政治とマスコミを斬る
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安倍元首相の「亡霊」に怯えない唯一の政治家・林芳正外相に政治記者たちが密かに寄せる期待

安倍晋三元首相の「亡霊」がいまなお彷徨っているーー霞が関の官僚や永田町の政治記者と話しているとしばしば登場する言葉である。首相を去った後も安倍氏の隠然たる影響力は至る所に残っていることを言い表す「隠語」だ。

憲政史上最長の7年8ヶ月も最高権力者の座に君臨した安倍氏。この間に安倍氏に引き立てられて出世した中央省庁の局長以上やマスコミ各社の経営陣・編集幹部は数知れない。

安倍氏が首相を降りたところで、安倍氏のおかげで地位を築いた面々が大手を振ってそれぞれの組織内を歩いている限り、安倍氏の「影」が消えることはない。安倍氏の悪口を迂闊に言おうものならどこから弾が飛んでくるかわからないーー「亡霊」という言葉にはそんな恐怖感が漂っている。官界やマスコミ界から「安倍批判」がほとんど聞こえてこないのはそのためだ。

政界も例外ではない。「安倍批判」を真正面から展開した石破茂氏が徹底的に干しあげられて以降、それは政界でもタブーになった。安倍氏を煙たがってきた二階俊博氏や菅義偉氏も「安倍批判」は極力控えてきたし、国民的人気ナンバー1の河野太郎氏も昨秋の自民党総裁選で「安倍批判」を封じたことで逆に攻め込まれて失速した。

岸田政権が誕生し、安倍氏が求めた人事(高市早苗氏を幹事長に、萩生田光一氏を官房長官に)が拒絶され、安倍氏の影響力低下が指摘されてもなお、「安倍批判」を口にすることへの畏れは、政界、官界、マスコミ界に横たわっている。

長期政権は権力をかくも一点に集中させる。権力者が表舞台を去った後もその影響力を断ち切るには長い歳月を要することを思い知らされる。

岸田文雄首相も安倍氏と一定の距離を置きながらも安倍氏を立てることを忘れないし、安倍氏と並ぶキングメーカーの麻生太郎氏でさえ、安倍氏と利害が相反しつつあるなかでもなお、安倍氏への配慮を欠かしていない。

そのなかで唯一、安倍氏の「亡霊」に怯えず「政敵」であることを隠さない政治家がいる。昨秋の総選挙で参院から衆院へ鞍替えした後、いきなり岸田政権の外相に抜擢されて「ポスト岸田」の有力候補に躍り出た宏池会(岸田派)ナンバー2の林芳正氏である。

林家が安倍家と地元・山口県政界を二分する政争を繰り広げてきたのは周知の事実だ。いまさら安倍氏との対立を隠しようがない。しかも林氏は東大→ハーバード大の華麗な経歴を持つスーパーエリート。老舗派閥・宏池会ではかねてから岸田氏以上に「首相候補」として期待を集めてきた。地元・山口県では「安倍氏の首相再登板」よりも「林政権の誕生」への期待が高まっている。林氏が安倍氏にへつらう動機はなにもない。

安倍氏は林氏の外相起用に露骨に不快感を示している。麻生氏が牛耳る岸田政権が安倍氏の反発を承知で林氏を外相に起用したことは「安倍・麻生の盟友関係の軋み」を象徴的に物語っている。

このあたりの政局の動きは、以下のツイートで紹介した「特別寄稿」で詳しく解説したのでご覧いただきたい。

その林外相が文藝春秋二月特別号に掲載された「政治記者123人が選んだ次の総理」で31票を集めてトップに立った。2位の河野太郎氏(18票)、3位の茂木敏充氏(16票)を大きく引き離した圧勝といっていい。

