オーロラの季節が到来した。もはやアイスランドは冬。
昼間は二桁の気温を叩き出すこともあるとはいえ、足早に冬はやってくるし、夏の気分を引きずっていると、心理的にもズシンと落とされる。夏休みは終わり、子供たちも学校へ戻って行った。私の生活もコロナも大学も関係なくなり、やっとやっと、少し自分らしい毎日が戻ってきた気がする。
夏の間にもっといろいろな場所へ行きたかったし、植物も観察したかったし、ハーブも摘みたかった。それなりに課題はこなした。けれど、もっともっとという欲張りな心がこの場に及んでむくむくと頭をもたげてくる。
まだまだ夏の気分でいたいと思っているところに、早々とオーロラがやってきた。
以前何度かご紹介しているが、アイスランドのオーロラは8月20日の声を聞けば見ることができる。空が暗くなるのが遅いため、見やすい時間帯にいい感じで見ることは難しいけれど、それなりに見られる時は見られる。
今年も8月の末に一度見たきがするけれど、写真が見当たらないので、たぶんごくうっすらという感じではなかったかと思う。次に見かけたのが9月4日で、こんな感じだった。
この前の冬から、オーロラの当たり年になってきたと噂が聞こえてきている。オーロラというよりも太陽の活動周期が平均して11年周期と言われ、そのうちの数年間がオーロラのピークになるそうだ。11年周期というのは平均であり、時に8年間になったり、14年間になったりするという。今回は何年なのだろうか。
来年がピークという声があり、実感としてそんな感じがしている。なにせ前回の冬はオーロラをレイキャビクの街中でよく見た。
今年の冬もどうやらよく見えそうな気配を感じる。オーロラ予報の指数は低いのに、けっこう見えた日が続いた。
天気予報も同様に、予報は曇りや雨でも実際は晴れたり、予報は晴れでも豪雨になったりと、どうも最近の天気予報は当たらない。それはいっそのこと下駄を投げる方式にしようかと思うほど。
天気予報で動くと迷惑な誤算もあるが、うれしい誤算も時々ある。9月半ばを過ぎてからは悪天候の予報が外れて晴れ間が広がる傾向が強く、この二日間も曇りと雨の予報が、ほぼ快晴。昼間曇っていても、夜になると雲が途切れてオーロラが見えるという事件が二晩続いた。
まずは9月12日のオーロラ。23時ごろ、雲の後ろに明るいオーロラが隠れているのがよく見てとれた。
あれほどモクモクとしていた雲が、夜中を過ぎて雲が少なくなるという奇跡。そして下のツイートのように変化していった。
この日は結局、夜中の一時半頃まで盛んにヒラヒラとしながら中空を舞っていた。
オーロラはレイキャビクの街中からは見えないと思っている人がいるけれど、毎回書いているように、街中から見える!
見える時は見えるし、見えない時は見えない。当たり前!という一言に尽きる。
もう少し丁寧に書くなら、去年の冬は街中からも驚くほど素晴らしいオーロラを何度も見た。もちろん郊外へ行けば行くほど見られる確率は高くなる。けれど、高いオーロラツアーに乗らずとも、天候と太陽の活動次第では、街中でも素晴らしいオーロラを見ることができる。その日の天候によっては、むしろ街中の方がよく見えることさえある。
そして次の夜も、オーロラは現れた。前日と同じように、最初は雲の背後に居ることは気配で感じても、しっかりとは見えていなかった。待機して時々外に出ては空を見上げると。22時半頃にはやっぱり大きくなってた!
ヒュルっと細長いオーロラは、時々クルクルっと丸くなり、天使が楽しく輪になっているように見えることもあった。
前夜は夜中の1時まで見えていたが、この日は深夜前に解散。ハトグリムス教会の方から海側まで一直線に続く長いオーロラの筋が見事だった。その筋はこのアパートの屋根の真上に出たため、常に口をアングリしながら真上を見ていなければならず、熟年者には辛い姿勢だった。写真も撮りにくいしね。
ここまで書いて、再び夜を迎えた。本日は9月14日。昼間の天気は悪くなかったし、もしや3日間連続のオーロラショーか?と思っていると、今夜もまたまた気配が〜。
するとーーー。
見たこともないほどのカーテンが空に広がっていた。昨日は天使の舞いだった緑がかったカーテンは、今夜大龍となり戻ってきた。大きすぎてiPhoneではどうにも撮りきれない。屋根の上の方なので、これ以上ベランダの外へiPhoneを寄せられない。それでも、iPhoneでここまで撮れるのが驚異的ではないか。
この日は写真よりもタイムラプスを撮るのに時間を使った。随分と早回しなので趣には欠けるけれど、オーロラはこういう動きをするのかというのを知ってもらえればと思う。
オーロラの当たり年はうれしいけれど、毎日続くと夕食後に落ち着かなくて困る。困ると言っても、ありがた迷惑のような、うれしいんだけど毎日だと大トロも飽きてくる(いや、飽きないか!)。
1日目はピークが夜中すぎ、二日目は22時半から夜中まで、3日目は21時半には動きが活発になり、23時にはほとんど姿を消した。アイスランドの場合、オーロラが一番よく見える時間帯が、20-24時ごろまでと聞いている。起きている時間帯なので、マメにチェックするしかない。
見逃しても問題はないけれど、見逃すのは悔しい。お菓子のガチャがそこにあり、いつ降ってくるかわからない。降ってきたら食べたいけど、食べ逃したところで餓死する訳でもない。実にむず痒いジレンマだ。
これが窓越しから分かれば時々窓の外を見ればいいだけだ。けれど、ここは街中で街灯も多く、微妙な光を窓越しに見分けることは難しい。ドアを開け、バルコニーに出て、しっかりと肉眼での確認が必要だ。あぁ、めんどくさ!(笑)
今日のこのオーロラで、一生分のオーロラを見た気がしないでもない。今後、少しは落ち着いて夕食後の時間を過ごせるようになるだろうか。
小倉悠加(おぐらゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、ツアー企画ガイド等をしている。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。