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こちらアイスランド(91)半人半トロールが守った聖地、スナイフェルス氷河をぐるりと一周〜小倉悠加

アイスランドの聖地と言われるのがスナイフェルスネス半島のスナイフェルス氷河だ。その氷河の山の周囲をぐるりと一周走ってきた。とても風光明媚な道なのでご紹介したい。

スナイフェルスネス半島の西の方にあるこの山はパワースポットと言われ、神秘的な力を持つ有象無象の存在がひしめいているとも言われる。例えば民話の「Bárðar saga Snæfellsáss(スナイフェルスネスのバゥルザルのサガ)」では、スナイフェルス氷河の守護霊になった半人半トロール、バゥルザルの物語が描かれている。

誰が言い出したのか近年では1993年に、UFOが現れるとの騒ぎが持ち上がり、11月5日数千人の見物人が訪れ、海外のニュース番組まで待機をしたことがあったそうだ。

夏の高地は蛍光色の植物に彩られる。ここはいかにもトロールが住んでいていそうな雰囲気だ。

その評判を聞きつけたのか、小説家ジューヌ・ヴェルヌは小説『地底旅行』で、地下世界への入り口としてこの氷河を描いており、この小説は後に『センター・オブ・ジ・アース』というディズニー映画の原作となった。

個人的に少し驚いたのは、小説家椎名誠氏が子供の頃からあこがれたのがこの氷河だったということ。椎名誠氏の旅行記は新刊が出る度に毎回楽しく読んでいても、彼がアイスランドにそれほど思い入れがあることを知らなかった(またはその頃私自身がアイスランドに興味がなかったので、記憶から抜け落ちたか)。彼は人気が高かったテレビの旅行番組シリーズのクライマックスにアイスランドを選び、長い間憧れ続けたというこの氷河の山に登った。腰を下ろしながら感慨深くしていた氏の姿は、印象深く私の中にある。

文学では、ノーベル文学賞に輝いたハルドル・ラクスネスの小説『極北の秘境(Kristnihald undir Jokli)』の舞台がこの氷河のふもとだった。まだあまりアイスランドの自然を知らない頃、どのような情景だろうと、心の中でイメージを膨らませながら読んだものだった。

見晴らしのいい駐車場からの眺め。半島の南側の海岸が見えている。

ドライブが可能な道のところどころに駐車場があり、そこに車を停めて少し歩けば滝が見えたり、ハイキングコースに通じていたりと、手軽にアイスランドの自然が楽しめる。駐車場はある程度整備されていても、観光化されてはおらず、たっぷりと自然を楽しむことができる。

溶岩ばかりの不毛の地もあれば、鮮やかな緑に彩られたり、可愛らしい高山植物の花が顔を出していることもある。途中、ならず者が身を隠したという洞窟などもあった。何をどう楽しむかはその人次第だ。

このドライブレコーダーはその氷河の山の周囲をまわる道路をグルリと走ったもので、夏の数ヶ月間のみ通行することができる。ドラレコのYoutubeの説明欄に、何時、どのような場所を通ったかという目安を書いておいたので、ご参考にどうぞ。実際に走る時は、結構参考になると思いますよ〜。

氷河の山を登頂したい場合は、天気のいい日になるべく車で行けるところまで行き、そこから登るのが手っ取り早い。レイキャビクや近隣からも登頂ツアーは出ているし、個人で行くことも可能。

天候の悪い時に登ろうという人はいないとは思うけど、天候や服装、装備にはくれぐれもご注意を。

私たちは登頂しようとは全く思っておらず、「去年は氷の溶け水で川があり、川の前までしか行かなかったけど、今年は干上がってる。先まで行ってみようか?」と、行けるところまで車で登った。そこから数分も歩くと、すぐに氷河の氷が見える場所へ出た。

ここが氷河。天候が悪く山頂が見えない。場所によっては雨が降っているのがわかる。

道すがら、どこに停泊して何を見たかをここに書き出すとYoutubeと重なるため、興味あれば動画をどうぞ、というところ。

今年の夏は天候に恵まれず、去年から狙っていたF道(夏の山道)があまり走れておらず、不完全燃焼気味。とはいえ、去年こなせなかったF道はいくつか走れたので、折に触れてご紹介していきますね。

小倉悠加(おぐら・ゆうか):東京生まれ。上智大学外国語学部卒。アイスランド政府外郭団体UTON公認アイスランド音楽大使。一言で表せる肩書きがなく、メディアコーディネーター、コラムニスト、翻訳家、カーペンターズ研究家等を仕事に応じて使い分けている。アイスランドとの出会いは2003年。アイスランド専門音楽レーベル・ショップを設立。独自企画のアイスランドツアーを10年以上催行。当地の音楽シーン、自然環境、性差別が少ないことに魅了され、子育て後に拠点を移す。好きなのは旅行、食べ歩き、編み物。自己紹介コラムはこちら

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