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プロパガンダ合戦強まる!ロシア発もウクライナ発も欧米発も戦時下の大本営発表は徹底的に疑え!

大日本帝国が太平洋戦争で虚偽の戦況を伝える大本営発表を繰り返して国民を欺いたことは広く知られているが、戦時下の政権が虚実ないまぜのプロパガンダ戦を繰り広げるのは古今東西、変わりはない。国際世論を味方に引き入れるため、あるいは、国内世論の戦闘機運を高めるため、その目的はさまざまだ。

ウクライナ戦争でもロシアのプーチン政権、ウクライナのゼレンスキー政権、そして欧米政権の三者によるプロパガンダ戦が激しくなってきた。

ロシアメディアに比べ報道の自由が格段に高い欧米メディアでさえも欧米政権の情報操作に乗せられて虚偽情報を振りまく恐れがあることは、イラク戦争をはじめ「米国の戦争」の歴史を振り返れば明らかである。戦時下の報道は通常に増して慎重に見極めなければならない。どの政権の「大本営発表」も鵜呑みにせず、合理的に確度を精査し、決して絶対視しないことが肝要だ。

最近では「ロシア軍がウクライナの産科・小児科病院を爆撃した」というウクライナ発のニュースが欧米メディアによって世界を駆け巡り、ロシアに対する国際的批判を極限まで高めた。一方、ロシアは「フェイクニュースだ」と反論している。この問題を例に考察を進めてみよう。

まずはこの問題を伝える報道の例として、CNN報道『ウクライナ南部の産科・小児科病院に爆撃、大統領がロシアの「残虐行為」非難』を読み込んでみよう。

ウクライナ南部マリウポリの当局は9日、ロシア軍が市内の産科・小児科病院を爆撃したと述べた。ウクライナのゼレンスキー大統領はこの攻撃を「残虐行為」と非難している。

ロシアは複数の町や都市から避難民を退避させるための12時間の停戦に合意していた。

マリウポリ市議会は破壊された病院の動画を投稿し、ロシア軍が複数の爆弾を空から投下したと非難。「破壊は甚大だ」「子どもたちが最近治療を受けていた医療施設は完全に破壊されている」と述べた。

ドネツク地方の警察は初期情報を基に、この攻撃により母親やスタッフを含む17人が負傷したと明らかにした。

ゼレンスキー氏は攻撃に憤りを示しつつ、北大西洋条約機構(NATO)に対してウクライナ上空での飛行禁止区域設定を改めて求めた。

ゼレンスキー氏はメッセージアプリのテレグラムで「産科病院に対するロシア軍の直接攻撃があった」「人々や子どもたちが残骸の下敷きになっている。残虐行為だ。世界はいつまでテロを無視する共犯者でいるのか」としている。

さらに「今すぐ空を閉鎖せよ。殺害を止めよ。あなた方には力があるが、人間性を失いつつあるように見える」とも述べた。

一方、ロシア外務省のザハロワ報道官は証拠を示さずに、ウクライナ軍は病院内に「戦闘陣地を設置」していたと主張した。爆撃後の病院を捉えた映像には、患者と職員がいる様子がはっきり映っている。病院から運び出される出産間近の女性の姿も見られる。

病院への攻撃に対しては国際社会からも非難の声が寄せられ、国連は病院や医療従事者が標的になることは絶対あってはならないと述べた。

マリウポリはウクライナ南東部沿岸の戦略的要衝。米国防当局者は8日、同市が数日にわたって包囲され、ロシア軍によって「孤立」させられていると指摘していた。

さて、この報道をどう読み解くか。基本はいずれの政府の公式発表もまずは疑うことである。そのうえで確度の高い順に情報を並べてみよう。

ウクライナ・ロシア双方の発表で共通しているのは、小児科病院として使われていた建物がロシア軍に攻撃されたことだ。

一方、双方の食い違いは、ウクライナ側は「子どもたちが最近治療を受けていた」「母親やスタッフら17人が負傷した」としているのに対し、ロシア側は病院内に「戦闘陣地を設置」していたと主張している。さらにはロシア側が「病院はすでに兵士によって使われていて、小児病院ではなかった。フェイクニュースはこうやって生まれる」と反論していることを伝えるニュースもある。

さて、どちらの言い分が正しいのか。

CNNがロシア側よりウクライナ側の言い分を信用して報道しているのは『ウクライナ南部の産科・小児科病院に爆撃、大統領がロシアの「残虐行為」非難』のタイトルをみれば明らかだ。

記事中に根拠としてあげているのは、地元市議会が投稿した「破壊された病院の動画」と地元当局者の「子どもたちが最近治療を受けていた医療施設は完全に破壊されている」というコメントである。CNNは「爆撃後の病院を捉えた映像には、患者と職員がいる様子がはっきり映っている。病院から運び出される出産間近の女性の姿も見られる」と断定調に報じている。

