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立憲民主党・阿部知子衆院議員のケースから考える「与野党政治家のコロナ緊急助成金の受給問題」の核心

自民党の石原伸晃氏(衆院選で落選)が国の緊急雇用安定助成金の受給問題で批判され、内閣官房参与の辞任に追い込まれた問題は、自民党の大岡敏孝環境副大臣の受給問題に波及し、さらには立憲民主党の阿部知子衆院議員と岡本章子衆院議員が代表を務める党支部が新型コロナウイルスによる臨時休校対策の助成金を受け取っていたことも表面化して、次々に助成金を返還する事態となった。

コロナ禍で生活苦に直面する人々を救済するための緊急助成制度を国会議員が活用していたことに国民の理解は得られまい。与野党の国会議員が返還に追い込まれたのは当然の流れであろう。

ただし、この問題を単に「国会議員がコロナ緊急対策を活用した」という政治家のモラルの問題で片付けていいとは私は思っていない。

立憲の阿部氏が12月15日に公表した「この度の両立支援等助成金の受給について」という文章をもとに、この問題の本質に迫ってみたい。

この文書によると、阿部氏が代表を務める立憲民主党神奈川県第12区総支部が申請・受給していたのは、厚生労働省の「両立支援等助成金(新型コロナウイルス感染症小学校休業等対応コース)」である。

昨年、阿部氏の私設秘書の子どもが通う小学校がコロナ禍で臨時休校になったため、3月〜6月の24日間の有給休暇を取得させたが、阿部氏の「気兼ねなく休んでもらいたい」という願いから、同支部が助成金を申請し約24万円を受給したという。

阿部氏は「この制度は、働く女性・男性が仕事と家庭生活のどちらも大切にし、ワークライフバランスを実現できるよう、新型コロナウイルス感染症による小学校などの臨時休校により仕事を休まざるを得なくなった保護者を支援するためのもの」としたうえ、「他にも出産時支援、介護支援等のメニューが用意されており、有給の休暇を取得させた事業主に対し、雇用維持の目的で支給される助成金になっています」と説明している。

阿部氏はその上で「政治分野で働く女性にもこの制度を利用してほしいという思いで申請した」としつつ「新型コロナで様々に困窮されている方々がいる中で、未だに多くの方に十分な理解が得られていないものであると考え、現在、返還の手続きを進めている」とし、「今後とも子ども・子育て支援を前に進め、十分な理解を深める努力を致します」と結んでいる。

さて、この釈明文をどう読み解くか。それが政治報道の役割であろう。

阿部氏の私設秘書も労働者である。一般の労働者と同じく、有給休暇などを取得する権利がある。そのうえで子どもを小学校に通わせる保護者としてコロナ禍における政府の緊急支援を受ける権利もある。政治の分野で働いているという理由で労働者(保護者)としての権利が奪われることがあってはならない。そこに異論がある人は少ないのではないか。

それでもなお世論がこの助成金受給にしっくりこないのは、助成金を受け取っているのが私設秘書(保護者)本人ではなく、国会議員である阿部氏(正確には阿部氏が代表を務める政党支部)だからであろう。

有給休暇を「気兼ねなく」取得させるのは事業主として当然の責務であり、それに対して事業主の国会議員が税金で「補てん」されるのは、国民の理解を得られるだろうか。制度をつくる側が制度の恩恵を受けているところに国民は違和感を抱いているのだ。

この違和感をさらに掘り下げると、国会議員(政党支部)に支給された助成金は、本当に私設秘書(保護者)を救済するために全額使われたのか、国会議員(政党支部)が「中抜き」して別の政治目的に使ったのではないか、という疑念が生じてくる。

この「中抜き」問題は「事業主」が「国会議員(政党支部)」である場合に限ったことではない。

従業員の暮らしを救済する名目で国家から様々な助成金を受け取った一般企業がその全額を従業員に支給したかどうかは非常に怪しい。「従業員救済」はあくまでも口実であり、その内実は「企業救済」なのではないかーーここに「中抜き」問題の核心がある。国会議員の助成金受給問題は、一般企業と同様、「中抜き」問題なのだ。

問題の本質は「事業主」への助成金支給を通じて「従業員」を守るという「間接救済」の仕組みそのものにある。ここを問題視して助成金が従業員に直接支給されるように制度改正に動くことが国会議員の務めではないか。

私は「個人への救済」ではなく「業界への救済」を重視することが自民党政治の本質であり、それが「政官業の癒着」を生む根本原因であると繰り返し指摘してきた。

最近の記事では、日大背任事件を例に、学生の負担軽減を口実に学校法人に支給される巨額の私学助成金が「政官業の癒着」を生んでおり、それを廃止して全額を学生に直接給付すべきであると提案した(以下参照)。

私学助成金を廃止し、学生に直接現金給付を!〜相次ぐ私大不祥事をなくす秘策

コロナ禍に対応する自公政権の緊急対策のほとんどは「個人への直接支給」ではなく「事業主への支給」の形式をとっている(世論のうねりをうけて実現した昨年の現金10万円一律給付は例外中の例外である)。労働者への休業支援は事業者を経由して支給され、医師や看護師への助成金は医療法人を経由して支給される。その過程で「中抜き」され、現場の人々に全額が行き届いていないと多くの人々が実感している。この「業界(事業主)を経由した支援」こそ、自民党政治の本質なのだ。

立憲民主党が自民党に対抗して掲げるべきは、「業界(事業主)を経由した支援」を「個人(従業員)への直接支援」に転換させるという税金の使い方の抜本的転換だ。

阿部氏の問題にあてはめれば、私設秘書(保護者)の休業に対して阿部氏(国会議員・政党支部)へ助成金を支給するのではなく、私設秘書(保護者)個人へ直接支給する仕組みへの転換である。

もし今回の助成金の申請・受給者が阿部氏(政党支部)ではなく私設秘書(保護者)個人であったならば、世論の批判もそこまで高まらず、助成金返還の必要もなかったのではないか。

阿部氏が今回の問題の結論として述べるべきは「今後とも子ども・子育て支援を前に進め、十分な理解を深める努力を致します」という一般論ではない。「事業主を経由した支給そのものに制度の歪みがある。労働者(保護者)個人への直接支給に転換すべく、立憲民主党の国会議員として自民党政権に対峙していく」ということだ。そう訴えることが、野党第一党の国会議員のとるべき姿勢であった。