日本維新の会の支持率が年明けから低下している。
吉村洋文・大阪知事(46)が2020年以降のコロナ対策で有名になり、立憲民主党が低迷するのとは裏腹に昨年10月の衆院選では41議席を獲得して第三党に躍進した。
その直後に幹事長に藤田文武衆院議員(41)= 大阪12区・当選2回、政調会長に音喜多駿参院議員(38)=参院東京・当選1回、総務会長に柳ヶ瀬裕文参院議員(47)=比例・当選1回という大胆な若返り人事を断行。昨年12月には支持率は跳ね上がり、立憲民主党を引き離して「野党第一党を奪う」という目標がさらに現実味を帯びていた。
ところが、全国で群を抜いて人口比でのコロナ死者数が多いことや吉村知事や松井一郎・大阪市長が税金を投入しないと公言していたカジノ構想で790億円の税金を投入することが発覚したことなどへの批判が高まり、年明け以降の支持率は右肩下がりの様相である。
5月に入ると維新の岬麻紀衆院議員が2019年参院選で経歴を詐称していた問題が指摘され、さらには創始者の橋下徹氏が右派勢力から「ウクライナ戦争でロシア寄りの発言を繰り返している」「大阪市長時代に大阪市内のメガソーラー事業を中国企業の上海電力が一般競争入札で受注していた」などとして激しい批判を浴びている。参院選に向けてさらに政党支持率は低下しそうな気配だ。
とりわけ右派勢力が維新批判を強めているのは注目に値する。維新は「身を切る改革」を掲げる橋下徹・大阪府知事と右派を代表する政治家だった石原慎太郎・東京都知事が手を結んで国政進出した。石原氏も橋下氏も表舞台から去り、吉村知事が前面に立つなかで右派勢力が離反しつつあることは、維新躍進を支えてきた車輪の一方を失うこととなり、その影響はじわりと出てくるのではないか。極右的な主張を掲げる新興勢力の参政党などに維新支持層の一部は流れそうだ。吉村人気に支えられた勢いが大きく陰り、参院選情勢を大きく変える可能性がある。
連休中に関西入りした自民党の茂木敏充幹事長は「創設者がロシア寄り の発言を繰り返しているが、維新の国会議員は何も言えない。身内 に甘い政党」「昨年の衆院選では圧倒的な 勢いが見られたが、率直に言ってそういうものは感じなかった」と公言した。
維新は「打倒・自民党」よりも「打倒・立憲民主党」を優先して、野党第一党の座を奪い取る目標を掲げてきたが、ここにきて自民党や右派からも攻撃を浴び、孤立感を漂わせ始めている。とくに安倍ー菅政権で維新と蜜月関係を築いてきた菅義偉氏が岸田政権で非主流派に転落し、菅ー維新ラインを毛嫌いする麻生太郎副総裁が岸田政権のキングメーカーとして君臨していることは、維新の影響力をじわじわ低下させていくだろう。維新を突き放す茂木幹事長の発言も、麻生氏の意向に沿ったものといっていい。岸田政権は菅氏と親しい維新を遠ざけ、連合や国民民主党との連携を優先していくとみられる。
SAMEJIMA TIMESではこれを機に、いまいちど維新の歴史を振り返る特集をYouTubeで行った。維新の歴史を橋下時代(2008~2015)、低迷時代(2016~2018)、吉村時代(2019~)に分けて分析した。
以下の国政選挙における自民党、立憲民主党(民主党、民進党)、維新の得票率の推移をご覧いただきたい。自民党は政権復帰以降、ほぼ横ばいで推移している。これに対し、自民批判票を立憲と維新が奪い合っているのがおわかりいただけるだろう。
ここから言えることは、①自公以外がひとつにまとまれば政権交代は可能だ②しかし、立憲と維新は水と油でまとまれない③そのような「野党分断」こそが自公政権延命の秘訣である④野党よりも自公に寄り添う維新を壊滅させない限り、自公政権の安泰は続くーーという事実だ。
そこで維新を壊滅させるためにはどうすればいいかを検討した。その骨格は①維新は民主党政権に対する国民の失望を受けて、民主党に代わる自民党批判の受け皿として台頭した②吉村知事の人気が急上昇した「吉村時代」は、旗揚げ当初の「橋下時代」と比べると得票率は高くない③とはいえ、維新は立憲民主党や共産党に比べてテレビやインターネットを使ったイメージ戦略が巧みで、現役・若年世代での支持で圧倒している④維新票を切り崩す可能性を最も秘めている野党はネット戦略を駆使して維新と一部支持層が重なるれいわ新選組であるーーとの内容である。
上下2回にわたって解説したので、詳しくは動画でご覧いただきたい。