だが、私がみた限りでは、ロシア軍の空爆で多くの建物が破壊されたことは間違いないと思ったが、この建物が空爆時点で小児科病院として使われていたのかどうか、さらには、ウクライナ側がこの建物を軍事拠点として使っていなかったのかどうかは確証が持てなかった。CNNが動画だけをもとに判断したのか、それとも信用に足る他の現地情報を入手しているのかはよくわからない。

CNNはこの動画や地元当局者のコメントを踏まえ、ロシア政府がウソをついていると主体的に判断して『ウクライナ南部の産科・小児科病院に爆撃、大統領がロシアの「残虐行為」非難』というタイトルで報じたのだろう。ロシアの報道の自由が大幅に制約されていること、ロシア政府はそもそも隠蔽体質であることを鑑みれば、CNNの判断は一定の合理性はあると思う。

ロシア側からはさまざまな形で反論が出ている。それに対し、BBCの専門記者が反証していることを伝える以下のツイッターは興味深いので参照してほしい。

それでもなお、ロシアが小児科病院をあえて狙って爆撃したという見方には合理的に疑問も残る。国際的批判を浴びることを承知で、いったい何のために小児科病院を狙い撃ちするのか? メリットはあるのか? ロシアにとって何もいいことはないのに、なぜ爆撃したのか? 

善悪二元論に基づいてロシア軍を「極悪殺人集団だ」と信じる人は「そんな合理的な理由はない。ロシア軍はウクライナ人を殺したいのだ」というかもしれない。私はそうは思わない。ロシア軍の目的は「ウクライナ人を殺すこと」ではなく「戦争を優位に進め、ロシアに有利な形で終わらせること」にある。はたして小児科病院を爆撃することはその目的にかなうのか? 違うだろう。国際世論の批判を浴び、ロシアへの憎悪を掻き立て、むしろ目的達成を妨げるリスクのほうが大きい。そんなバカなことをするだろうか?

ひとつの可能性は「誤爆」だろう。小児科病院を軍事拠点に使用していると見誤った可能性もある。そもそも小児科病院があるかどうかを気にせず空爆したのかもしれない。

一方で、ウクライナ側が本当に小児科病院を軍事拠点に転用していた可能性も排除できない。その場合は小児科病院として運営しているように見せかける細工もするだろう。過去の戦争では病院などの人道施設に軍事拠点を構えて敵の攻撃を回避する防衛策が行われているのも事実だ(だからこそ戦争という非人道的な行為自体が絶対悪なのである)。戦場では何でもありになるものだ。

地元当局者が「子どもたちが最近治療を受けていた医療施設」という言い方をしているのも気になるところである。軍事的に劣勢に立つウクライナ側がロシア軍の非人道ぶりを国際社会へ強烈にアピールするため「小児科病院の攻撃」を大々的に喧伝することも戦時下ではありえる。やはり記者が現地を徹底して取材しない限り、確実なことは言えない気もする。

さらにウクライナ側の意図を感じるのは、このニュースを受けたゼレンスキー大統領の発言ぶりだ。

ゼレンスキー大統領は「産科病院に対するロシア軍の直接攻撃があった」「人々や子どもたちが残骸の下敷きになっている。残虐行為だ」と断定したうえ、「世界はいつまでテロを無視する共犯者でいるのか」と訴えている。「小児科病院への攻撃」を契機にロシア批判の国際世論を喚起させる思惑が強くにじんでいる。

ゼレンスキー大統領はさらに「今すぐ空を閉鎖せよ。殺害を止めよ。あなた方には力があるが、人間性を失いつつあるように見える」とも述べている。

この発言には伏線がある。

ゼレンスキー大統領は北大西洋条約機構(NATO)に対してウクライナ上空での飛行禁止区域設定を求めている。これはウクライナ上空に侵入したロシア軍機をNATOが撃墜することを意味しており、世界戦争に発展する恐れがあることからNATOは拒否した。ゼレンスキー氏はNATOの決定に激怒しているのだ。ゼレンスキー氏に「小児科病院へ爆撃」を契機に国際世論を喚起し、NATOに飛行禁止区域設定を改めて迫る狙いがあるのは間違いない。

このように考えると、「小児科病院への爆撃」のニュースで圧倒的に「利」を得たのはロシア軍よりもウクライナのゼレンスキー大統領であることがわかる。もちろんこのことはロシアの主張が正しいという証拠にはならない。ただし、現地の情報が大きく不足するなかで双方からプロパガンダが飛び交う戦時下において「その情報はどちらを利するのか」という視点で確度を精査することはとても重要である。

