ウクライナ情勢が緊迫度を増している。ロシアがウクライナに向けてICBM(大陸間弾道ミサイル)を撃ち込んだとウクライナ政府が発表した。事実なら人類史上はじめてICBMが実際の戦争で使用されたことになる。
ICBMは核兵器を搭載して大陸を飛び越えて相手国に壊滅的な打撃を与える目的でつくられた兵器だ。射程5500キロ以上。ロシアは主に米国を、米国は主にロシアを(近年は中国も)想定して配備を進めてきた。
しかし、今回は核弾頭は搭載されておらず、ウクライナの被害はけが人数人程度だという。ロシア国内の発射地点からウクライナ国内の着弾地点までの距離は1000キロ程度で、ICBMを使用しなくても攻撃できるケースなのにあえてICBMを使用したというわけだ。
これは軍事目的というよりは明らかに政治目的の使用であろう。
これに先駆けて、米国のバイデン政権はウクライナのゼレンスキー政権に対し、米国製長距離ミサイルを使用したロシア攻撃を認めていた。これまでは戦争がエスカレートするとして認めていなかったが、大統領選で民主党が擁立したハリス氏が、ウクライナ戦争を24時間以内に停戦させると訴えたトランプ氏に敗れたことを受け、一転して使用を許可したのである。
年明けにトランプ政権に移行する前に戦況を少しでも優位にしておく狙いなのか、あるいは戦況を緊迫させて和平合意を困難にさせる狙いなのか。
バイデン政権はこれまで停戦合意に慎重で、むしろ戦争を長期化させることで米国の軍需産業やエネルギー産業を潤わせてきた。大統領を去るギリギリまで戦況の長期化を狙ったのではないかと疑ってしまう。
ロシアのICBM使用は、米国がウクライナに長距離ミサイルの使用を認め、ゼレンスキー政権がこれを受けて実際に長距離ミサイルをロシア国内に打ち込んだ報復の可能性が極めて強い。
戦争が相互不信でどんどんエスカレートしていく典型的展開だ。
けれども、日本のマスコミ報道はロシアのICBM一方的に批判するばかりで、米国のバイデン政権が退陣間近に長距離ミサイル使用を認めたことはほとんど批判していない。
そもそも開戦以降、バイデン政権が停戦に後ろ向きだったことを、日本のマスコミはむしろ支持してきた。ロシアのウクライナ侵攻以降、「ロシアを許すな」「制裁を加えろ」という強硬姿勢を支持し、ロシアを敵視してウクライナを全面支持する国会決議も支持し、対ロシア経済政策もウクライナへの武器装備品支援にも反対せず、米国以外の停戦の動きにも冷ややかにみてきたのだ。
このようなマスコミ報道が「ロシアは悪、ウクライナは善」という善悪二元論を国内に醸成し、戦争長期化をもくろむバイデン政権の実態へ国民の目が向かないように世論誘導してきたのである。
今回の兵庫県知事選ではマスコミ不信が炸裂し、斎藤元彦氏の大逆転勝利をもたらした。だが、これに至るまでマスコミは国民の信頼を大きく失ってきた、国家と共に東京五輪の旗を振り、コロナワクチンの一斉接種を推進し、ウクライナの「聖戦」の機運を高めてきたのである。こうした積み重ねがマスコミ不信を増幅させ、兵庫県知事選で一気に噴き出したとみるべきだろう。