いくつか政治記者たちの声を紹介しよう。

・党内きっての政策通。農政、税制、外交、防衛、財政、教育とオールラウンドプレイヤー。どのポジションもそつなくこなしてきた。

・東大法学部卒業後、三井物産などを経て国際経験も豊富。人的ネットワークは政財官にとどまらず海外まで広がる。

・ハーバード大大学院で修士号を取得。英語が堪能で海外記者からの質問にも通訳なしで答えられる。

・岸田は任期満了で退陣する意向があるとされ、林の外相起用はポスト岸田の一番手としてアピールするための布石といえる。

私も123人の1人として文藝春秋のアンケートに応じ、「次の総理にふさわしい政治家」として林氏の名を挙げた。その理由は、他の政治記者たちのコメントのように、林氏の「政治的能力」を高く評価しているからではない。安倍氏の「亡霊」の呪縛から解放されることが日本政界の喫緊の課題であり、安倍氏の「政敵」であることが周知の事実である林氏の「政治的立場」は日本政界を刷新するのに極めて有効であると考えているからである。

文藝春秋のアンケートで「林氏」をあげた他の政治記者たちも、安倍氏の「亡霊」を肌で感じつつ、その呪縛を解き放って停滞する日本政界を変革するリーダーとして林氏が適任であると感じているのではないかと思う。

ちなみに文藝春秋はこの企画で政治記者123人に「5年後の総理にふさわしい政治家」も尋ねている。結果は①福田達夫氏(28票)②河野太郎氏(14票)③林芳正氏(11票)だった。

福田達夫氏は福田康夫元首相の長男である。清和会(安倍派)に所属する当選4回の中堅議員ながら岸田政権で自民党総務会長に抜擢された。清和会は「安倍派」と「福田派」の内部抗争の歴史がある。安倍氏と距離がある福田氏を一本釣りで登用することで安倍氏の求心力をそぐ狙いが麻生・岸田両氏にあるのだろう。

文藝春秋二月特別号は、政治記者へのアンケート結果を受けて、①岸田文雄首相の緊急寄稿②政治記者123人が選んだ「次の総理、5年後の総理」③林芳正外相インタビュー④福田達夫総務会長インタビューの順番で特集を続け、そのあとに2本の記事をはさんで⑤安倍晋三元首相インタビューを掲載している。①は正直言って「官僚の作文」で面白くない。けれども②〜⑤はその内容も掲載順も味わい深いのでオススメだ。

いずれにしろ、福田氏は清和会における「ポスト安倍」の足場を固め、将来の首相候補に急浮上したのは間違いない。私は今夏の参院選後の人事で、麻生・岸田両氏が福田氏を財務相などの重要閣僚に登用し、清和会の「安倍離れ」を加速させたうえで、「岸田→林→福田」と政権を受け継いでいく構想を描いているのではないかとみている(茂木氏をワンポイントではさむ可能性はある)。この流れで政権が受け継がれていけば、日本政界の「安倍カラー」はかなり薄まっていくだろう。

このあたりはさきほど紹介した「特別寄稿」の後編で触れているので参考にしていただきたい。

永田町・霞が関に彷徨う安倍氏の「亡霊」を解き放つことを願って、私も「5年後の総理」に福田達夫氏をあげようと最初は思った。しかしそれでは「安倍氏の影響力の払拭」という後ろ向きなメッセージにとどまってしまう。それはあまりに永田町の論理ではないか。それで激動する時代に太刀打ちできるのか。少子高齢化が加速し貧富の格差が拡大するばかりの日本の未来を切り拓けるのか。もっと根底から政治を変革する必要があるのではないかーーそう思い直し、「山本太郎」に1票を投じた。

文藝春秋に掲載された結果をみると、5位は泉健太氏(5票)、6位は小川淳也氏(4票)、7位は高市早苗氏、小渕優子氏、小林史明氏、田村智子氏(各3票)だった。野党から泉、小川、田村各氏が入ったが、山本氏はランキング外だった。山本氏に投票したのは123人のうち私だけかもしれない。これが永田町の政治記者たちの現時点での政治感覚である。

国交省の世論操作に加担した朝日新聞「統計不正2000年以前から継続」の“大誤報”〜「書き換え」が不正ではない。安倍政権発足直後の2013年に始まった「二重計上」が不正なのだ