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首相最側近の木原誠二官房副長官が「子ども予算を倍増させて子どもを増やす」のではなく「子どもが増えたら子ども予算が増える」と公言してしまう岸田政権の異次元少子化対策のお寒い実態

岸田文雄首相の最側近である木原誠二官房副長官が2月21日の日本テレビの報道番組で、岸田政権が掲げている「子ども予算倍増」について、耳を疑うような発言を連発した。以下の内容である。

・出生率が上がってくれば倍増が実現される。

・子ども予算は、子どもが増えればそれに応じて増えていく。

・もしV字回復して出生率が本当に上がってくれば、割と早いタイミングで倍増が実現される。

日本社会が直面する最大の課題である「少子化」の克服をめざして、子ども予算を倍増させて子育て世帯の家計を支援することで出生率を引き上げる政策目標かと思いきや、木原氏の認識は真逆で、出生率が上がれば子どもの数が増えるのでそれに伴って子ども予算も増えてくるというのである。

予算を増やすことで子どもを増やすのではなく、子どもが増えたら必要な予算も増えるというわけだ。

どのようにして子どもの数を増やすのかという「命題」を勝手に棚上げし、他人事のように「子どもが増えたら予算も増える」ーーいったいこれのどこが「政策」なのだろう。子ども予算倍増を、子どもを増やすための「手段」から、子どもが増えた時の「結果」にすり替えてしまったのである。

木原氏は子ども予算倍増について「期限を別に区切っていない」とも述べた。予算倍増は岸田政権の「公約」ではなく、実現しなくても責任を問われる筋合いはないーーと言わんばかりだ。

岸田首相が今年の最重要課題として掲げた「異次元の少子化対策」はこの程度なのである。

そもそも少子化対策は、政府が「安心して子どもを産み育てていける環境」を持続的に整えることによって、子どもをつくろうと思う人々が増え、その結果として出生率が高まるという政策効果を狙ったものである。ところが首相や首相側近の発言が二転三転すれば、そのような政権の少子化対策が信用されるはずがない。

仮にいま児童手当が多少増えたところで、それが長く安定的に継続されるかどうかわからないとしたら、少子化対策としての効果はほとんどないだろう。

民主党が2009年総選挙で掲げた子ども手当は民主党政権下ですぐに減額され、さらには所得制限まで導入された。このように制度がコロコロかわるようでは何の安心にもならない。

社会保障政策にとっていちばん大事なのは、政治への信頼である。木原氏の今回の発言は政治への信頼を根底から覆すもので、国民の政治不信を増大させた責任は重大だ。

木原氏は東大法学部→財務省のスーパーエリートである。財務省と親密な自民党の老舗派閥「宏池会」(岸田派)のホープで、林芳正外相の次の派閥会長が有力視されている。兄はみずほフィナンシャルグループ社長だ。

これは日本社会を主導してきたエリート層の無責任体質が如実に出た発言といっていい。首相最側近からこのような無責任発言が飛び出すところに日本衰弱の根本原因をみる思いである。


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