自民党の麻生太郎副総裁が主導する高市政権支持の議員グループ「国力研究会」に政界の関心は集中している。その実態を詳しく見ると、この巨大組織は“高市支持”というより、“麻生支配の再構築”を目的とした新たな権力装置であることが見えてくる。
5月21日に初会合を開くこの議連には、すでに300人近い議員が参加する勢いだ。
発起人には、麻生氏を筆頭に、小泉進次郎防衛相、小林鷹之政調会長、茂木敏充外相ら「ポスト高市」候補がズラリと並ぶ。参院側でも松山政司議員会長、高市陣営の重鎮である中曽根弘文元外相、麻生派の有村治子総務会長ら大物が参加。旧安倍派からも萩生田光一幹事長代行や西村康稔選対委員長らが加わった。
もはや単なる政策勉強会ではない。
派閥解消後の自民党に誕生した「超巨大新派閥」である。
しかも、この議連の特徴は「誰を入れたか」ではなく、「誰を外したか」にある。
最大の排除対象は、林芳正総務大臣だ。
前回総裁選の有力候補のうち、林氏だけが国力研究会から外された。そこには、麻生氏の長年の怨念が色濃くにじむ。
林氏の背後には、旧宏池会の重鎮である古賀誠元幹事長がいる。福岡を地盤とする古賀氏と麻生氏は、長年の宿敵関係にあった。
2021年総裁選で、岸田文雄元総理が麻生氏の支援を受ける際、条件とされたのが「古賀氏との決別」だった。しかし、林氏はその後も古賀ラインを維持してきた。麻生氏にとって、林氏は“許せない宏池会”の象徴なのである。
今回の巨大議連は、林氏を孤立させ、来年秋の総裁選で出馬困難に追い込む狙いを秘めている。
もし出馬しても、300人規模の麻生主導グループに対抗するのは容易ではない。逆に出馬を見送れば、宏池会内では木原誠二官房副長官ら若手主流派に主導権を奪われかねない。
まさに「出るも地獄、出ないも地獄」である。
さらに興味深いのは、麻生氏と犬猿の仲とされた武田良太元総務相までが、国力研究会入りを表明したことだ。
武田氏は旧二階派を継承し、菅義偉元総理とも近い。これまで「反麻生」の代表格と見られてきた。
しかも武田氏は、林氏とも連携を深めていた。日韓議員連盟会長を菅氏から受け継ぎ、中国とパイプのある林氏と歩調をあわせてきた。高市政権への接近も強め、秋の内閣改造では幹事長など執行部入りを狙っているとみられていた。
しかし、300人議連が誕生すれば、そこから外れること自体が政治的リスクになる。
ここで干されれば、せっかく立ち上げた武田グループそのものが崩壊しかねない。結果として、武田氏まで麻生体制に“屈服”する構図が生まれつつある。
一方で、麻生氏の復権は、自民党内だけにとどまらない。
最近の永田町では、「国民民主党の連立入り」が再び取り沙汰され始めている。
背景には、玉木雄一郎代表率いる国民民主党と、日本維新の会をめぐる“代理戦争”がある。
これまで維新の背後には菅氏、国民民主の背後には麻生氏がいるとされてきた。だが、菅氏の政界引退でバランスが崩れた。
維新の吉村洋文代表は高市総理に接近し、連立入りを果たした。しかし、高市氏が麻生氏と和解し、「麻生・高市体制」が確立すれば、維新の存在感は急速に薄れる。
そこで浮上してきたのが、「国民民主を加えた新連立構想」だ。
すでに麻生氏の義弟である鈴木俊一幹事長や石井準一参院幹事長に続き、松山参院議員会長も国民民主の連立入りに言及し始めている。
数の上では、与党はすでに衆院で4分の3近い議席を握り、参院でも事実上の過半数を確保している。国民民主を加えなくても政権運営は可能だ。
それでも麻生氏が国民民主を取り込みたがるのは、「麻生支配」をより強固にするためだろう。
一方の国民民主党も苦しい。
支持率は低迷し、野党はバラバラ。しかも当面、大きな国政選挙は予定されていない。野党として存在感を発揮する舞台が乏しいのである。
となれば、残された道は「連立入りによる延命」なのか。
いま永田町では、「高市政権の安定」というより、その背後で進む「麻生体制の再構築」が最大のテーマになりつつある。
派閥解消で終わったはずだった“派閥政治”は、名前を変え、さらに巨大化して戻ってきた。
そして、その中心に立つのは、麻生太郎、85歳なのである。