自公与党が昨年秋の総選挙で過半数を割ったことで、自民党の反対で動かなかった選択的夫婦別姓の法制化が実現する可能性が出てきた。公明党はそもそも賛成の立場だったが、自公過半数割れを受けて自民党を説得する姿勢を強めている。
公明党の斉藤鉄夫代表は12月18日のラジオ番組で、「男性も女性も実際に困っている人が多くいる。もう決断する時だ」と強調。同日昼には石破首相と首相官邸で昼食をともにし、自公の実務者で具体的検討を始めたいと提案した。
衆院(定数465)の過半数は233。立憲民主党(148)に加え、日本維新の会(38)、国民民主党(28)、れいわ新選組(9)、共産党(8)の野党各党は賛成の姿勢をみせており、有志の会(4)や無所属をあわせると選択的夫婦別姓法案の可決に必要な過半数を超える可能性が高い。公明党(24)の賛成は必ずしも必要ではない。
他方、参院(定数248)は現在欠員が8。自民(113)と公明党(27)の与党で過半数(121)を超える140議席を占めている。選択的夫婦別姓法案を参院でも可決して成立させるには、公明党の賛成が絶対に不可欠である。
ただ、公明党が賛成に回っても、立憲民主党(42)、日本維新の会(18)、国民民主党(12)、共産党(11)、れいわ新選組(5)、沖縄の風(2)とあわせるだけでは過半数にはわずかに足りない。各党の造反の有無や無所属議員の動向が可否を左右する際どい展開となる。
立憲民主党は自公与党を分断する目的もあって、選択的夫婦別姓法案の審議を優先させる方針だ。法案を審議する衆院法務委員長には立憲民主党の西村智奈美元幹事長が就任。法案審議の主導権は野党が握っている。
公明党も総選挙で自民党の裏金事件の巻き添えを食って惨敗したことを受け、今年7月の参院選に向けて独自性を発揮する必要に迫られている。連立与党の一員として自民党を説得するかたちで法案を成立させ、存在感を高めたいところだ。
けれども、自民党には反対が根強い。昨年9月の総裁選で、小泉進次郎氏が当初は本命視されながら、出馬会見で選択的夫婦別姓法案の1年以内の提出を明言して党員の反発を買い、大失速したことは記憶に新しい。
小泉氏の主張は選択的夫婦別姓法案を提出するものの党議拘束はかけず、個々の議員に賛否を委ねるという内容だったが、それでも党員の反発はすさまじかった。石破首相はそもそも賛成の立場だったが、首相就任後は慎重姿勢を崩していない。公明党の説得を受け入れるかどうかは不透明だ。
立憲民主党は7月の参院選を見据え、1月24日召集の通常国会(会期末は6月22日)では衆院での可決を優先的に目指す。参院に送付して否決されても、7月の参院選で選択的夫婦別姓が大きな争点となり、自民党に逆風が吹き付けることを狙っている。自公の選挙協力に楔を打ち込むことにもなる。
自民党の包囲網は着実に狭まってきた。