石破茂内閣の支持率が上昇に転じている。9月の自民党総裁選に勝利して石破内閣が発足した当初は50%を超えていたが、総選挙で惨敗した直後は20〜30%台に急落した。ところが11月の世論調査で再び上昇に転じたのだ。
読売新聞が11月11~12日、第2次石破内閣の発足を受けて実施した緊急世論調査によると、内閣支持率は43%で、衆院選直後(10月28~29日)の34%から9ポイント上昇した。内閣不支持率は42%で、世論は真二つに割れている。他のマスコミの世論調査もほぼ同様の傾向だ。
自民党総裁選では本命視された小泉進次郎氏が失速し、党内基盤の弱い石破氏と高市早苗氏の決選投票となった。高市氏の右寄り政策に米国が警戒感を強め、自民党内でも懸念が広がり、消去法で石破氏が勝利した経緯がある。
ところが、石破氏は首相就任後、総裁選での発言を次々に修正し、支持率は急落。総選挙では裏金問題と石破首相の変節に批判が高まり、自公与党は大惨敗して過半数を割った。
石破首相は自ら掲げた「自公与党で過半数」の勝敗ラインを下回ったものの続投を宣言。自民党内では石破批判が広がるものの、反主流派は自公過半数割れを受けて「石破おろし」に動けず、野党もバラバラのため、自公少数与党の第二次石破政権が発足した。
総選挙で大惨敗して自ら掲げた勝敗ラインに届かなかった以上、即刻退陣するのが「憲政の常道」である。ところが、石破首相は勝敗ラインを棚上げして居座ったのだから、本来なら内閣支持率は下落するところであろう。
いったいなぜ、内閣支持率は再び上昇してきたのか。
首相就任してまだ1ヶ月。総選挙直後に辞任したら、石破内閣は憲政史上最短になるところだった。国民世論にも「さすがにまだはやい」という意識があったのは間違いない。
自公が少数与党に転落し、数の力で強行採決を繰り返してきたこれまでの国会運営を転換するしかない政治情勢も世論に歓迎されたようだ。
自公与党だけでは予算案も法律案も成立させることができず、石破首相は総選挙で躍進した国民民主党の主張を大幅に受け入れる意向を決めた。これにより、国民民主党が総選挙の目玉公約に掲げた「減税」(所得税が発生する年収103万円の壁を178万円へ引き上げることやガソリン税の減税)が年末の予算編成・税制改正の大きな焦点になったことも、世論の期待感を高めている。
総選挙前に駆け込みで実施した政治資金規正法の改正に対する国民世論の反発は根強く、石破首相が国民民主党の意向を受けて年内に再改正する方針を決めたことも好意的に受け止められているのだろう。
いずれにせよ、自公与党が過半数割れした政治状況が、石破内閣の支持率を下支えするという不思議な構図が生まれている。裏を返せば、国民民主党との政策協議が不調に終わり、政権運営が行き詰まれば、国民世論の期待は瞬く間に萎むに違いない。
石破政権は国民民主党に依存して政権運営を続けていくことになる。