政治を斬る!

野田佳彦は辞任せよ!総選挙は政権選択の選挙、野党第一党は政権交代を実現できなければ「敗北」である!立憲民主党の議席増ばかりを優先し、野党をバラバラにさせた政治責任は重大

自公与党は総選挙で惨敗し、15年ぶりに過半数を割り込んだ。石破茂首相は自ら掲げた勝敗ライン「自公で過半数」を下回ったのに退陣せず、自公の少数与党政権として首相の座に居座るつもりである。

11日召集の特別国会で行われる首相指名選挙の第一回投票では、石破首相をはじめ誰も過半数を獲得できずに決選投票になだれ込む見通しだ。決選投票で野党各党が結束し、野党第一党・立憲民主党の野田佳彦代表に投票すれば、石破首相に投票する自公与党を上回り、野党連立政権が誕生する。

しかし、野党第二党の日本維新の会や総選挙で大躍進した国民民主党は野田代表には決選投票でも投票しない姿勢を示している(決選投票でも自党の党首に投票して無効扱いされる見通し)。この結果、野田代表は決選投票で石破首相を上回れず、少数与党の石破政権が誕生する方向だ。

総選挙で与党が過半数割れしたのに、野党連立政権は誕生ぜず、政権交代が実現しないのは、総選挙で躍進した国民民主党や、野党第二党の日本維新の会など野党各党が結束し、首相指名選挙で「野田佳彦」に投票しないためだ。

リベラル勢力には、国民や維新の姿勢について「自公を利する」と批判する声がある。

けれども、私はむしろ野党勢力を結集できなかった立憲民主党にこそ、大きな政治責任があると考えている。

総選挙は政権選択の選挙である。小選挙区制はたったひとりしか当選できず、与野党一騎打ちが想定されている。有権者にすれば、与党と野党のどちらに政権を委ねるのか、さらにいえば、与党第一党である自民党総裁と、野党第一党である立憲民主党代表のどちらを首相にするのかを選ぶ選挙といってよい。

自民党は与党・公明党と政権をともにし、全国で選挙協力を進め、一体化している。これに対し、立憲民主党は野党共通公約をつくらず、野党連立政権のイメージを有権者に示さないまま総選挙に突入した。

しかも全国の選挙区で他の野党にほぼ選挙区を譲らず、野党候補の乱立を放置してきた。野党第一党として、野党陣営をまとめあげ、政権選択の選挙に持ち込むことをハナから放棄していたのである。

立憲民主党が単独で過半数を獲得する実力があるのなら、まだわかる。しかし、立憲民主党は公示目前に駆け込みで比例単独候補を大量に擁立して、何とか過半数233を超える候補者を擁立するありさまで、とても単独過半数を獲得する力はなかった。

それならば、野党各党との連携を強化し、信頼関係を醸成し、自公与党が過半数を割り込んだ時に備えて野党連立政権樹立の準備を入念にしておくべきだった。それが野党第一党の責任である。

野党第一党は小選挙区制でゲタを履いている。自公政権批判票は、まずは野党第一党に流れてくるものだからだ。だからこそ、野党第一党は、他の野党に譲歩してでも野党の結束を固めなければならない。自らの議席を増やすことよりも、野党全体で過半数を獲得して、政権交代を実現させることが、何よりも求められているのである。

ところが、立憲民主党は自らの議席増ばかりを優先し、全国の各選挙区で他の野党にほとんど譲らず、信頼関係構築を怠った。他の野党には立憲民主党への恨みつらみが募っていた。

その結果、せっかく自公与党が過半数割れし、政権交代の千載一遇のチャンスが訪れたのに、野党はバラバラで、首相指名選挙で石破首相に勝ち、野党連立政権を樹立する好機をみすみす逃したのだった。

国民民主党の榛葉和也幹事長は「総選挙で野田佳彦首相を誕生させるとは一言も言っていない」と明言。総選挙前に野党共闘体制を樹立しておかなかったツケが回ってきた格好だ。

しかも立憲民主党は有権者の支持を拡大したとは言えない。比例票は、大惨敗した前回総選挙と実はほぼ横ばいなのである(今回は1156万票、前回は1149万票)。

つまり、有権者の多くは裏金自民党の候補を落選させるために、立憲支持でなくても、小選挙区では立憲候補に投票したものの、比例代表では他の野党に投票した。その結果、国民民主党とれいわ新選組が大躍進したのだ。

立憲は小選挙区を中心に50議席を増やし、自公与党を過半数割れに追い込んだものの、政権交代を実現できなかった。野党連立政権を視野に野党連携を深めてこなかった野党第一党としての失態である。野田代表の政治責任は極めて大きい。

自民党が万年与党、社会党が万年野党の中選挙区時代、社会党は「議席を伸ばせば勝ち、減らせば負け」と評価されてきた。

しかし、小選挙区制度が導入され、二大政党時代に入った後、総選挙は政権選択の選挙となった。野党第一党の勝ち負けは、議席の増減ではなく、政権交代の成否で判断するのが本来の姿である。

ところが、日本のマスコミは相変わらず、議席の増減で勝敗を判定してきた。野党第一党は政権交代を実現しなくても、議席を増やせば勝利と報じられた。この結果、野党第一党は政権交代よりも議席増を追求するようになった。マスコミ報道が野党を甘やかせてきたのだ。

これでは二大政党政治は定着しない。二大政党政治において、野党第一党は、政権交代を最重要目的に掲げ、それを実現するためにあらゆる手段を尽くす責任がある。自らの議席増よりも政権交代を実現する戦略を練るべきであり、政権交代を実現できなかった以上、50議席を増やしたとしても敗北なのだ。

野田代表は、国民に不人気の石破首相に敗れた。引責辞任すべきである。それが首相候補として「政権選択の選挙」に挑んだ野党第一党の党首のケジメのつけ方だ。

首相指名選挙では、立憲が切り捨てた共産党だけが野田代表に投票し、大躍進した国民とれいわ、そして立憲が秋波を送ってきた維新は、野田代表に投票しない方向だ。何とも皮肉な話である。立憲は野党陣営での求心力のなさをさらけ出した。今後、ますます孤立感を深める可能性さえあるだろう。

野党陣営は選挙戦に突入する前から戦線が崩壊していた。野党連立政権のビジョンもないまま、政権交代を訴えた野田代表の言葉は最初から空っぽだったのだ。政権交代への期待を煽り、千載一遇のチャンスを立憲の議席増だけに利用したのは、有権者を欺く行為だったというほかない。

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