たっだいま〜〜!日本に戻ってきた!
え?もうまた帰ってきたの?!って感じでしょうか。
私の帰国は年中行事なので、1年ぶりとも書けるし、実際は10ヶ月ぶり。ただいま日本。また会えたね、羽田空港。
アイスランド出国前日はドキっとした。翌日のフライトにオンラインでチェックインしようかと夜の10時にメールを開けようとしたところ、「フライト変更のお知らせ」が届いていた。おいおい、もう半日しかないのに変更?!
当初の予定はアイスランドの家を午前7時に出発、羽田着14時25分だった。なのに突然知らされて出発が容赦なく時間3時間繰り上げ!到着時間は幸いにして20分しか遅れない。ん?早く出て遅く着くんかい!
ツッコミを入れてもどうしようもないので、素直に従うことにした。ヘルシンキからの東京便がキャンセルにでもなったのだろうか。当初ヘルシンキへ飛ぶ予定がパリへ行かされた。
朝6時起きで間に合うと思っていたのが、3時半に飛び起きないと4時に家を出ることができない。6時起きと夜中3時半起きの違いは大きい。ちゅーか、早く寝ないと2時間も睡眠時間がとれない!
彼に言わせれば「パリまではアイスランド航空だし、パリからは本物のJAL便だから、それ最初からブッキングしてたら500ユーロくらい高いよね。いいじゃん。ある意味アップグレードで」だって。
コロナ中、JALに大変にお世話になったため、その後もずっとJALにしている。JALで便を予約してもコードシェアでフィンランド航空になる。フィンはアイスランドからもヘルシンキからも、食べ物もエンタメもお粗末。ナプキンがマリメッコで紙コップがムーミン柄というのが売りらしく、それで気分が上がれる人はいいけど、私には無関係。でも、接続が一番いい便なのだ。

パリ便、うれしくないとはいえ、いいことはあった。メシの激マズが避けられたのと、エンタメだ。
JALの機内で、私は自分が出演した映画を見た!
いやぁ、自分史上初めてです。60ン年の人生で、映画に出るのは人生で2度目。そして今回は写ってる時間が意外にも長い!結構長い!なのに夫も気づかないほどみんな気づかない!前の映画は一瞬なのに、いろんな人から「出てたよね」って言われたのに。
このたび私がめでたく出演した映画は『TOUCH / タッチ』で、主演はキムタクの娘であるKokiさん。日本の劇場公開は1月24日だ。
舞台はロンドンではあるけれど、原作者がアイスランド人で、アイスランド人監督であるため、多くのシーンがアイスランドのスタジオで撮影された。日本料理屋が舞台になるため、レイキャビク在住日本人が総出でエキストラを務めた。私もそのひとりだった。

時代設定が60年代であるため、それっぽいヘアメイクで、それっぽい衣装をあてがわれた。二日目の撮影は「60年代っぽい服装なら自前でもいい」と言われたので、これならいけそうだと思えるペーズリーのワンピースを持参し衣装担当からオッケーをもらった。なので私は自前の服で出ている。
単なるエキストラなので種明かしをすれば、私は歌を歌う主人公の横にいるメガネの女性だ。他のシーンにも出てくるけど、私自身さえ最初に見た時は見逃した。背景のわらわらした一人にすぎない。
航空便の中なので、映画を一時停止することもできるし、巻き戻してもう一度見ることも可能。たっぷりと自分のシーンを見ることができた。そして、再度、最後は泣いた。いい話だ。ホント、素晴らしい結末。こういう映画、好きだ〜。
アイスランドでは去年の最大ヒット映画だった。主人公の年配男性は、国民的なスター歌手・俳優である。けれど、アルツハイマーを患い歌手としての道を断たれてしまった。俳優としてであればできそうだとの監督の英断での起用となった。アイスランド国民は彼の起用自体が大変な話題となった。そして彼の内面から滲み出す演技が本当に、本当に素晴らしい。
という観劇の時間を経て、満席のパリ発羽田便で日本に到着した。
VisitJapanは事前登録しておいた。Visit Japanは、日本人には奇妙なネーミングだ。日本人なのに「日本訪問」とはいかに。荷物を受け取り、何やら機械に事前登録の税関申告を読み取らせて最終の出口へ。妙なものは何も持ってない。肉や果物などの臭いを嗅ぎ取るワンコも、干しダラは無反応でスルー。乾燥した魚は持ち込み可能だしね。

