政治を斬る!

兵庫県の斉藤元彦知事の「製造物責任」は誰に? トップ3は①菅義偉元首相「自民と維新の連携の証」②西村康稔元経産相「維新の対立候補阻止という自己保身」③吉村洋文知事「元上司、阪神オリックスの優勝パレードをともに」

パワハラ疑惑やおねだり疑惑で、県民からも県職員からも完全に信頼を失った兵庫県の斎藤元彦知事。それでもなお知事の職にしがみつき、辞任しない意向を示している。
3年前の知事選で彼を担いだのは自民党と維新だった。斎藤知事の製造物責任は誰にあるのか。トップ3を選んでみた。

第3位 大阪府の吉村洋文知事
斎藤氏は2021年兵庫知事選への出馬を決めた時、大阪府の財政課長だった。総務省のキャリア官僚として出向していたのだ。当時の上司が吉村知事だった。

維新は本拠地・大阪で政治基盤を盤石にしており、兵庫県や奈良県など関西圏へ進出を目論んでいた。そこで兵庫県神戸市出身の斎藤氏を兵庫県知事選に担ぎ出したのだ。

当選後も吉村知事は斉藤知事とともに阪神オリックスの優勝パレードを主導した。「身を切る改革」を掲げる維新としては、税金を使わずにパレードを実施することが売りだった。
当時、兵庫県でこのパレードを担当していた課長が4月に自ら命を絶っていた。

パワハラやおねだりを告発した県職員に続く二人目の死者。兵庫県はこの事実を3ヶ月も公表せず隠していた。遺児の育英資金を集める県庁内の動きも上司が抑え込んだとの報道もある。

県職員の内部告発では、パレード資金を集めるため、県は信用金庫に補助金を投入してキックバックさせていた疑惑も指摘されていた。課長はこのパレードの仕事に悩み、うつ状態になっていたとも報じられている。

部下の斎藤氏を知事選に担ぎ出し、就任後も優勝パレードなどをともに推進した吉村知事には、まさに製造物責任があるといってよい。
吉村知事は最近、斎藤知事を突き放すような発言もしているが、自身に批判が向くことを恐れてのことだろう。それならば一刻も早く斎藤氏を辞任するよう説得するのが筋である。

第2位 西村康稔衆院議員
西村氏は、斎藤氏が2021年兵庫県知事選への出馬を決めた当時、菅義偉内閣の閣僚(経済再生担当相)だった。自民党の県議団は別の候補擁立を検討していたが、斎藤氏擁立を強く主張したのが西村氏だった。

西村氏はその後、安倍派事務総長となり、裏金問題に関与する。そして経済産業相として再び入閣し、その際に事務総長を外れたことが「裏金問題には関与していない」とする彼の最大の論拠となっている。

検察は西村氏を立件しなかったが、世論の批判は強く、自民党は党員停止1年の処分とした。年内にもある次の総選挙は無所属で勝ち上がるしかない。西村氏がいま最も恐れているのは、地元の衆院兵庫9区(明石市と淡路島)から前明石市長の泉房穂氏が出馬することだ。
西村氏は2021年当時、最も恐れていたのは兵庫9区に維新が候補者を擁立することだった。そこで維新と良好な関係を築いて兵庫9区からの出馬を見送ってもらうことが最大のテーマだった。兵庫県知事選に、吉村知事の部下である斎藤氏を担ぎ出し、維新との連携強化を進めることは、まさに自己保身のためだったのだ。

西村氏の選挙基盤は強くない。2021年総選挙で兵庫9区の対抗馬は共産候補だけだった。希望の党が結成された2017年総選挙は希望の党と無所属の候補二人。その前の2014年総選挙は共産候補だけだ。

選挙は実は強くない。対立候補を事前に抑える裏対策で勝ってきた。地元関係者は「西村氏は有力な対抗馬の立候補を事前に抑え込む裏工作で当選を重ねてきた。兵庫県知事選で斎藤氏擁立に動いたのも、維新候補の出馬を抑えることが最大の目的だったのだろう」と話す。
西村氏の自己保身から生まれた斎藤知事。やはりこの人にも重大な製造物責任がある。

第1位 菅義偉前首相
2021年兵庫知事選に斎藤氏を担ぎ出した当時の首相は、菅義偉氏だった。

菅氏は自民党と維新の窓口を担ってきた。そもそも橋下徹氏を大阪府知事選に担ぎ出したのは、菅氏と松井一郎氏だった。そこから安倍、菅、橋下、松井4氏の盟友関係が続いた。

菅氏は安倍政権の官房長官として維新をつねに支え続けた。その目的は①野党を分断する(民主党や立憲民主党に政権批判票が集中するのを防ぐ)②自民党内のライバルである麻生太郎氏に対抗する(党内基盤では麻生氏にかなわないため、公明や維新の外部勢力と連携して外から自民党を動かす)の2点だ。

自民と維新の相乗りで兵庫県知事選に斎藤氏を担ぎ出し、自民と維新の連携強化を進めた最大の責任者は菅氏だったといえる。斎藤知事は「自民と維新の結束の証」だったのだ。

以上3人には斎藤知事の製造物責任がある。つまり、斎藤知事の首に鈴をつける責任がある。
斎藤知事がこのまま居座れば、兵庫県政は停滞し、政治不信はますます強まる。3人は一刻も早く辞任を迫り、今の閉塞感を打破すべきである。

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