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こちらアイスランド(5)移住や留学を本気で考えている人たちへ〜小倉悠加

このコラムを書くことになり、最初の数本はすぐに書けたし、題材にできそうな話題はまだまだある。このままシラっと続けることはできるけど、少しここで自己紹介をしておいた方がいいかなと思う。どうでしょう?

第一回目に書いたように、風通しのよさを求めてこの地にやってきた。既に風通しがいいことは知っていたけれど、不安がなかったかといえば、不安だらけ!当時の年齢50代後半。そんな年齢で海外に移り住む?

普通であれば確実に「無謀」な行為。

日本人が外国に住む場合、移住国先でさまざまな条件を満たすことが必要になる。EUやEEA圏内の国に住む人は、「商品、人、サービス、資本の移動の自由」があるため、制約がゼロではないにしろ、気軽に他の国に移り住むことができる。

そこに属さない日本人がアイスランドに住むには、非常に厳しい条件がつく。

私は2004年からアイスランドに関するブログを書いてきた。なぜかそのブログは芸能人などの有名・著名人の書く「Excite! 公式ブログ」になっている。アイスランドでの物事が面白くて、力を入れて書いていた時期もあれば、スランプのように何も書けなくなった時期を経て、現在に至っている。

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そこによく飛び込んできたのが、移住や留学の相談だった。最初は自分も興味があるため丁寧に調べて対応していた。丁寧に調べて対応すればするほど、相談者の質問も微に入り細してくる。間違ったことを伝えてはいけないと、費やす時間や労力が尋常でなくなる。調べがつかないことは「わからない」と伝えるしかない。結局、非常に難しいことが判明して、相談者からの連絡がプツリと途絶える。

「留学を本気で考えています。どの程度の語学力が必要になりますか?」「移住したいので条件を教えてください。」「移住を考えています。住み心地はどうですか?」

こういう相談を投げてくる人が、真剣に留学や移住を考えてることは、残念ながら経験上まずない。本人は「真剣・本気」と思ってるようだが、それはイリュージョンだ。本気ならまず自分で調べる。関係書類の英語が読めないのであれば、移住・留学を考える前の話。どちらにしても私に尋ねるのではなく、大使館等の政府機関に問い合わせた方がいい。

アイスランドが好きでアイスランドに住みたい、留学したい、という気持ちはよくわかる。私自身がまさにそのひとりだった。応援もしたい。なので、ここに少し自己紹介もおりまぜて移住・留学関係の物事を書いておこうと思う。

留学の条件は基本的にどの国でも似かよったものだろう。私が米国に留学していた半世紀前と、基本的には変わっていない気さえする。「学力」「語学力」「資本力」がセット。健康であるかどうかの、基礎疾患を問われることも。

「学力」は成績証明や推薦状。「資本力」は留学に必要な生活費が出せるかの貯金の残高証明等。アイスランドでは留学生でも、ある程度のアルバイトは許されているが、あまり期待しない方がいい。「語学力」は英語だ。TOEFL等の成績証明が必要になる。どの程度のスコアが必要なのかは各自調べてほしい。以上!簡単だ(笑)。

ちなみに、2018年からはワーキングホリデー制度が導入された。就業することが前提となるワーホリといえども、自己資金がないと許可が下りない。生活費は高いので、日本円にして百万円を超えると思われる。現在のアイスランドのジョブ・マーケットはコロナの影響が大きい。アイスランド人でも仕事にあぶれている。地元に知り合いのいない外国人が、すんなりと、ワーホリ ですぐに仕事につけるとは思えない。けれど、制度をどう利用するかはその人次第。若い人が見聞を広げるには悪くなさそうだ。

また、留学の際にアイスランド語は?と思うかもしれないが、必要ないっす。アイスランド語を学ぶために留学する場合、必要なのは英語。留学がともなわない移住に関しては、英語さえ必要はないけれど、英語が理解できないと苦労は避けられない。

言語とえいば、今は機械翻訳がある。アイスランド語はマイナー言語なのに、15年前の早い時期から機会翻訳は可能だった。それでもいまだ細部まで頼れる精度はない。機械翻訳をさらに読みくだく、二重の作業が必要になる。アイスランド語は英語と同じくゲルマン語源なので、アイスランド語→日本語より、アイスランド語→英語の方が精度がいい。つまりはめぐりめぐって英語力が必要。

移住(居住許可)にはカテゴリーがある。留学もそのひとつだし、他にはアイスランド人の家族、地元企業への就職、ヨーロッパ・北欧圏内では見つからない専門家、オペア留学、宗教従事者のカテゴリーも。うーん、私はどれにも当てはまらない。どうしよう・・・。と思っているところに目に飛び込んだのが、

「アイスランドとの特別な関係保有者」

どーよこれ?!私の活動がアイスランドの新聞に初めて取り上げられたのは2003年。以来、2年に一度はあれやこれやで記事ネタを提供してきた。アイスランドは世界平和指数ナンバーワン。平和であるため、ニュースも少ない。目立つ動きをすれば、新聞記事になる確率は高い。とはいえ、そう簡単でもない。私が拠点を移す前年には、新聞の一面に顔写真が載ったし、記事は二面を割いての特集となった。これを「アイスランドとの特別な関係保有者」と呼ばずに何と呼ぼうか。

(つづく)

小倉悠加(おぐら・ゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド政府外郭団体UTON公認アイスランド音楽大使。一言で表せる肩書きがなく、アイスランド在住メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、カーペンターズ研究家等を仕事に応じて使い分けている。本場のロック聴きたさに高校で米国留学。学生時代に音楽評論家・湯川れい子さんの助手をつとめ、レコード会社勤務を経てフリーランスに。アイスランドとの出会いは2003年。アイスランド専門音楽レーベル・ショップを設立。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。アイスランドと日本の文化の架け橋として現地新聞に大きく取り上げられる存在に。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。

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