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初の女性首相へ執念を燃やす小池百合子都知事が衆院東京15区補選への出馬を見送った理由〜二階氏や萩生田氏の失脚で自民復党にメド立たず

東京都の小池百合子知事が3月29日の定例記者会見で、衆院東京15区補選(4月16日告示、28日投開票)に作家の乙武洋匡氏を擁立することを明らかにした。小池知事が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」が設立した政治団体「ファーストの会」が公認し、自公与党に支援を要請するという。

この補選をめぐっては、小池知事が都知事を電撃辞任して出馬し、国政復帰したうえで自民党に復党して9月の自民党総裁選に挑んで初の女性首相を目指すとの見方が広がっていたが、その可能性はほぼなくなった。小池知事は7月の都知事選に3選を目指して出馬するとの見方が強まっている。

小池知事はなぜ補選出馬による国政復帰を見送ったのか。

2017年衆院選では希望の党を立ち上げ、一時は政権交代の機運が高まった。これまで「初の女性首相」に最も近づいたのは小池知事といえるだろう。上川陽子外相がポスト岸田に急浮上する中、小池知事が対抗心を燃やして国政復帰への意欲を強めているとも言われていた。

私も小池知事は国政復帰をめざし、補選出馬を検討してきたとみている。東京15区を乙武氏に譲ったのは、国政復帰に興味がないからではない。

小池知事は国会に戻りたいわけではない。ひとりの国会議員に戻るだけなら都知事を続けていくほうが政治的影響力は絶大だ。都知事の座を投げ捨てて国政に復帰する狙いはひとつしかない。初の女性首相になることだ。現時点ではその道筋を描ききれなかったことが、補選出馬見送りの最大の理由であろう。

希望の党の失敗を経て、野党が結束して小池知事を担いで政権交代を果たす可能性はほとんどない。都民ファーストとして国政復帰を果たしても、自公与党が過半数割れを起こさない限り、国会では相手にされない。仮に自公与党が過半数割れしても、維新や国民民主党を連立に引き入れるだけで、小池知事を総理を担ぐ可能性かなり小さい。

小池知事が初の女性首相になるためには、国政復帰を契機に自民党に復党し、総裁選に出馬して勝利し、自民党総裁として首相に就任する道が、もっとも可能性が高いのではないか。

東京15区補選に勝利することは小池知事にとってそう難しくはない。最初の関門は、自民党への復党だ。

小池知事は非主流派のドンである二階俊博元幹事長や安倍派5人衆のひとりである萩生田光一都連会長と気脈を通じてきた。自民党へ復党する際は二階氏や萩生田氏の後押しを期待していたとみていい。ところが、裏金事件で二階氏は次の衆院選不出馬に追い込まれ、萩生田氏は政調会長を更迭されて安倍派幹部として処分される方向だ。

小池知事が復党すれば、ポスト岸田候補に浮上するのは間違いない。岸田首相に加え、茂木敏充幹事長や石破茂元幹事長らポスト岸田を狙う実力者にとって小池復党のメリットはほとんどない。ライバルが増えるだけだ。キングメーカーの麻生太郎副総裁としても、政敵である二階氏の「ポスト岸田カード」である小池氏の復党は迷惑な話である。

二階氏や萩生田氏がそれら反発を押し除けて復党を実現するほどの影響力を持っているだろうか?

小池知事が補選出馬を見送ったのは、現時点で復党の見込みが立たないと判断したことが最大の理由であろう。それならば都知事にとどまり、政治的影響力を維持した方が得策と考えたに違いない。

小池知事が乙武氏擁立を発表したのと同じ3月29日、岸田首相が記者会見で4月裏金解散を否定した。小池知事が4月の衆院補選に出馬するのなら、補選を吹き飛ばす4月解散は有力な選択肢だったが、小池知事の補選不出馬を事前に知ったことも、4月解散を見送ったひとつの要因かもしれない。

乙武氏は早大在学中に出版した「五体不満足」がベストセラーになった。2016年参院選東京選挙区に自民党公認で出馬することを検討していたが、女性スキャンダルを週刊誌に報じられて出馬を断念。2022年には参院選東京選挙区に無所属で出馬したが、落選している。

東京15区は自民党公認で当選した議員が二代続けて逮捕・起訴されたことから、自民党は候補者擁立を見送り、小池知事と連携する方向で調整を進めていた。

自民党は、小池知事が擁立する乙武氏なら当選の可能性が高く、衆院3補選の全敗を避ける目的もあって、乙武氏支援に回る可能性が高い。公明党は都政で小池知事と連携を深めており、同調するだろう。

国民民主党は当初、同補選に女性フリーアナウンサーの新人候補を擁立すると発表していたが、過去に法令違反行為があったとして取り下げた。解散総選挙に向けて自民党との対決姿勢に転じて立憲民主党に歩み寄っていたが、小池知事とは連合とともに連携を強めてきたことから、乙武氏支援に回る可能性が高い。

一方、立憲民主党も3月29日、昨年末の区長選に立候補して落選した前江東区議の酒井菜摘氏の擁立を発表。共産党は候補者を取り下げて立憲と共闘する可能性が高い。日本維新の会は新人の金沢結衣氏を擁立。参政党や日本保守党も独自候補を擁立している。野党は乱立模様だ。

現時点では乙武氏優位の展開が予想されるが、自民党の裏金事件への批判は高く、予断を許さない。

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