政治を斬る!

安倍派は大量落選…それでも5人衆は強かった!石破への怒りで勝ち上がった萩生田光一、泉房穂不出馬に救われた西村康稔、岸田に守られた松野博一、二階息子を蹴落とした世耕弘成…落選はパンツ高木だけ!

自民党裏金問題のシンボルだった安倍派5人衆。そのうち4人が総選挙を無所属で勝ち抜き、国会へ戻ってくる。禊を済ませたとして復活するのだろうか。

最大の注目区となったのは、萩生田光一氏が無所属で出馬した東京24区だった。立憲民主党はジャーナリストの有田芳生氏を擁立し、野田佳彦代表が東京24区の八王子市で第一声をして最重点選挙区に位置付けていた。

総選挙最終盤に萩生田氏ら非公認候補に、自民党が裏公認料2000万円を支給していたことが発覚。自民党に大逆風が吹き荒れ、萩生田氏も落選の危機とみられていた。

だが、結果は萩生田氏が競り勝って当選。土壇場の大逆風でむしろ萩生田陣営は固まったのだろう。

野党乱立に救われた側面も見逃せない。立憲に加え、国民や維新も候補者を擁立。反萩生田票が分散したことで萩生田氏逃げ切りをアシストしたともいえる。

野党各党が連携せずに総選挙に傾れ込んだ結果、自公過半数割れに追い込んだものの、総選挙後の首相指名選挙で野党各党が手を結んで連立政権をつくって政権交代を実現させることはできない見通しだ。立憲民主党が自らの議席増ばかりを優先し、野党共闘体制を構築しなかったツケが、首相指名選挙で回ってきたともいえる。

野党第一党はいくら議席を増やしたところで、政権交代を実現できなければ、政権選択の選挙に敗れたといっていい。

萩生田氏の当選は、まさに野党陣営の崩壊、立憲民主党の「敗北」を象徴する選挙区といえるだろう。

同じく無所属で出馬した西村康稔氏も兵庫9区で野党乱立に救われた。とくに前明石市長の泉房穂氏が出馬せず、泉氏が兵庫県議選に擁立して当選させた橋本氏を立憲が擁立するという構図となったが、泉氏は橋本氏の応援にも駆け付けなかった。維新や共産も候補者を擁立し、野党の足並みの乱れが目立った。

5人衆で唯一公認を得た松野博一氏も千葉3区で野党乱立に救われた。岸田文雄首相の後押しで公認を得たものの、比例重複は見送られ、背水の陣だった。立憲候補と激しい競り合いになったが、約3000票差で逃げ切った。野党が候補者一本化していたら敗北していた可能性が強い。

裏金問題で自民党離党に追い込まれた世耕弘成氏は無所属で和歌山2区に出馬し、同じく裏金問題で政界引退に追い込まれた二階俊博氏の三男(自民公認)との保守分裂の選挙戦を制した。二階氏の三男は比例復活もできず、世耕氏の圧勝といっていい。自民党復党へ大きく前進した格好だ。

五人衆で唯一落選したのは、福井2区の高木毅前国会対策委員長だった。「パンツ泥棒」の過去を週刊誌に報道された上、裏金批判を受ける大逆風の選挙。しかも高市早苗氏の夫で元自民党衆院議員の山本拓氏が無所属で出馬し、保守分裂となった。当選した立憲候補に加え、維新候補にも敗れる惨敗だった。

裏金候補は18勝28敗。安倍派重鎮だった下村博文元文科相や参院から鞍替え出馬した丸川珠代氏が落選した。そのなかで5人衆は4人が自力で当選。しぶとさをみせたともいえる。

だが、裏金隠し選挙と言いつつ、大物裏金議員である安倍派5人衆を壊滅させることができなかった立憲民主党の責任も見逃せない。裏金問題に対する世論の激しい怒りを踏まえれば、少なくとも5人衆の選挙区では対抗馬を一本化し、何としても落選させる強いリーダーシップを発揮できなかったことは、立憲に対する国民の期待感がいまいち高まらないことを象徴する事象だったといえる。

政治を読むの最新記事8件