政治を斬る!

総裁選サバイバル──嗅覚鋭い4人〜小池百合子、萩生田光一、武田良太、岸田文雄の「決断」から総裁レースの行方を読む

「勝てば官軍、負ければ賊軍」。
次の総理を決める自民党総裁選は、まさに政治家たちのサバイバルゲームだ。進次郎か、高市か、林か──永田町の空気は一段と張り詰めている。

そんな中、政局の変化を嗅ぎ取ることに長けた4人の政治家が動き出した。小池百合子、萩生田光一、武田良太、岸田文雄。彼らの「決断」から、総裁レースの行方を読み解いてみよう。


小池百合子──女帝は進次郎へ

まずは東京都知事・小池百合子だ。
9月27日、都庁で開いた女性起業家との意見交換会に、ステマ問題で批判の渦中にあった小泉進次郎を招いた。終了後、並んで取材に応じ、「女性や子供政策に熱心に取り組んでいる。大変期待している」とエールを送った。進次郎も「都の先駆的な施策を全国に広げたい」と応じ、連携をアピールした。

小池にとっては計算ずくの支援表明だ。73歳にしてなお女性初の総理を狙う野望を抱き続ける彼女にとって、進次郎政権は国政復帰の最も現実的な扉となる。進次郎が順風満帆なときに近づいても埋没するだけ。むしろ逆風のときに手を差し伸べることで、最大の恩を売る──このタイミングの妙こそ、小池が百戦錬磨と呼ばれる所以である。


萩生田光一──大博打で高市へ

一方、旧安倍派5人衆の一人・萩生田光一は9月26日、「高市早苗支持」をブログで表明した。総裁選について「解党的出直しを掲げながら石破政権の政策を継承するのは違和感」と語り、石破総理が後押しする進次郎・林両氏と決別した。

萩生田は森喜朗、安倍晋三両元首相に仕え、裏金事件では批判を浴びながらも無所属で選挙を勝ち抜いた。現主流派に恨み骨髄の彼にとって、高市支持は自然な選択だった。

ただし、支持表明が遅れたのは逡巡の証だろう。勝ち馬に乗りたい本音もあったはずだ。

進次郎陣営では既に木原誠二や斎藤健らが中枢を固め、萩生田の居場所は限られる。そこへ進次郎のステマ炎上。高市に賭ければ、自らの存在感を最大化できる──そう踏んだのだろう。

とはいえ、進次郎が逃げ切れば逆に復権の道は遠のく。小池と歩調を合わせてきた萩生田だが、今回は正反対の賭けに出た。


武田良太──林に乗る「第三の道」

3人目は武田良太・元総務相。旧二階派の大番頭だったが、裏金問題と総選挙落選で表舞台を去った。だが豊富な資金力と人脈で影響力を保ち、地元・福岡では麻生太郎と勢力を二分する存在だ。

その武田が選んだのは林芳正。維新の馬場前代表との会食を林と仲介し、自ら同席。維新候補に敗れた直後に維新幹部との関係を深めると同時に、二階派と敵対関係にあった岸田派の林とも接近するというしたたかさを見せた。

背景には麻生との確執がある。麻生は進次郎支持に傾いている。高市は勝ち筋が乏しく、乗れば反主流派に転落しかねない。ならば林こそ「第三の道」。決選投票で進次郎支持に回れば主流派の枠内に残れるうえ、万一林勝利となれば一気に復権の可能性もある。政局勘の冴えを示す選択だ。


岸田文雄──「林阻止」で進次郎へ

最後は岸田文雄前総理だ。旧岸田派の林が出馬しているにもかかわらず、岸田は進次郎支持に傾くと見られている。

その理由は明快だ。林が総理になれば派閥は林派に代替わり、岸田自身の再登板の芽は絶たれる。

岸田は「高市阻止」の立場から石破支持に回った前回総裁選の経緯もあり、今回も高市には乗りづらい。結果として進次郎しか選択肢がない。

実際、最側近の木原誠二が早くから進次郎陣営を仕切っている。進次郎政権で「副総理兼外相」という人事案まで取り沙汰されるのはその表れだ。

ただし、林が決選投票に残った場合、岸田にとっては苦渋の選択となる。派閥の求心力維持と自身の野望の間で、どちらを取るのか。岸田の一挙手一投足が終盤戦を左右するのは間違いない。


終盤戦を読む

こうして4人の動向を整理すると、総裁選の地図が浮かび上がる。
小池は進次郎に恩を売り、政界復帰の布石を打った。萩生田は一か八かで高市に賭け、復権の足掛かりを探す。武田は林に乗り、麻生と距離を取りながら再浮上の機会を狙う。そして岸田は林阻止のため進次郎に寄り添う。

それぞれの決断は、総裁選の結果を左右するだけでなく、次の政局の布石となる。

果たして「サバイバルゲーム」を制するのは誰か。永田町の緊張は日に日に高まっている。