ジャニーズ問題で文春砲が炸裂した。『ジュリー氏「代表取締役残留」は相続税支払い免除のためだった 国税庁関係者は「被害者やファンを馬鹿にした話』と報じたのだ。
性加害を繰り返してきた創業者のジャニー喜多川氏が2019年に亡くなり、ジャニーズ事務所に君臨してきた姉のメリー氏も2021年に他界した後、ジュリー氏は二人が所有していたジャニーズ事務所の全株式を受け継いだ。この時、ジュリー氏が本来納めるべき相続税は推計860億円にのぼるという。
ところが、ジュリー氏はジャニーズ事務所の株式継承にかかる相続税を一円も払っていないというのだ。
なぜこのようなことが合法的に許されるのかというと、中小企業の後継者不足を解消するために導入された「事業承継税制の特例措置」を受けているからだ。
サービス業の場合、従業員100人以下か、資本金5000万円以下であれば「事業承継税制の特定措置」の対象となる。ジャニーズ事務所の社員は100人以上だが、資本金は1000万円で、この対象になる。
年間売り上げが1000億円を超えるジャニーズ事務所が「後継者不足に直面する中小企業」として優遇税制を受けるのは納得がいかない第一ポイントだ。日本の税制がいかに「世襲」の「お金持ち」たちに有利にできていか、税制の歪みを象徴する事例だ。
さらに特例措置を受けるには①相続税の申告申請から5年間は代表取締役を務める②5年経過後も株式を保有し続けるーーことが条件だという。ジュリー氏の場合、2025年5月まで代表取締役にとどまり、その後も株式保有し続けることが条件というわけだ。
だとすると、「被害者救済を円滑に進めるために代表取締役にとどまり、株式も100%保有し続ける」というジャニーズ事務所の根底が揺らぐ。本当の目的は被害者救済ではなく相続税逃れにあると疑われても仕方がない構図だ。
このようなことが合法的に許される日本の税制は金持ちにとって納税逃れの抜け道だらけ。不公正・不公平極まりない納税免除がまかり通っているのが、現代日本の実像なのである。
大企業や富裕層に有利な日本の税制の欠陥はこれまで何度も指摘されてきた。
2018年にはソフトバンクが純利益1兆円超を出しながら、さまざまな企業優遇税制を駆使して法人税を一円も納めていなかったことが発覚し、大きな社会問題になった。本来なら1000億円規模の法人税納税が行われて当然なはずだ。
そもそも弱者にほど重くのしかかる消費税が導入された後、法人税は徐々に軽減され、その税収減の埋め合わせに消費税収の7割があてられてきたという経緯がある。
しかも、海外輸出には消費税は免除されるため、製造業の大企業にとって消費税は大歓迎だ。
経団連は法人税減税と消費税増税をずっと求め、自民党政権はそれを受け入れてきた。「大企業・富裕層優遇、大衆軽視」が自民党政治の本質なのである。
大企業ばかりではない。政治家も政治団体を継承すれば相続税を免れることができる。
安倍晋三元首相の妻昭恵氏は安倍氏の二つの政治団体を継承することで、2億4000万円を相続税を免除されるかたちで受け継いだとしんぶん赤旗は報じている。
ジュリー氏にしろ、昭恵氏にしろ、巨額の遺産を相続する「世襲の人々」にはさまざまな「相続税逃れ」の抜け道が用意されているのだ。これほど不公正なことがあるだろうか。
一方で、政府は個人事業主を直撃するインボイス制度を10月1日から強行しようとしている。これで得られる税収は2480億円程度。ジュリー氏ひとりが逃れた相続税は860億円。もっと富裕層への課税を強化することが先決だという思いを強くさせられる現実である。
YouTube動画でもこの問題を解説しました。