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石破政権「強力な物価高対策」は本物か? 国民民主党は「もっと!手取りを増やす」〜参院選の対立軸が鮮明に、立憲民主党は埋没

ガソリンは高い、おコメも高い。でも、お給料は思うように上がらない―。

国民の不満がピークに達する中、石破茂首相がようやく「強力な物価高対策」に乗り出す考えを打ち出した。果たして本気の対策なのか、それとも選挙目当ての小手先の策なのか。

一方、石破政権と決別した国民民主党は「もっと!手取りを増やす」と題する経済政策を打ち出した。

立憲民主党が埋没する中、参院選は「自民党vs国民民主党」の経済政策対決の構図が強まっている。双方の経済政策を比較検証する。


①自民党の小手先減税

現在、参院では新年度当初予算案の審議が続いている。その最中に石破首相は公明党の斉藤鉄夫代表に「予算成立後に強力な物価高対策を検討する」と伝えた。内容としては、

  • ガソリン税の暫定税率廃止(実質的なガソリン税減税)
  • コメ価格の抑制

が柱となる。

しかし、これは疑問を呼ぶ。

「なぜ、いま審議中の予算案に盛り込まないのか?」

国民民主党はガソリン税の暫定税率廃止を主張して予算案の修正を求めたが、石破首相はそれをはねのけたばかり。にもかかわらず、今さら「検討する」とは、まさに選挙目当ての対応に映る。

そもそも、実施時期も明確ではない。政府が本気で減税するなら、予算案を修正して4月から実施すればよいはずだ。

しかし、そうはしない。選挙前に「検討する」とアピールするだけで、実際にはやる気がないのではないかという疑念が広がるだろう。

さらに、肝心の所得税減税は含まれていない。

財務省の強い反対が背景にあるとみられ、結局のところ、「国民生活より国家財政」という緊縮財政の枠組みから抜け出せていない。これでは自民党の信頼は揺らぐばかりだ。


②国民民主党の徹底した現役世代重視

対する国民民主党は、「もっと!手取りを増やす」という経済対策を打ち出した。

  • 年収の壁を178万円へ引き上げ、所得制限を撤廃
  • ガソリン税の暫定税率廃止を6月までに実施
  • 現役世代の社会保障料の負担軽減(年齢でなく負担能力に応じた2割負担)
  • 電気料金の再生エネ賦課金の一時停止
  • 農家への直接支払い制度

特に、医療費の窓口負担の見直しは、高齢層の反発を覚悟した政策といえる。国民民主党は50歳以下の支持率で立憲民主党を大きく引き離し、30代では自民党を上回る勢いを見せている。

この戦略は、徹底的に現役世代に寄り添うことで昨年の総選挙で躍進した戦略をさらに強化するものだ。社会保障の削減を恐れる高齢層の支持は半ば諦め、若年層・中間層のサラリーマンを中心に取り込む方針が明確になっている。

石破政権に減税政策を拒否され、予算案に反対して対決姿勢を鮮明にした後、国民民主党の支持率が上昇して立憲民主党を大きく引き離していることも強気の背景にある。


③埋没する立憲民主党

こうした中で、野党第一党の立憲民主党は埋没しつつある。

野田佳彦代表は、財務省寄りの緊縮財政論者であり、かつて民主党政権時代に消費税増税を自民・公明と合意した張本人だ。そのため、石破政権の財政政策とほぼ変わらない立場をとっている。

この結果、「野党第一党が与党第一党と似たような政策を掲げている」という事態が生じている。

二大政党政治なのに、これでは、有権者に選択肢を示せない。立憲民主党が自民党と同じ増税・緊縮路線を続ける限り、政権批判票は、減税を掲げる国民民主党やれいわ新選組へ流れ、参院選で苦戦を強いられる可能性が高い。


④参院選の対決構図

こうした状況を踏まえると、夏の参院選は 「増税vs減税」「緊縮vs積極財政」 という構図になる。

  • 減税・積極財政派 … 国民民主党、れいわ新選組
  • 増税・緊縮財政派 … 自民党、立憲民主党

本来であれば、二大政党制のもとで「自民 vs 立憲」の対立が描かれるべきだ。しかし、立憲民主党が増税路線を取り続けることで、野党第一党としての役割を果たせなくなっている。

その結果、「自民 vs 国民」の対決構図が鮮明になりつつある。

参院選後の展望として、野党勢力の再編が起こる可能性もある。立憲民主党が低迷すれば、一部が離党して国民民主党に合流する「野党再編」に発展し、野党第一党の交代劇が進むかもしれない。

石破政権の物価高対策は、本気の政策なのか、それとも選挙目当ての小手先の策なのか。国民民主党の攻勢に対し、与党はどこまで対応できるのか。埋没する立憲民主党は、このまま野党第一党の座を明け渡してしまうのか。今夏の参院選は、日本の政治構造を大きく変える選挙となる。