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野田佳彦元首相の再登板が浮上!政権交代へ勢いづく立憲民主党の最大のネックは「泉健太代表の党首力」 党内で高まる野田再登板に透ける「消費税増税を大義とした自公立3党連立」

自民党の裏金事件を受けて、政権交代への期待が高まっている。

5月18、19日実施のANA世論調査では「自公政権の継続」を求める人は39%にとどまり、「政権交代に期待」する人が52%にのぼった。同じ日の毎日新聞世論調査では、自民党の政党支持率は17%に落ち込み、 立憲は20%に達した。4月の衆院3補選の「自民全敗、立憲全勝」の流れはますます強まっている。

けれども政権交代したとしても、誰が首相になるのか。野党第一党である立憲民主党の泉健太代表が首相になるのか。ピンとこない。

立憲の最大のネックは、泉健太代表の「党首力」である。マスコミ世論調査でも「次の首相」上位にあがってこない。野党では維新の吉村洋文知事やれいわ新選組の山本太郎代表に先を越されている。

4月補選に全勝したことで、立憲は9月の代表選で泉代表を交代させる大義を失ってしまった。一方、自民党は4月補選に全敗したことで9月の総裁選で不人気の岸田文雄首相を差し替える口実を得た。

自民党が新しい総裁を打ち立てて10月解散総選挙を仕掛けてきた時に、立憲は代わり映えしない泉代表のまま臨んで今の勢いを維持できるのか。立憲内でも懐疑的な見方が強い。

そこで立憲党内で浮上しているのが、野田佳彦元首相の再登板だ。

野田政権で外相を務めた玄葉光一郎衆院議員は4月のラジオNIKKEIのポッドキャスト番組に出演し、次の総選挙で自公過半数割れの可能性が出てきたことに触れ、「立憲単独で(政権を)取れない前提に立つと連立だ。誰を総理候補のカードとして持つのかがすごく大事だ」と述べ、「野田さんに対する期待が出てきている」と踏み込んだ。

玄葉氏はさらに、第一次安倍政権が短命に終わったものの、その失敗を教訓に第二次安倍政権が長期化したことにも触れ、「失敗は成功の母。(野田内閣は)全体として政権運営に失敗したが、あの時の経験は必ず生きる」とも語った。

岡田克也幹事長(野田政権で副総理)や安住淳国対委員長(野田政権で財務相)が主導権を握る立憲執行部も国会での裏金追及で野田元首相を前面に出し始めた。

野田元首相は5月20日の衆院予算委にも登場。岸田首相が自ら電話で行った森喜朗元首相の聴取を「ご機嫌うかがいだ」と厳しく批判し、森元首相の参考人招致を求めた。野田元首相の追及は、確かに泉代表よりも上手である。

「私も元総理になってから国会に呼ばれるのはいやだなと思うんですよ。本当は。こんな先例はつくりたくない、岸田さんも嫌でしょ。だからあなたが直接もう一回聴取して報告してもらうのが望ましいが、ノーと答えたから参考人招致をお願いするしかなくなった」

野田元首相は「東は立憲、西は維新」で棲み分ける大胆な提案もしている。表向きは泉代表に対抗して9月代表選に出馬することには慎重姿勢を示しているが、野党陣営の統一首相候補に担がれれば受けるだろう。

野田政権で要職を占めた玄葉氏、岡田氏、安住氏らベテランたちは「野田政権の復活」に期待しているのは間違いない。

しかし、忘れてはならないのは、野田政権は民主党政権が誕生した2009年総選挙のマニフェストに掲げていなかった消費税増税を掲げ、財務省の仲介で、自公両党と「社会保障と税の一体改革」で3党合意を断行したことだ。国民世論の期待を裏切り、2012年総選挙で惨敗して民主党政権を終焉させた第一の責任は、野田氏にある。

ところが、野田政権の要人たちは、消費税増税を進めた3党合意を「成果」と総括しているのだ。玄葉氏は先の番組で、野田政権は「全体的には政権運営に失敗した」としつつも、「社保一体改革は成功だった」との考えを示した。
この総括をしている限り、再び財務省の仲介で自公両党と「財政健全化のための消費税増税」を進めることを大義として野田政権の復活を目指す可能性は否定できない。そこで「維新外し」が3党連携の大義となる可能性もあろう。

野田再登板に対する国民世論の警戒感を払拭するには、民主党政権の失敗の総括を改めて行う必要がある。

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