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こちらアイスランド(90)美しすぎてため息しか出ない奇跡の絶景ケルリンガルフョットル 〜 小倉悠加

四方八方絶景に事欠かないアイスランドでも、特に絶景度が高く、絶景中の絶景が高地のケルニンガルフョットル(Kerlingarfjöll=山)とその周辺のクヴェラダリル(Hveradalir)という温熱地帯だ。死ぬまでに一度は訪れたいーーーん?私の日本語変かな。死ぬまでに?死ぬ前に?どちらにしても死んだ後に来ても面白くないと思うので(死んだことがないから未知の体験だけど)、ぜひ生きているうちにいらしてください!

アイスランド全土の雄大な絶景を見すぎて、何が絶景なのか感覚が鈍っている私でも、とにかく驚愕・驚嘆で「うわ〜、うわ〜」としか発声できず、語彙力が壊滅する絶景中の絶景。

この場所は去年偶然に発見し、こんな記事を投稿している。

去年の夏が終わるまでに再訪問したく狙っていたけど、結局行けずじまい。冬の間、この地のことを思い出しては、夏になったら絶対に行ってやるぅ〜と心に誓っていた。今年は冷夏で雨の日が多く、夏休みなのに燻っていたところ、8月の下旬やっと晴れたその日を利用して、念願の再訪問。うれしかった!

ハイキングコースに到達する前の道沿い、去年と同じ場所で記念ショット。

ケルリンガルフョットルは標高約1500メートル。アイスランドの民話によれば、ある日、火の巨人スルトゥルの娘でケルリングという老婆のトロールが、日の出までに宿に戻れず、石になってしまったのがこの山だという(註:トロールは日光に当たると石になる)。

そんな哀れなトロールの悔しさなのか、山の間のあちこちから地熱の白い煙が噴き出し、ボコボコと煮えたぎる熱湯が流れ出る。ここはトゥヤ火山帯の中に位置するアイスランド最大の温熱地帯でもある。

その日の天気は良好で、風もなく、曇っていると空との境目が分かりにくい氷河の山も、青空を背景にくっきりとその輪郭を現わす。

ラング氷河(Langjökull):氷冠の厚さ580メートル、長さ50キロ、幅30キロの巨大な氷の塊

「いい天気でよかったね〜」と話しながら到着した駐車場。それほど広くないこともあり、快晴も手伝って満杯状態。仕方がないので待機すること数分。車を出しそうなグループが現れたので、車が動いた瞬間すぐにそこを確保して、いざ出発。来年は駐車場が拡張されることを期待したい。

風光明媚な場所は遠くから眺めて終わりになることも少なくないが、ここは山の尾根を歩きながら、視界に飛び込む景色の移り変わりをたっぷりと楽しむことができる。駐車場から周囲を見るだけでも素晴らしいが、ぜひ歩いてほしい。驚くような世界が広がる。

ハイキング・コースは数種類用意されており、途中で山小屋を利用する3日間コースから、短いものは2時間程度で歩けるコースも。私たちは一番お手軽なコースを選び、尾根を使い周囲をぐるりと歩いた。

ケルリンガルフョットルはゲームに出てくるような景色の連続だ。とにかく飽きない。そしてスリリングだ。山の斜面は急勾配な上、尾根の道には幅に余裕がない。50-60センチも横にずれて歩いたら、下に転がり落ちてしまいそうな感じがする。そんな場所を歩いていると、少しばかり冒険家になったような気分になる。最初は少し足がすくんだけれど、慣れれば大したことはないし、滑りそうな場所には階段があり、安全性は考えられている。

あとはとにかく写真でどうぞ。

まるでゲームに出てくる魔法のような壮大で起伏に富んだ景色が広がる
この階段がなければ怖くて歩けなかったかもしれない

ハイキングはアイスランドの基準では難しくはない。けれど、日本のハイキングは散歩、アイスランドのハイキングは往々にして登山であることを覚えておいてほしい。安全ではあるけれど、道幅が狭く高所でもあるため、「ちょっと怖い」という感情に結びつくかもしれないし、実際、強風だったら私は行かない。アイスランドの強風は凶暴で、看板などが飛ばされるのは日常茶飯事だからだ。

以下は去年撮った短い動画。

山はいろいろあるけれど、湧出口や噴気孔がこれほど広範囲に点在している場所は滅多にない。風光明媚、別世界ということでは、私の中ではピカイチの場所だ。みなさんに心からお薦めできる絶景地。足腰がしっかりしている間に一度はぜひどうぞ!

とは言ったものの、ここは夏しか道がオープンしておらず、一年で問題なく通れるのは三ヶ月間かそこら。ぜひぜひ〜!と実は気軽に言いにくい。もしも夏の間にアイスランドに来る機会があれば、レイキャビクからツアーが出てるので、それを利用するのが一番簡単かと思う。

実際に行く場合、拠点として目印にするべきはこのキャンプ場(地図参照)。現在は名称を「マウンテン・リゾート」として、来年2023年オープンに向けて高級リゾート地を開発中。

数年前までは普通のキャンプ場だったのに、高級リゾート地か・・・。

キャンプ場は残すと思うけど、それでもなんだか心に引っかかる。以前からここには天然温泉があり、私も去年入ってきた。場所が少し離れているとはいえ、高級温泉ブームに乗り「ハイランド・バス」なる温泉施設をオープンするそうだ。きっと高いんだろうな。ブツブツ。

今年の夏は天気に恵まれず、去年のように積極的にあちこちを訪れることができなかった。とはいえ、地元に住んでいるからこそのマニアックな場所はいくつか制覇したので、これからも折を見てご紹介できればと思っている。

小倉悠加(おぐら・ゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド政府外郭団体UTON公認アイスランド音楽大使。一言で表せる肩書きがなく、メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、カーペンターズ研究家等を仕事に応じて使い分けている。アイスランドとの出会いは2003年。アイスランド専門音楽レーベル・ショップを設立。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。自己紹介コラムはこちら

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