さて、今回は初めて実家へ直行する。いつもは横浜へ行くので、ガラガラと引っ張る荷物が3個あり、腕は2本しかなくても、リムジンバスへ荷物を預け、駅からタクシーで帰ればやり切れた。けれど、実家へ帰る場合は荷物がどうしても1個邪魔になる。その荷物を送るための黒猫の列が強烈に長くて驚いた。並んでいるのはほぼ外国人で、インバウンドの脅威をそこで見る気がした。時間帯もあったのかな?
家を出て30時間近い長旅であり、睡眠時間も極端に少ない。朦朧としながら電車を乗り継ぎ、常磐線に乗った時にへ〜〜っと驚いたことがひとつ。
「XXX(サッカーチームらしい)所属のYYYです(選手名らしい)。」という言葉に続き、列車案内がアナウンスされた。そして最後に、「1月X日XXXXスタジアムで試合があります。ぜひ見にきてください」のような言葉が付け足された。へ〜〜〜、こんなアナウンス初めて!
スポーツへの興味がない私には、実はサッカーだったのか野球だったのかもわからないが、たぶんスポーツ系の物事であろう程度の察しはついた。
日本に戻って一週間。ずっと実家にいるため、近所のスーパーにしか行っていない。さすがに支払い機の前で呆然と立ち尽くすことはなかったけれど、あれは未だに慣れないなぁ。
それよりも、毎回同じこととはいえ、日本のスーパーの品揃えには脱帽だ。
噂に聞いていた通り、野菜はずいぶん高くなっていた。アイスランドに迫る勢いだと思うほどのものもある。けれど、種類の多さは日本がダントツだ。野菜の扱い方も上手だし、何というか、「お野菜の国」といってもいい。魚介類も豊富だし、肉の種類も、パックの多彩さも、神級!
普通に日本に暮らしていては気づかなくて当然かと思う。肉といえば1キロ単位しかないし、鳥のもも肉からは見事に皮が剥がされているという、煮え繰り返りそうな怒りしか感じないスーパーが日常の国から来ると、日本のスーパーへ行くと既に極楽浄土してしまったような気さえする。
圧倒的なのは煎餅類の多さで、日本のお煎餅を大変な貴重品として扱い、賞味期限3ヶ月切れなどまだまだ新しいと思って食べる我が家だ。通路に面した陳列棚がことごとく煎餅の類で埋まっている様子を見て、マジに涙した。ごめん、泣いた。本当に。
アイスランドに持ってきた柿の種を、一ヶ月に一袋だけしか食べてはいけない今までのあの苦労は何だったんだ・・・という。
そこまで大袈裟?と思うかもしれないが、現実に煎餅が一切売っていない国であなたは1年間をやっていけるか?よーく考えてほしい。その上、肉はキロ単位しか買えない。野菜の種類も少ないし、にんじんやもやしは1パック700円、きゅうりは一本300円。
「どーだ、そんな場所で1年間生活した後、お前はこの光景に涙を流さないと断言できるか?」という感じ。お菓子コーナーを見る前に煎餅を見てしまった。お菓子コーナーでも泣いた。
日本のスーパー、その品揃えと品質管理に圧倒される。脱帽!!
それから、スーパーのカートの種類にも驚かされる。乳児から幼児まで、きめ細かに対応できるようになっていることに気づいた。外人にこの発想ができると思わない。

ところで、60代半ばで片親を失った。両親が90代で健在であることは奇跡だと思っていたし、2024年3月に父に会った時が最期になろうかとは感じていた。
そのため、実家の2階は全面的に好きなようにしていいと母から言い渡された。
日本に戻っても中途半端な居場所しかないことは、前回の滞在を終えて書いた通りだ。
今回は気を揉む問題や仕事を持ち込まずに日本へ戻ることができた。時間は私自身の居場所を作ることに費やそうと思う。
2025年もこの「こちらアイスランド」をどうぞよろしくお願いします。
小倉悠加(おぐらゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、ツアー企画ガイド等をしている。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。
