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「石破総理、過半数割れの危機と参院選後の政局」──参院選で吹き荒れる逆風の行方

真夏の参院選がついに幕を開けた。注目は、石破茂総理が掲げる「自公与党で過半数維持」という勝敗ラインだ。

総定数248議席のうち、改選されるのは125議席。与党の非改選議席は75あり、今回の選挙で50議席を確保すれば過半数に届く計算になる。

言い換えれば、今回の選挙で与党が125議席中50議席、つまり4割しか取れなくても「勝利宣言」できる。

これは、通常の感覚からすれば異常なまでに「甘い設定」だ。それだけに「とにかく政権にしがみつきたい」という石破総理の執念がにじみ出ている。

だが、実はこの“甘々ライン”すら下回るかもしれないという見方が自民党内外で急速に広がっている。背景には、進次郎農水大臣のコメ改革に対する農村からの強い反発、そして参院選期間中にも発動されかねないトランプ関税の大波がある。

コメ改革の逆風とトランプ関税の影

石破政権の中で、唯一高い発信力と求心力をもつ小泉進次郎氏。彼が打ち出した「コメ増産」と「農協改革」は、都市部の有権者からは支持を集めたが、米どころの地方では「農業軽視」と受け取られ、強い逆風となっている。

とくに1人区は農業県が多い。ここで自民党が失速すれば、全体の議席数に決定的な影響を及ぼす。

共同通信の政治部長は講演で「自公で50議席を割る可能性も出てきた」と述べた。全国的に厳しい情勢調査の結果が出ているのは間違いない。

さらに、追い打ちをかけるように、7月9日には米国の対日関税措置が再び発動される可能性がある。石破政権は、これを食い止めるべく赤沢財務大臣を7回にわたって訪米させたが、進展なし。トランプ大統領は「日本は強硬で、合意は困難だ」と名指しで非難し、関税引き上げも示唆した。選挙戦最中にこの打撃が現実となれば、有権者の政権離れは避けられない。

公明党の“自虐的分析”が意味するもの

参院選公示目前の6月30日、公明党機関紙『公明新聞』が掲載した情勢分析も波紋を呼んでいる。なんと、公明党が擁立する7選挙区すべてで落選の可能性に言及したのだ。比例でも、前回6議席から今回は4議席に後退する可能性を示した。

もちろん、公明党のこうした“危機煽り”は毎度のことではある。組織を引き締めるため、意図的に厳しい数字を出すのが通例だ。しかし、今回はそのトーンがあまりにも悲観的。現場の実感としても、都議選での敗北や支持母体の高齢化など、深刻な地殻変動があるのは確かだ。

前回13議席だった公明党が仮に10議席を割るような惨敗を喫すれば、自民党はそれを補うため40議席以上を獲得しなければならない。しかし、自民もまた、比例での低迷や1人区での苦戦が予想されており、相乗的に「与党過半数割れ」は現実味を帯びてくる。

石破退陣はあるのか?

問題は、過半数割れをした場合の石破総理の対応である。昨年の総選挙で「与党過半数」を勝敗ラインに掲げながら、それを割っても総理に居座り続けた“前科”がある。

しかし、今回は参院選。衆参ダブルでの過半数割れとなれば、さすがに政権維持は困難になる。石破氏は「審判は厳粛に受け止める」と語っているが、世論も、自民党内も、その言葉を額面通りには受け取っていない。

石破氏が退陣に追い込まれる場合、次なるテーマは「誰と組むか」だ。衆院ではすでに自公で過半数を失っており、政権の延命には、連立の枠組み拡大が不可避となる。仮に与党が過半数をかろうじて維持しても、衆院で過半数を割っている現状に変わりはなく、連立政権の拡大に早晩、踏み切らざるを得ないだろう。

浮上する“大連立”の行方

維新・吉村代表は「連立に入るつもりはない」と明言している。国民・玉木代表も「石破政権とは連立は無理」と表明。減税を掲げる玉木氏と、緊縮路線の石破政権は水と油だ。だが、石破退陣後には「ポスト石破次第では連携もありうる」と含みを持たせた。

一方で、立憲・野田代表は「基本的に考えていない」と慎重な表現にとどめた。「絶対にありえない」とは言っていない。これは、将来の「自公立大連立」への布石とも読める。石破総理自身も日経のインタビューで、選挙後に「社会保障改革」を掲げ、与野党協議の呼びかけを示唆。これは明らかに、増税容認の立憲へのラブコールである。

つまり、参院選の結果がどうであれ、選挙後の焦点は「どの野党を取り込むか」に移る。政権延命か、体制転換か――いま、有権者の一票が、日本の未来を大きく左右しようとしている。