SAMEJIMA TIMESのウェブサイトやユーチューブ、私のツイッターアカウントのフォロワーには自民党員や自民党支持者の方も少なくない。常日頃は数々の反対意見をいただいているのだが、このところ岸田文雄首相を批判すると、「これはそのとおりだ」「鮫島さんと珍しく意見が一致した」といった反応がたくさん寄せられるようになった。
岸田政権は自民党支持層からもそっぽをむかれている。フォロワーの皆様の反応は私にとって重要な情報源のひとつである。
安倍政権や菅政権は支持率が低下しても決して離れない「岩盤支持層」というものがあった。とくに安倍政権の岩盤支持層は厚かった。
現代社会ではどんなに逆風が吹いても政権を見限らないコアな支持層の存在が長期政権を築く秘訣である。いや、絶対条件といえるかもしれない。
その意味で岸田政権には強力な岩盤支持層が見当たらない。おそらくこれから支持率降下はバケツの穴があいたように加速度を増していくのではないか。
岸田首相は当初、「成長より分配」と強調してアベノミクスと一線を画する「新しい資本主義」を掲げた。安倍政治から転換する予感が期待を生み、支持率は一時60%を超えたのだ。
ところが就任一年で迎えた臨時国会での所信表明演説では「分配」という言葉は影をひそめ、この政治家がどんなビジョンを描いているのかはまったく伝わってこなくなった。この政治家は口先だけなのか。当初は期待した人々はすでに見限っている。
岸田首相は政権発足当初に「どんな人々に支持されているのか」を見誤ったのだろう。自民党支持層にさえ、長く続いたアベスガ政権からの変革を期待するムードはあったのだ。岸田首相は「分配重視」を高らかに掲げて闘う姿勢をみせたならば、安倍支持層とは別の強固な支持基盤を作れたに違いない。目先の課題に右往左往して時々の世論に振り回されているようでは、岩盤支持層は育めない。
長男の翔太郎氏を首相秘書官に起用した人事の評判もすこぶる悪い。自民党支持層からも厳しい批判が噴き出している。政権発足時に長男を起用していたらこれほど批判を浴びることはなかっただろう。むしろ「イケメン息子」としてマスコミにもてはやされた可能性さえある。当初は公私混同批判を気にして長男起用を見送り、支持率が続落するなかで長男起用を断行してしまったのは、間抜けた対応というほかない。
岸田政権には「終わった感」が漂っている。
自民党を離党して政界再編を仕掛け続けていた小沢一郎氏(現在は立憲民主党)がかつて「強い結束で結ばれた仲間が30人いれば政治は動かせる」と言ったことがある。自民党や民主党の二大政党に属さなくても、小沢氏がつくった自由党のように「一致結束」できる政治家集団があれば、二大政党を揺さぶり、分断させ、政局の主導権を握れるという趣旨だ。
安倍支持層も日本社会全体からすれば少数派だった。しかし何があっても「安倍ちゃん」を支持し、盲目的に付き従うコア集団がいたからこそ、安倍政権は長持ちしたのだろう。
自分はどんな人々に支えられているのか。それを自覚することが政治には絶対に必要である。さらにいうと、そのコア支持層を理解したうえで、コア支持層だけの政治ではなく、彼らに理解を求めながら社会全体の代表者としての政治を展開しなければならない(有権者を「敵と味方」に二分した安倍氏は後段においてリーダー失格だった)。
これはメディアも同じである。そこを意識せずに凋落しているのが、私の古巣である朝日新聞だ。
朝日新聞は権力監視の役割をメディアに求める人々に支えられてきた。それを忘れ、安倍政権が主導する東京五輪のスポンサーになり、政権批判に尻込みして両論併記の傍観的な記事を量産していたら、読者が離れていくのは当たり前である。「朝日新聞を応援する」というコア支持層を失ってしまったのだ。
サメジマタイムスのような小さなメディアにとって最も重要なのは、ウェブサイトを日々訪れ、ユーチューブをのぞき、ツイッターをフォローして、さまざまな意見を寄せてくれるコアな読者の皆さんだ。「岩盤支持層」を大切にしないメディアは長続きしない。彼・彼女らとの対話を重ねた上で幅を広げていくことが肝要だ。古巣を反面教師にしながら、私は小さなメディアを運営している。