総選挙で減税を掲げて大躍進し、国会の主役に躍り出た国民民主党の玉木雄一郎代表を、不倫スキャンダルが直撃した。特別国会召集日の朝にあわせてsmartFLASHがスクープした。
玉木氏はただちに釈明会見を開き、事実関係を認めて謝罪。国民民主党の両院議員総会で代表続投を取り付けて首相指名選挙に臨み、同党議員たちは石破茂首相でも野田佳彦・立憲民主党代表でもなく玉木氏に投票した。
ネット上では「不倫より減税」「減税を掲げたから刺された」「玉木がんばれ」として政策実現を望む声が広がる一方、「大切な時期に何をしていたのか」「勢いが止まるのは間違いない」との批判も広がっている。
総選挙で過半数を割り込んだ自公少数与党政権に「103万円の壁」の撤廃やガソリン税減税を迫る国民民主党の発言力にどのような影響が出るのか、予断は許さない。
自公与党が当面の連携先として国民民主党を選んだのは、日本維新の会が大混乱に陥っているからだ。国民か維新かどちらか一方と連携できれば過半数を回復できる。しかし維新は馬場伸幸代表が退くことになり、12月1日の代表選で新体制が固まるまでは身動きできない。少なくとも秋の臨時国会は国民との連携が不可欠なのだ。
一方、年明け以降は、国民と維新を天秤にかけて、自公与党に譲歩する方と組むことも可能になる。さらに野党第一党の立憲民主党とも水面下で交渉し、野党3党を分断して国会運営の主導権を握ることを目指すだろう。
立憲民主党は今回の首相指名選挙で、国民にも維新にも「野田佳彦」に投票してもらえず、野党のまとまりのなさをさらけ出した。せっかく自公与党が過半数割れしたのに、政権交代を実現できず、野党のリーダーとしての指導力に疑問符がついた格好である。自公与党の野党分断工作が成功すれば、今後の国会運営にも手詰まり感が漂ってくる。
カギを握るのは、12月1日の維新代表選に勝利することが有力視されている吉村洋文・大阪府知事だと私はみている。
維新は初代の橋下徹氏、二代目の松井一郎氏ともに大阪府知事や大阪市長として党首を務めた。いずれも国会議員ではなかったのだ。この結果、維新は永田町の論理とは一線を画し、地方自治体の視点で国政に参与してきたといえる。これが維新躍進の大きな原動力になった。
三代目の馬場伸幸代表は初の国会議員の代表だった。馬場体制のもとで維新は国会で自公与党に接近し、永田町の国会議員団と本拠地・大阪の地方議員団の間に溝が生まれた。政党運営の主導権は永田町に移り、創始者の橋下氏が自公与党の幹部と親密になった馬場代表を公然と批判する場面も目立つようになっていた。
吉村氏が大阪府知事として四代目代表に就任すれば、維新の意思決定が再び本拠地・大阪に戻る。維新の国会での立ち位置にも変化が生まれることだろう。馬場体制よりも自公与党との対決姿勢が強まるのではないか。
もちろん、自公与党は国民民主党を牽制するためにも維新の抱き込みに躍起になる。来春の大阪万博の支援をぶらさげて吉村氏を引き込もうとするに違いない。
吉村氏が自公与党に接近して補完勢力と批判されれば、来夏の参院選でさらに議席を減らす可能性がある。一方で自公との対決姿勢を強めて立憲との連携を強化しても、参院選の勝利につながるかは見通せない。とはいえ独自路線のままでは本拠地・大阪はともかく全国各地で伸び悩む現状を打破できる保証はない。
国民民主党の玉木代表が不倫スキャンダルで失速すれば、新代表就任が有力視される吉村知事が入れ替わるように脚光を集める可能性もある。自公与党は野党分断工作を進めるため、維新との連携にも力を入れるだろう。
玉木氏が沈めば、吉村氏が浮かぶ。はたして、激動の国会を勝ち抜くのはどちらか。今後の政局の注目ポイントである。