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総選挙は11月に先送りし、10月21日衆院任期満了まで「与野党大連立」でコロナ危機管理に専念しては?

自民党総裁選は「9月17日告示-9月29日投開票」の日程で調整が進んでいる。菅義偉首相の総裁任期は9月30日に切れるため、その直前に投開票日を設定するということだ。

一方、衆院議員の任期は10月21日に切れる。菅首相は自民党総裁選の前に衆院解散・総選挙を断行する意向を示しており、その言葉のとおり「9月解散」なら自民党総裁選は総選挙後に先送りされることになっている。

コロナ変異株の感染拡大が加速するなか、菅首相の頭は権力の座を守るため、総裁選と総選挙をいかに乗り切るかでいっぱいなのだ。

もともとは東京五輪を成功させて内閣支持率を上げ、総選挙で野党に勝って安定多数を維持したうえ、自民党総裁選を無投票で乗り切る戦略だった。有力視されてきたのは、9月5日にパラリンピックが閉幕した直後に臨時国会を召集し、コロナ対策を名目として総選挙向けに大盤振る舞いの補正予算案を急ピッチで成立させた後に衆院を解散し、「9月28日公示ー10月10日投開票」とする日程だった。

ところが、ここにきてコロナの感染拡大が止まらず、医療崩壊が現実となり、内閣支持率は下落している。自民党内では「菅首相で総選挙を戦えるのか」という危機感が広がりはじめ、ワクチン接種が進んで感染拡大が落ち着くまで、できる限り総選挙の日程を先送りしたほうがよいという主張も出始めた。

では、総選挙の投開票日はいつまで先送りできるのか。

公選法は任期満了が迫っても国会開会中であれば例外的に選挙日程を遅らせることができると規定している。今回のケースにあてはめると、任期満了の10月21日まで臨時国会を開いて最終日に衆院を解散した場合、最長で11月28日まで投開票日を先送りできることになる。11月下旬になればワクチン接種がかなり進み、感染拡大も落ち着いて、政権批判も沈静化しているだろうという読みだ。

そこまで解散・総選挙を先送りする場合、自民党総裁選は予定通り9月に(つまり衆院解散・総選挙の前に)実施すべきだという声が高まるだろう。菅首相はコロナ対応を前面に掲げて有力な対抗馬が名乗りをあげることを封じ無投票に持ち込みたいところだが、自民党内で「不人気の菅首相に代わる選挙の顔」を担ぐ動きが強まる可能性もある。

安倍晋三前首相に近い高市早苗元総務相は8月10日発売の月刊「文藝春秋」で、自民党総裁選に出馬する意向を示した。高市氏は事前に安倍氏と会談するなど頻繁に意見交換しており、「無投票再選を黙認はしないよ、すんなり無投票で再選したいなら頭を下げに来いよ」という安倍氏から菅首相へのメッセージとみられる。東京五輪が閉幕した後、秋の総裁選・総選挙に向けて自民党内の駆け引きは一挙に激化しそうだ。

コロナの感染拡大が加速する今、菅首相をはじめ自民党議員たちの最大の関心事は、総選挙と総裁選を舞台とした権力闘争なのである。「国民より政局」なのだ。

感染爆発による「医療崩壊」が現実となり、政府が「入院拒否」を表明しなければならないほど切迫した状況下において、国会議員たちが総選挙の日程をめぐる政治的駆け引きに奔走している暇があるのか。衆院解散・総選挙や自民党総裁選が予定されている9〜10月は、さらなる感染拡大が予想される正念場なのである。与野党の国会議員たちが「政局一色」に染まって大丈夫なのか。ここはいまいちど冷静に考えてほしい。

とはいえ、「ワクチン接種が進んで内閣支持率が回復するまで時間を稼ぐ」という自民党の党利党略で解散・総選挙を先送りしたら、政治不信はますます高まるであろう。与野党はもちろんのこと、日本社会全体が「与野党激突の総選挙を先送りし、9〜10月はコロナ危機対応に専念する」ことを納得する仕掛けが不可欠だ。

そこで、提案したい。

政局の駆け引きが激化するのは、政治日程が定まっていないからである。まずは与野党が合意し、解散・総選挙の日程を今すぐに固めてしまったらどうだろう。9〜10月に感染拡大が予想されるのだから、投開票日はできるだけ先送りして11月28日で良いではないか。衆院議員の任期満了となる10月21日まで与野党は「2ヶ月間の政治休戦」で合意し、事実上の連立政権を発足させてコロナ危機対応に専念したらどうだろう。2ヶ月間限定の「コロナ危機管理内閣」をつくるのだ。

立憲民主党の枝野幸男代表ら野党幹部が閣内に入ってもいいし、閣外協力にとどめて与野党党首会談でコロナ危機対応を決定する仕組みでもよい。2ヶ月間の期間限定のうえ直後に総選挙を控えているから「大政翼賛会」になる恐れもないだろう。与野党党首会談は公開し、政策決定を透明化するのがよい。有権者は与野党のコロナ対策への取り組みや連立政権の一員としての具体的な貢献を客観的に評価し、間近に迫る総選挙の投票先を決める判断材料にすることもできる。

与野党が目の前のコロナ危機をそっちのけにして総選挙や総裁選をめぐる政治日程の駆け引きに拘泥することによる損失は計り知れない。政界全体で「政局よりもコロナ危機対応」を優先する意思を明確に示す意味でも大連立は有効だ。

この大連立が実現すれば、自民党総裁選をめぐる駆け引きが沈静化し、支持率低迷にあえぐ菅首相の窮地を救うことになるという立場からの異論もあるだろう。しかし、菅首相が自らの一存で総選挙の投開票日を11月まで先送りし、それまでの間「コロナ対策」の名の下に首相の権力をなりふり構わず振りまわして自らの政権延命を図るという展開は、あまりに危険である。大連立には「首相の暴走」を封じ込む効果もある。

時間の余裕はあまりない。大連立構想は与野党の当事者のどちらか一方から浮上すると合意が難しいものである。SNSをはじめ一般世論から「与野党大連立による2ヶ月間限定のコロナ危機管理内閣」を求める声が高まって政局を突き動かすことを期待したい。

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