3月11日にはウクライナ国営通信が「ロシア軍爆撃機が隣国ベラルーシの複数の集落を空爆した」と報じ、ウクライナ軍は「ロシアがベラルーシにウクライナ派兵を迫るためウクライナによる攻撃と見せかける偽装工作を行った」と主張した。これに対し、ベラルーシ国防省は「偽情報だ」と攻撃自体を否定。米国防総省もロシア軍の爆撃を「確認できない」としており、ウクライナ側が情報戦を仕掛けたとの見方も出ている(こちら参照)。このようなプロパガンダ合戦は毎日あちこちで繰り広げられているのだ。

私はロシアの発表を鵜呑みにする気にはなれない。同様にゼレンスキー大統領の発表も鵜呑みにはできないと思っている。小児科病院を標的にした爆撃が事実なら看過できない暴挙である。しかし現時点ではこのニュースを絶対視せずその背景を慎重に見極めたほうが賢明だろう。

いま私たちが批判を向ける対象は「小児科病院への攻撃」に限定されない。ロシア軍の暴挙は許し難いが、過去の戦争では米軍も非戦闘員の命を大量に奪っている。戦争自体が絶対悪なのだ。もっとも批判されるべきは武器を持って戦うことで民間人を巻き添えにする戦争を停止しようとしないすべての為政者たちである。

プロパガンダは戦闘現場の局地的な出来事にとどまらない。「プーチン大統領はロシア国内で追い込まれている」「プーチン大統領は短期決戦のつもりだったが、読み間違えた」という分析が欧米メディアから相次いでいるが、はたしてどうか。

短期決戦でキエフを陥落し、ゼレンスキー政権を転覆させて親露政権を樹立することがプーチン大統領の描くベストシナリオだった可能性は高い。

だが、そのベストシナリオだけを想定して欧米を敵に回すウクライナ侵攻に踏み切るのは常識的にはありえない。もしそうだとしたら、プーチン大統領は国際情勢をまったく見通せていないことになる。欧米メディアはそのような見方を振りまき、日本マスコミもそれにのっかっている。

ほんとうにそうだろうか。欧米を敵に回して軍事侵攻するのである。セカンドシナリオとして長期戦を想定していたと考えるほうが自然だろう。「プーチンは読み間違えた」というのは欧米政権のプロパガンダの可能性が捨てきれない。

ひとつの根拠は原油高だ。ロシアはウクライナ侵攻前から原油高を仕掛けていたフシがある。ウクライナ侵攻で欧米から経済制裁を受けることを見越して、あらかじめ産油量を減らして原油高に誘導し、経済制裁によって原油価格が一層高騰することを狙ったのではないか。

実際、原油高はエネルギー輸出国の米国とロシアを潤し、経済制裁のマイナス面を緩和する一方、エネルギーを輸入に頼る欧州諸国には痛打である。すでに欧州では電気代が高騰し、私の欧州の友人たちも悲鳴をあげている。彼らはロシアのウクライナ侵攻当初は「ゼレンスキーがんばれ」「ロシアは許せない」と言っていたが、早くも「停戦したほうがいい」とニュアンスが変わってきた。経済制裁に耐えられないのはロシアより欧州諸国ではないだろうか。

持久戦に持ち込めば欧州は原油高に根を上げて譲歩してくるだろう。そのタイミングでロシアに有利な形で停戦合意すればいいーープーチン大統領はそう計算しているのではないか。私は「見込み違い」というよりは「用意周到」な気がしてならない。

もちろん私の憶測でしかないが、同様に「プーチンは見間違えた」という欧米メディアの報道もまた憶測の域を出ていないのではないか。戦争はプロパガンダが横行して何が事実か見極めるのが極めて難しい。戦時下のほぼすべての情報は疑ってみるしかないということである。戦争当事国の政権が吹聴するプロパガンダには特に注意が必要だ。

ロシアが国際法に違反してウクライナに侵攻したのは非難すべき行為である。断固として許してはいけない。

一方で、いったん戦争が始まると、そこに飛び交う情報はフェイクニュースだらけだ。ロシアだけではなく、ウクライナも、欧米も、すべての当局者から発信される情報は、自分たちを有利にするための「思惑情報」と思って慎重に見極めなければならない。第二次世界大戦だって、戦後70年を過ぎてようやく判明する真実があるのだ。リアルタイムで飛び交う情報は極めて根拠に乏しいのである。

戦争当事者のどちらか一方に加担すると、情報を見極める目が曇る。だからこそ善悪二元論はジャーナリズムの最大の敵だ。

プーチン大統領も、ゼレンスキー大統領も、そしてウクライナを盾にロシアの軍事進出を食い止めようとする欧米諸国の政治指導者たちも絶対視しない。彼ら為政者ではなく、ウクライナに暮らす人々に寄り添い、彼らの生命を最優先にする立場を徹底的に追求することこそ、ジャーナリズムが立つべき立場である。

そのためにはどこかの「国益」に加担することなく、一刻も戦闘を終わらせる「即時停戦」の実現を最優先に訴えていく姿勢を基軸として、私はウクライナ情勢を読み解いていきたい。

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