総選挙で惨敗した公明党が、総選挙で躍進した国民民主党に急接近している。自公与党が過半数割れするなかで発言力回復が狙いだ。国民の玉木雄一郎代表を不倫スキャンダルが直撃したものの、大阪で維新と激突した公明党にとって、当面の連携相手は国民民主党しかない。「自公国連立政権」を視野に連携強化を進めていくことになりそうだ。
公明党は総選挙で石井啓一代表が落選し、常勝関西と呼ばれた大阪でも4選挙区で全敗した。全国得票は596万票まで落ち込み(ピーク2005年の898万票、前回総選挙は711万票)、32議席を24議席に減らす大惨敗だった。
石井代表は辞任し、後継代表に斉藤鉄夫・国交相が就任。幹事長などを歴任した安定感が評価されたものだが、世代交代を唱えて石井氏に代表を譲った山口那津男氏と同じ72歳で、世代交代に逆行する人事となった。西田幹事長、岡本政調会長の新執行部も経験不足感は否めない。
しかも自民党内で公明党シンパだった二階俊博元幹事長が政界を引退。創価学会と自民党をつなぐ窓口役の菅義偉元首相も9月の総裁選で小泉進次郎氏を担いで惨敗し、影響力の低下を露呈した。
他方、石破政権で非主流派に転じたものの、派閥解体のなかで唯一派閥を維持している麻生太郎元首相と公明党の関係は微妙だ。自公連立政権の軋みも目立ち、このままでは公明党の政権内部での影響力はますます低下する恐れがある。
自公過半数割れで国民民主党が与野党のキャスティングボートを握る新しい政治情勢は、公明党の勢力挽回の好機でもある。ここで国民民主党との連携を強化して自民党を揺さぶり、政権内部での主導権を確保しようというわけだ。
そこで、国民民主党が総選挙の公約に掲げた「103万円の壁」の撤廃などに公明党は歩調をあわせることにした。
国民民主党の支持母体である連合との関係は良好だ。かつて新進党では政権をともにし、その流れの中で小池百合子東京都知事をともに支えている立場でもある。玉木代表も4月の衆院東京15区補選では小池知事が担いだ乙武洋匡氏を全面支援し、共闘をアピールした。
公明党を支える創価学会は不倫スキャンダルには厳しい視線を注ぐ。とはいえ、玉木代表が一枚看板である国民民主党との連携の芽をつぶすわけにはいかない。公明党にとっても手痛い不倫スキャンダルだったといえるだろう。