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こちらアイスランド(82)ジャム、パイ、塩漬けにと大活躍。甘酸っぱい夏の味、ルバーブ〜小倉悠加

今年もルバーブを大量にもらった。3年前、庭にどっさり生えるため、「食べる?」と彼の同僚から頂いて以来、毎年ありがたく頂戴している。

今年は6月半ば、初収穫が届いた。聞くところによれば、この初物が一番香り高くて美味しいのだそう。時期が深くなるほど、繊維が硬くなり、手強くなるとか・・・。手強くなるって、どういう意味だ?

その前に、ルバーブって何?だよね。私も名前は聞いたことがあったけれど、実際に生のルバーブを見たのは初めてだったし、ましてどう扱っていいやら・・・。

ルバーブはジャムやパイに入れて食べるので、果物だと思っていた。分類は野菜だという。私にはまだ馴染みの浅い、未知の野菜。夏のアイスランドに実る、貴重な野菜でもある。

アイスランドの厳しい自然の中で栽培できるものは、ごく限られる。貧しい時代はじゃがいもが命をつないだし、ベリーは「栽培」しなくても自然の中に生えてくる。南部の限られた地域では小麦も栽培されているけれど、他の地域では無理。野生のきのこ類もある。けれど、食用なのか毒キノコなのか、素人には手を出しにくい代物だ。

そんな環境でのルバーブは、野菜に乏しいアイスランドで実りを謳歌できる貴重な存在だ。唯一の存在と言えるかもしれない。だってジャガイモは野菜じゃないもん!

ルバーブは農園がある訳ではない。誰の庭にあって、困るほど大量にあるからおこぼれをいただける。夏の一時期、高級食品店で売っていたのを一度見たことはあるが、普通のスーパーには一切出回らない。みんな、知り合いから貰うものだと思ってるから、買う人がいないし、「農園」もないので流通に乗せられないのかと思う。

ルバーブは見た目がフキのお化けのような感じで、根に近い部分がきれいな赤い色になり、上の方は薄い緑色だ。葉は食べられない。赤と緑の茎だけをいただく。出立ちが棒。私のDNAの何がそうさせるのか、ルバーブを見るとやたらこの茎を振り回したくなる。スターウォーズの見過ぎか、侍の血なのか、どちらでもなく単にアホなのか。

生のまま味見をしたところ、スッパァ〜〜〜!こんな酸っぱいんか、お前。地中から何を吸い上げればこれほど酸っぱくなるのか、レモンとか、果物はなんでもそうだけど、地中のどこにあんな酸っぱさが隠れているのかと不思議に思う。いや、あの、地中から酸っぱさを吸い上げてるとは思ってないので、そこまで頭はおかしくないのでご安心を。たぶん。

茎をスライスすると、サクサクといい音をたてて切れていく。イコール、とても筋っぽい。もう少しお上品で高尚な表現をすれば、食物繊維が多いということになる。

やたら酸っぱい以外の特徴は、赤い部分の方が渋みは少なく、ほんのり甘いような気がしないでもない。茎の上の緑の部分は若干青臭く、煮るとこれがいい香りになる。どちらの部分もそれぞれにいいところがあり、私はどちらも好きだ。

ルバーブを扱うのは3年目。一年目は確かジャムっぽいものを彼が作り、私は乳酸発酵に凝り始めていたので、乳酸発酵させてサラダにして食べた覚えがある。2年目の去年は、リクエストして2回もらったほど美味しく食べることができた。

去年は私が作ったジャム・コンフィチュールが大好評だった。一般にジャムの作り方には、素材と同量の砂糖を入れよと書いてある。アイスランドの伝統的には素材の2倍から1.5倍だそう。ゲェ〜〜〜、考えただけでも砂糖の甘さが脳天を突き抜けて、私はダメ。甘すぎて食べられない。

思い切って砂糖をグンと減らしてみた。長期保存が効かないことはわかってる。それよりも私は美味しく食べたいのだ。

読みは見事に当たった。20-25%程度の糖分が一番おいしく感じた。それも身の形がわからないほど煮潰してしまうのではなく、グツグツと沸騰してきたら、数分間煮た後、火を止めて余熱で調理するようにした。するとゴロンとした実がそのまま残り、甘づっぱく香りもよくて最高に美味しい。

去年はそれを作り、ヨーグルトやアイスクリームにたっぷりかけて食べた。冷凍ワイルド・ベリーとの組み合わせも最高だった。そんな訳で、結構な量を消費するに至り、去年は2度の「ルバーブ譲ってください」とあいなった。

今年は先方が気を使ってくれたのか、天候の関係で生育がいいのか、二週間ほど前、彼が職場から突然それを運んできた。「これなんだと思う?」と彼が送ってきた写真には、薄い色のついた大きなビニール袋が、車のバックドアを占拠していた。すぐにはピンとこなくて、数時間後に「ルバーブだ〜〜!」と分かった。

彼が息を切らせながら運んできたそれは尋常な量ではなく、体重計もないのでその場で測ることはできなかったが、確実に10キロ近くあった。なにせ2キロ以上を3回調理し、彼はパイを2度焼いた。その上、塩漬けも1キロ作ったし、ネット上で見たルバーブのスパゲッティソースとやらでも1キロ近く使った。で、これだけ努力して消費してるのに、まだ残ってる〜(泣笑)。

市場に出ているルバーブジャムは、色が焦げ茶になるまで煮詰めたドロドロのやつで、一度も感心したことがなかった。今は違う。酸味が爽やかで、ゴロリとした実が入った自家製ジャムがある。砂糖は実の20%-25%。保存性には欠けるけど、美味しいことこの上ない。

我が家では主に彼がオーブンを使う人で、私はフライパン。彼はパンやパイが上手で、今年もフレッシュなルバーブを使いパイを焼いてくれた。それも去年の夏にふたりで摘んだ野生のブルーベリー入り(冷凍)。癖のない香り高いアイスランドのバターをたっぷり使い、パイは見た目の100倍は美味しい。焼きたてのアツアツに、アイスクリームと、これまた最高に美味なクリームをホイップしたやつを乗せて食べる。ホイップ・クリームは砂糖を入れなくてもほんのり甘い。

アツアツでサクサクのパイ生地、ルバーブの酸味、ブルーベリーの滋味、冷たくて甘いアイスクリームにふかふかのクリーム。カロリー高め、最高に太ることはわかっていても、止められな〜い。

まだ1キロ分くらいありそうなルバーブ、どうしたらいいんだろう。ざく切りにして冷凍でもしておこうかな。

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小倉悠加(おぐら・ゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド政府外郭団体UTON公認アイスランド音楽大使。一言で表せる肩書きがなく、メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、カーペンターズ研究家等を仕事に応じて使い分けている。アイスランドとの出会いは2003年。アイスランド専門音楽レーベル・ショップを設立。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。自己紹介コラムはこちら

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