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安倍元首相が遺した「統一教会」と「派閥裏金」が炸裂し、岸田政権はますます窮地に〜来春退陣のシナリオが加速

安倍晋三元首相が遺した二つの問題〜統一教会と派閥裏金〜が岸田政権を直撃し、岸田文雄首相はますます窮地に立っている。

政治資金パーティーをめぐる裏金疑惑は安倍派を中心に東京地検特捜部の捜査が近く本格化する。内閣の要で安倍派事務総長を歴任した松野博一官房長官にも疑惑が浮上し、政権は大揺れだ。

岸田首相は各派閥に対し、当面の政治資金パーティーと年末年始の派閥行事の自粛を指示するとともに、首相在任中は自らも派閥を離脱し派閥会長からも退く意向を表明した。

これまで菅義偉前首相らから露骨に批判されても派閥会長にとどまる姿勢を示していたが、派閥の裏金問題が勃発し、世論の批判をかわすには自らが派閥を離れるしかないと考えたのだろう。派閥会長を退くことで自らが派閥批判の矢面に立つことから逃れたいという打算もあるとみられる。

一方、岸田首相が旧統一教会と友好団体トップと面会していた問題は、他人に責任転嫁できない問題だ。

朝日新聞によると、岸田首相は自民党政調会長だった2019年、米国のギングリッチ元下院議長と自民党本部で面会。その際に旧統一教会の友好団体「UPFジャパン」のトップである梶栗議長らが同席していた。朝日新聞はこの面会時の写真を独自入手してスクープした。

さらにギングリッチ氏や旧統一教会側への取材を続報。①面会は旧統一教会の友好団体が手配した②当初は安倍首相と会う予定だったが、都合がつかず、代わりに岸田氏と面会したーーという経緯を報じた。安倍氏が岸田氏に対応するように求めたとみられる。

岸田首相は「同席者は承知していない」と釈明したが、本当だろうか。自民党本部に「よく知らない人」を招き入れることがあるのか、旧統一教会側が面会を手配しながら岸田氏が「承知していない」ことなどあるのか、安倍氏から何も聞いていなかったのかーーなど疑問は尽きない。

この問題は、①旧統一教会が日米の政治家の橋渡しをしていた②岸田氏は安倍氏に言われるままに面会に応じていた③岸田政権の対米追従外交に旧統一教会が影響していた可能性があるーーなど、政治的に検証しなければならないことが多々ある重大ニュースである。

さらに岸田首相の「同席者は承知していない」が嘘だとすれば、政治責任は免れない。今後の国会で大きな焦点となろう。

派閥裏金にしろ、旧統一教会の友好団体トップとの面会にしろ、安倍氏が遺した重大問題のツケがいまになって回ってきたともいえる。

だがこれは岸田首相にとって自業自得の面もある。

そもそも岸田氏が2012年に前任の古賀誠元幹事長から宏池会会長の後継者として指名されたのは、総裁に復帰した安倍氏と同期で親しかったからだ。さらに安倍政権で外相に起用されたことが首相候補への大きな前進になった。

そして2021年の総裁選に勝利したのも、麻生太郎氏の後ろ盾に加え、決選投票で安倍氏の支援を受けたことが決め手となった。安倍氏がいなければ岸田政権の誕生はなかったといっていい。

安倍政権の膿が今になって噴出し、岸田政権を窮地に追いやっているのは、因果応報ともいえる。

当面の政治資金パーティーを自粛することや、首相在任中は派閥から離脱することは、急場しのぎの対策にすぎず、信頼回復への根本策とはいえない。

岸田首相は来年2月に鈴木善幸首相を抜いて宏池会歴代首相の在任期間第2位に躍り出る。創始者の池田勇人首相に続く在任期間を手にいれることが、岸田首相の悲願であると言われている。あと2ヶ月あまり。それまで何としても首相の座に居座るための「時間稼ぎ」としての「パーティー自粛」や「派閥離脱」と考えれば、辻褄があう。

来年3月の予算成立と来春に予定されている国賓待遇の訪米を花道に退陣するシナリオがますます現実味を帯びてきたといえるだろう。

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