政治を斬る!

こちらアイスランド(173)西フィヨルドの驚愕音楽フェスティバル。無料なのに全米首位グループも登場。小さい子はステージの真ん前で見ていいよ!〜小倉悠加

前回のドッキリ雪道走行から二週間が経過した。これを書き始めた今日は4月16日だ。その間、北部、特に東北部の雪がひどく、アイスランドをぐるりと一周する1号線でも、いまだに通行困難が続いている場所がある。

「4月なのにそれほどひどい雪が降るの?」というご質問を異口同音にいただいた。

4月の気温はまだまだ日本の真冬だということをお忘れなく。毎年状況は異なるとはいえ、道路が激しく寸断されるのは珍しいと思う。それから、4月初旬のレイキャビクの気温は観測史上初だか超久々に最低気温だったという記事も目にした。

三月末のイースター休暇を利用して、2024年3月29-30日に西フィヨルドはイサフョルヅルで行われた音楽フェスティバルへ足を伸ばした。このフェスのタイトルは「Aldrei fór ég suður」で、「アルドレイ・フォゥル・イエグ・スーヅル」と読む。「南へ行ったことがない」という意味で、南は都会をさす。都会へ行ったことがない田舎者です、と宣言してるみたいな感じ。

都会へは行ったことがないけど、これほど素晴らしい音楽フェスがあるというのがこの街の誇りでもある。

イサフィヨルドの街は山に囲まれた湾岸に位置する

今年は20周年記念だった。実は20年前、この記念すべき第一回目のことを参加ミュージシャンから聞いていた。そのことを、大昔にブログに書いた覚えがあるのだが、どの回だったのかを思い出せない。

自分のブログを検索してみると、このフェスティバルの創始者であるムギソン(Mugison)との逸話が出てきたので、それをご紹介してお茶を濁すことにしたい。かれこれ15年前のことだった。↓

  ウエスト・フョルズルに到着、ムーギーソン家訪問で新譜ゲット!

その間、このフェスを見るツアーを作ろうとしたこともあった。けれど、あまりにもローカルな物事すぎて日程が半年前に決まる訳がなく、そんな話はすぐになくなっていった。アイスランドに移って以来、「一度は行ってみたいなぁ」とそこはかとなく思っていたこともあり、20年目にして念願が叶った。

そして細っそりとした20代の若者だったムギソンはでっぷりと体格のいいおっさんになり、益々地元で愛されていた。というか、この人はその後アイスランドの国民的な歌手となっていった。そして20年目の記念パフォーマンスがこれ。お客様との大合唱!

この身近な動画を見るだけで多分わかると思うが、このフェスティバルの客層は特定の音楽ファンには絞られていない。コミュニティ全体のお祭りだ。アイスランド・エアウエイブスでも、東フョルドのエイスナフルグもコミュニティをあげて応援はされるが、このフェスは他のフェスと決定的に違う特徴がある。

『南部へ行ったことねぇ』の最大の特徴は、無料フェスティバルなのだ!!

無料でライブを見ることができる。なので子供も大人も老人も、文字通り老若男女、普段はライブを見ない人でもこの時ぞとばかりやってくる。保護者がいっしょについていれば、小さい子でも夜遅くまで会場に居ることができる。

文字通り、誰でもウエルカムなのだ。普段音楽ライブに来ない層もここぞとばかりやってくる。有料フェスは当然客層が限られるけれど、このフェスはその垣根が一切ない。

そんな関係もあり、このフェスでとびきり楽しそうだったのは、ティーンエイジェーだった。音楽は大好きだけど西フョルヅルは都市部のレイキャビクのように頻繁にはライブがない。ライブがあったとしてもビッグネームはなかなか来ない。来たとしてもチケット代が高額だったりする。

