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自民党が敗れた岩手県知事選と立川市長選、そして国民民主党代表選が示したもの〜野党共闘を妨げる「維新」と「連合」

与野党激突の構図となった岩手県知事選と東京都立川市長選が9月3日に投開票され、いずれも野党側が勝利した。岸田内閣の支持率続落のなかで注目された二つの自治体選挙が「自民2敗」に終わったことで、早期の衆院解散・総選挙は困難との見方がますます強まりそうだ。

岩手県知事選は、立憲民主党の小沢一郎氏の側近で5期目を目指す現職の達増拓也知事(59)に対し、自公が元県議で新人の千葉絢子氏(45)を擁立し、一騎打ちとなった。

岩手県は「小沢王国」と言われてきた。2021年衆院選で小沢氏が岩手3区で敗北(比例復活)したのに続いて、2022年参院選では自公が弁護士で新人の広瀬めぐみ氏を擁立して立憲現職を破り、「小沢王国」の崩壊が指摘されていた。今回の知事選も自公が千葉氏を擁立して達増知事を破り、「トドメ」を刺すことを狙った。

しかし、直前に広瀬参院議員が自民党女性局のパリ研修に松川るい参院議員らと参加し、レストランで会食する様子をSNSに投稿して「まるで観光旅行だ」と炎上。地元・岩手でも批判が高まり、知事選で大逆風となった。

一方、小沢氏は危機感を募らせて野党陣営を引き締め、立憲、共産、社民、国民の応援を受けた。れいわ新選組の山本太郎代表も駆けつけて小沢氏とともにマイクを握り、前明石市長の泉房穂氏も達増支持を前面に打ち出して「野党共闘」の機運が高まった。

結果は達増知事が千葉氏を10万票以上引き離す圧勝に終わった。立憲の泉健太執行部に対して野党一本化を迫る小沢氏が地元で「野党がひとつにまとまれば勝てる」という主張をやってみせたといっていい。

新人の三つ巴の争いとなった立川市長選は、ある意味で岩手県知事選以上にインパクトがあった。

当選したのは、都議会立憲民主党元団長の酒井大史氏(55)。立憲色を薄めて共産党を含む野党支持層から幅広い支持を得る選挙戦を展開し、激戦を制した。前明石市長の泉房穂氏の全面支援も受けた。

自民党が擁立したのは都議会自民党元総務会長の清水孝治氏(57)。自公は東京で対立して関係が冷え込んでいたが、立川市長選の最中に岸田文雄首相と山口那津男代表が東京での選挙協力で合意し、関係改善を進めていた。それでも立川市長選では公明党支持層に浸透し切れず、競り負けた。公明票の重みを改めて示したといえるだろう。

元立憲都議と元自民都議に大きく差を開けられたのは、小池百合子知事の都民ファーストと、連合と緊密な国民民主党の支援を受けた元市議の伊藤大輔氏(48)だ。小池知事の影響力低下と連合の組織力低下を映し出す結果といっていい。

自民党政権を倒す前に立憲民主党から野党第一党を奪うことを目標に掲げて躍進している日本維新の会は、岩手県知事選と立川市長選では表だった動きを見せなかった。「立憲とは絶対に組まない」「自民とも原則として対決する」という大方針のもと、「維新が乗って勝てそうな候補がいない」と判断したのだろう。

次の衆院選に向けて、自公、維新、立憲という三つ巴の構図が強まるなかで、岩手県知事選と立川市長選が示したものは以下の点だ。

①立憲は維新や国民と組まなくても共産やれいわと結束すれば勝機はある。しかしそれは自公の結束が綻んだ場合だ(立川)

②自公が結束しても、野党が一本化して一騎打ちに持ち込めば、十分に対抗できる(岩手)

③台頭する維新に対抗して自公が再結束を進める以上、野党一本化は不可欠だ。維新が立憲との共闘を拒否している以上、少なくとも維新を除く野党は一本化して三つ巴の構図にとどめなければ、それ以上に野党が乱立したら小選挙区では勝負にならない。

鍵を握るのは立憲の動向だ。共産党を毛嫌いして自民に接近している連合に追従している限り、「自公、維新、野党」の三つ巴の対決構図を作り出すのは難しい。連合が共産を敵視していることが、野党共闘の最大の障壁となっている。

その意味で、岩手県知事選と立川市長選の前日に行われた国民民主党の代表選の結果は、野党共闘に暗雲をもたらすものだった。連合執行部と密接な関係を維持して自民党との連携を模索する玉木雄一郎代表が、自民党とは絶対に組まないと宣言する前原誠司元外相を大差で破ったのである。

衆院選の新人候補には前原支持が強かったが、連合の支援を受けて比例区で勝ち上がった参院議員や労組の組合員が多い党員の票が玉木代表を後押しした。自民党は今後、維新に代わる新たな「野党分断策」の切り札として国民民主党と連合を引き込んでいくだろう。

小池知事(都民ファースト)と連合(国民民主党)が惨敗した立川市長選は、連合の組織力のなさを浮き彫りにした。

立憲が八方塞がりの政治状況を打開するには、まずは「連合依存」から脱却することだ。だが、連合に引きずられて国民とともに自民党へ接近していく可能性もある。その場合、「反維新」を自民接近の大義名分とするのだろう。立憲の動向が今後の政界の大きな焦点である。


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