泉房穂氏が、夏の参院選・兵庫選挙区から無所属で出馬を決断した。元明石市長として全国的な知名度を誇る泉氏の参戦は、兵庫選挙区の構図を大きく変える可能性がある。果たして、泉氏は国会に乗り込み、日本の政治を動かすことができるのか。
■兵庫選挙区の勢力図
参院選兵庫選挙区は当選枠3。前回・前々回ともに「維新・自民・公明」が議席を分け合い、特に維新はトップ当選を果たしてきた。しかし、今回は維新の地盤が揺らいでいる。
維新は6年前にトップ当選した清水貴之氏を再び擁立する方向で動いているが、清水氏は昨年の兵庫県知事選で惨敗したばかり。しかも、大阪万博を巡る批判や昨年の総選挙での惨敗で、維新の勢いは明らかに衰えている。
この状況を考えると、泉氏が出馬すれば「自民・公明・泉」の3枠で決まる可能性が高い。立憲民主党や国民民主党が候補者擁立を見送り、泉氏を支援する展開も十分に考えられる。
■泉房穂、逃した3度のチャンス
だが、泉氏の政治的影響力はピークを過ぎたとの見方もある。その理由は、昨年、政局を大きく動かすチャンスを3度逃したことにある。
第一の機会は、2023年総選挙での兵庫9区出馬だ。安倍派裏金問題で窮地に立たされていた西村康稔氏に対し、泉氏が直接対決を挑んでいれば、全国的な注目区となり、大旋風を巻き起こした可能性があった。
第二の機会は、東京都知事選。泉氏の知名度と実績があれば、石丸伸二氏に代わる改革派の旗手となる道もあった。
第三の機会は、兵庫県知事選。泉氏が出馬していれば、パワハラ問題で失墜した斎藤元彦氏に対抗する有力候補となりえた。
これらのチャンスを逃した背景には、泉氏がテレビ出演を優先したことがある。テレビに出続けることで知名度は維持できたが、結果的に「戦う政治家」としての鮮度を失ってしまった。
■それでも泉房穂は活路を見いだせるか
とはいえ、泉氏はこれまでも幾度となく逆境を跳ね返してきた。兵庫選挙区では立憲と国民が対立する構図になっているが、その間を縫って泉氏が新たな政治的立場を確立する可能性もある。
さらに、参院選後の政界再編の動きの中で、泉氏がキーマンとなる展開も考えられる。自民党の増税路線に歩調を合わせる立憲、麻生・茂木ラインと接近する国民――この政治の流動化の中で、泉氏がどこまで存在感を示せるのかが注目される。
果たして、泉房穂は参院選を突破し、日本の政治を変えることができるのか。彼の戦いは、ここからが本番だ。