それがこのフェスではすべて無料!ティーンが喜ばない訳がない。

以前このフェスは、ご飯(スープ等)まで無料で提供していた時代もあった。出演者も無料でライブを行い、その代わりとても楽しいパーティーがライブ後に待っていたとか。ここでコミュニティ内の結束が高まり、文字通り一般の老若男女が楽しめて、その上ミュージシャン同士の楽しい交友場でもあるため、これほど長い間続いたというのが定説だ。

そんなこんなでやたら雰囲気がいい。今回は20周年記念で大統領までやってきた。

出演アーティストが豪華な上、結構インディーズ寄りで音楽的にも面白いところになっている。

我々夫婦はかつて音楽を職業的に扱っていた。彼は以前新聞の文化欄に音楽評論家としてレビューを書いていたし、現在でも音楽賞の審査員を担っている。私は音楽レーベルを作ったり、数年前までアイスランド専門の音楽ショップをやっていた。音楽に関しては良くも悪くも小うるさく、単なる歌謡曲のラインアップでは動かない。

我々のように小うるさい音楽ファンも、分かりやすい流行曲しか聞かない人も納得の、とてもバランスのいい選択となっている。たぶんこれは創始者がかつてインディーズに深く根をおろしたムギソンであり、現在のトップがやはりインディーズバンドのドラマーである関係かと思う。コミュニティの無料イベントであると、一般受けする安全なラインアップを揃えるのが常なので、この点でも気骨あるフェスであることが読み取れる。

出演者は普通のフェス以上の顔ぶれだった。地元で親しまれている大物やアイスランドのアーティストとして全米ナンバーワンを初めて獲得したオブ・モンスターズ・アンド・メンまで揃っている。ちょっと凄すぎないか?

それに加えて、アイスランドで絶頂の人気アーティストが、前触れなくゲストで顔を出して1-2曲披露してくれたりした。なんちゅーフェス!

以下のツイートに出てくる男性、パットル・オスカルは子供から老人まで大人気の人!ちょうど数日前に(男性と)結婚したばかりの飛び入り出演で、お祝いムードが絶頂に。

フェスはくったくなく心から楽しんだ。ここ数年はアイスランド音楽を商品として扱っていないし、責務に駆られて見聞きする必要もなく、純粋に音楽ファンとして接する心地よさを満喫した。

上のツイート動画の最後にチラっと小さい女の子が見える。これでもわかる通り、このフェスは子供フレンドリーでもあった。小さい子を見つけては、セキュリティ担当がステージ前のフォトブースに入れてあげるところを何度も見かけた。小さい子には素晴らしい体験になる。最高に大賛成!

子供全員にそうできないから不公平という声をあげないのもいい(日本ならありそうだよね・・・)。

スポンサーは地元の大手企業をはじめ、有名企業がついていた。それでも運営はすべて手弁当のボランティアで構成されていたという。セキュリティをはじめ、ステージの設営等もみんなの協力あってのことだ。ライブの間のDJなども、子供を抱いたままやっていたりして、ほのぼの感が目にしみた。

こんなに素晴らしいフェスであればサポートしたい。サポートといえばお金だ。せめてグッズを購入したいとショップへ出向いた。20周年記念のシャツは私のサイズが売り切れ。何枚か買って友人にプレゼントを考えていたトートバッグも売り切れ。売り切れすぎだろう。スェットはほとんど使わないので却下。使えるものがないからごめんなさい。

フェス本体に加えて、あちこちで小規模のライブが行われていた。そんな中でもとびきり内容が充実していたのは、このレストラン内で行われたミニフェスだった。レストラン経営者のお嬢さんがヴォーカリストとしてステージに立ったご縁でミュージシャンが集まってきたのだろう。レイキャビクであれば有料で十分に集客できる内容だった。

久々に音楽で遊んだ週末だった。商売に関係なく、くったくなく音楽を楽しめるのは幸せだなぁと噛み締めた週末だった。

小倉悠加(おぐらゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、ツアー企画ガイド等をしている。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。

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