは2003年。アイスランド専門音楽レーベル・ショップを設立。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。自己紹介コラムはこちら