自民党安倍派5人衆のなかで裏金額が最多で、今回の総選挙で非公認となった萩生田光一氏が無所属で出馬している東京24区(八王子市)に全国の注目が集まっている。マスコミの情勢調査では萩生田氏と立憲公認の有田芳生氏が激しく競り合い、萩生田氏は「このままじゃ、俺は落ちるぞ」と焦りを募らせているという。
萩生田氏は公示目前に自民党の公認を外され、公明党の推薦も得られず、無所属で出馬となった。7月の東京都知事選でステルス支援した小池百合子都知事に応援要請しているものの、現時点ではなしのつぶて。裏金事件に加えて旧統一教会との密接な関係も批判され、大逆風の総選挙だ。無所属出馬のため比例復活はなく、東京24区で敗れればただちに落選である。
立憲民主党の野田佳彦代表は裏金問題を最大の争点に掲げ、公示日の第一声も八王子で行った。裏金議員のなかでも萩生田氏を最大のターゲットにしており、東京24区は「裏金議員退治」の象徴選挙区となっている。
孤立感を深める萩生田氏が頼ったのが、自民党総裁選の決選投票へトップで勝ち残り、石破茂首相に逆転負けした高市早苗氏だ。高市氏は萩生田氏の応援にかけつけ、総選挙後の「石破おろし」を見据えて連携を強化する姿勢を明確にした。
もうひとり頼ったのが、安倍晋三元首相の昭恵夫人である。昭恵氏も萩生田氏の応援演説に立ち、安倍氏との親密な関係を訴えた。
萩生田氏ら非公認候補が小選挙区で当選すれば追加公認する方針を森山裕幹事長はすでに公言している。萩生田氏が東京24区で無所属で勝ち上がれば反主流派としての立場をより鮮明にし、来年夏の参院選に向けて高市氏を担いで石破おろしを主導するのは間違いない。
とはいえ、東京24区で落選すれば、国会を去ることになり、石破おろしどころではない。小選挙区で勝利しないことには話は始まらない。
萩生田氏にとって幸運なのは、野党候補が乱立していることだ。立憲に加えて、維新も国民も候補者を擁立。野田代表は東京24区を最重点区としながらも野党一本化はできなかった。
マスコミ情勢調査では立憲の有田氏が他の野党候補から抜け出しており、反萩生田票、反自民票、反裏金票の受け皿となる可能性は高い。とはいえ、一定の批判票は維新や国民の候補にも流れるとみられ、大接戦になったときに野党乱立によって萩生田氏が競り勝つ可能性は十分にある。萩生田氏の最大の援軍は「野党乱立」といっていい。
石破首相も内心では萩生田氏の落選を望んでいるだろう。権力闘争を本気で仕掛けるのなら、東京24区に対抗馬(刺客)を送り込むべきだった。そうすれば、萩生田氏の落選確実だっただろう。そこまで徹底せず、非公認にとどめた結果、萩生田氏が勝ち上がって石破おろしに先頭に立つことになれば、石破首相は「対抗馬を立てて落としておけばよかった」と後悔するかもしれないが、後の祭りである。